米国の対イラン作戦は「長期化せず」 中国の著名経済学者・謝国忠氏が予測する停戦の2つのシグナル

2026-03-23 10:57
2026年2月28日、米国とイスラエルがイランを合同で爆撃し、イランの首都テヘランから黒煙が上がる。(AP通信)
2026年2月28日、米国とイスラエルがイランを合同で爆撃し、イランの首都テヘランから黒煙が上がる。(AP通信)

アメリカとイスラエルによる対イラン軍事行動(以下、米国の対イラン作戦)が開始から4週目に入ろうとしているが、停戦の兆しは依然として見えない。これに対し、中国の独立系エコノミストである謝国忠(アンディ・シェ)氏は、「転換点は米債券または米株の明確な下落だ。現状ではまだ(米政権にとっての)痛みが足りない」と指摘する。

謝氏は昨年10月の時点で、「2026年は成長よりも安全がはるかに重要になる」と警鐘を鳴らしていた。今年1月にはイランでの紛争勃発を予測しており、現状について「アメリカは事実上、イスラエルの属国と化している」との見解を示す。

2025年2月4日。美國總統川普(Donald Trump)和以色列總理納坦雅胡(Benjamin Netanyahu)在白宮舉行記者會。(AP)
ネタニヤフ氏(左)とトランプ氏(右)が、いわゆる「米国の対イラン作戦」を主導したとされる。(資料写真、AP通信)

謝氏の予測では、米国の対イラン作戦は今後さらに1か月ほど続く可能性があり、国際原油価格は今年第2四半期に1バレル150ドルまで高騰する恐れがある。これにより、今年の世界経済成長率は2%を下回る公算が大きく、主要な予測機関が定義する「世界的な景気後退(リセッション)」の基準に達することになる。

停戦の転換点 米10年債利回り4.5%、米株10%下落

謝氏はインタビューにおいて、「開戦から現在まで米10年債利回りは約20ベーシスポイント上昇し、株価は約2〜3%下落したが、これではトランプ大統領に政策変更を促すほどの痛みには達していない」と分析する。

停戦に向けた「明確な下落(転換点)」として、謝氏は以下の2つの数値を挙げる。

  1. 米10年債利回りが現在の4.2%付近から4.5%へ上昇すること。
  2. 開戦以来の米株の累計下落率が10%に迫ること。

特に4.5%という利回りは、国際投資家にとって心理的な節目(センシティブな価格帯)となるとの見方を示し、「近い将来、この水準に達する可能性がある」と述べた。

中國獨立經濟學家謝國忠。(謝國忠提供)
中国の独立系エコノミスト、謝国忠氏。(写真提供)

短期決戦の予測と資源の壁

​一方で、謝氏は米国の対イラン作戦は長期化せず、今後1か月程度で停戦に至ると予測している。その根拠として、アメリカとイスラエルにはイランへの猛攻撃を継続するためのミサイル在庫が不足している点を挙げる。

「消耗戦になればアメリカは持ちこたえられない」と謝氏は指摘する。例えば、ミサイル製造に不可欠なレアアースについて、米メディア自身が「アメリカの備蓄は2か月分に満たない」と報じている実態を挙げ、資源供給の限界が戦争の継続を阻むとの見解を示した。

停戦への道筋:米国による一部制裁解除が鍵か

イランは3月12日、米国に対し、「イランの正当な国際的権利の承認」「今回の戦争による損害賠償」「今後の攻撃を禁ずる安全保障」の3つの停戦条件を提示した。

これに対し謝氏は、賠償と安全保障が米国に受け入れられる可能性は極めて低いとみる一方、権利の承認については交渉の余地があるとしている。米国が対イラン制裁を一部解除することが、停戦への現実的な突破口となるだろう。「イランという民族は内面的に脆い部分があり、非常に妥協を望んでいる」と謝氏は分析する。トランプ大統領が譲歩の姿勢を見せれば、双方は停戦へと向かう可能性がある。ただし、ホルムズ海峡の制海権については、依然としてイランが固持し続けると予測される。

一方で、イスラエルの動向には警戒が必要だ。イスラエルがイランの壊滅を画策して30年以上が経過しており、「この大きな方針が変わることはない。機会があれば再び(攻撃を)仕掛けるだろう」と謝氏は述べている。

第2四半期、原油価格は150ドルへ 独経済に打撃、露に恩恵の構図

​国際原油価格が高騰する中、主要国は戦略石油備蓄の放出を続けているが、謝氏は「戦略備蓄は心理的効果に過ぎない」と一蹴する。イランによるホルムズ海峡支配が長期化することで、石油市場のリスクはかつてないほど高まっている。価格が1バレル60ドル台に戻ることは短期的には考えにくく、第2四半期には一時150ドルまで急騰した後、100ドル前後の高値圏で数か月間乱高下(震盪)が続くと同氏は予測している。 (関連記事: 中東情勢受けた邦人等輸送の待機任務が終結 空自KC-767が帰国 関連記事をもっと読む

2019年7月13日在荷莫茲海峽遭伊朗扣押的巴拿馬籍油輪「利雅號」(MT Riah)(AP)
謝国忠氏は、ホルムズ海峡の支配権について、イランが引き続き強く掌握し続けるとの見方を示している。(資料写真、AP通信)

この原油高騰の余波を最も受けるのは、ドイツだ。電力の約70%を原子力発電で賄うフランスに比べ、エネルギーを石油や天然ガスに高度に依存しているドイツ経済への衝撃は計り知れない。

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