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米国の対イラン作戦は「長期化せず」 中国の著名経済学者・謝国忠氏が予測する停戦の2つのシグナル 2026年2月28日、米国とイスラエルがイランを合同で爆撃し、イランの首都テヘランから黒煙が上がる。(AP通信)
アメリカとイスラエルによる対イラン軍事行動(以下、米国の対イラン作戦)が開始から4週目に入ろうとしているが、停戦の兆しは依然として見えない。これに対し、中国の独立系エコノミストである謝国忠(アンディ・シェ)氏は、「転換点は米債券または米株の明確な下落だ。現状ではまだ(米政権にとっての)痛みが足りない」と指摘する。
謝氏は昨年10月の時点で、「2026年は成長よりも安全がはるかに重要になる」と警鐘を鳴らしていた。今年1月にはイランでの紛争勃発を予測しており、現状について「アメリカは事実上、イスラエルの属国と化している」との見解を示す。
ネタニヤフ氏(左)とトランプ氏(右)が、いわゆる「米国の対イラン作戦」を主導したとされる。(資料写真、AP通信) 謝氏 の予測では、米国の対イラン作戦 は今後さらに1か月ほど続く可能性があり、国際原油価格は今年第2四半期に1バレル150ドルまで高騰する恐れがある。これにより、今年の世界経済成長率は2%を下回る公算が大きく、主要な予測機関が定義する「世界的な景気後退(リセッション)」の基準に達することになる。
停戦の転換点 米10年債利回り4.5%、米株10%下落 謝氏はインタビューにおいて、「開戦から現在まで米10年債利回りは約20ベーシスポイント上昇し、株価は約2〜3%下落したが、これではトランプ大統領に政策変更を促すほどの痛みには達していない」と分析する。
停戦に向けた「明確な下落(転換点)」として、謝氏は以下の2つの数値を挙げる。
米10年債利回りが現在の4.2%付近から4.5%へ上昇すること。 開戦以来の米株の累計下落率が10%に迫ること。 特に4.5%という利回りは、国際投資家にとって心理的な節目(センシティブな価格帯)となるとの見方を示し、「近い将来、この水準に達する可能性がある」と述べた。
中国の独立系エコノミスト、謝国忠氏。(写真提供) 短期決戦の予測と資源の壁 一方で、謝氏は米国の対イラン作戦 は長期化せず、今後1か月程度で停戦に至ると予測している。その根拠として、アメリカとイスラエルにはイランへの猛攻撃を継続するためのミサイル在庫が不足している点を挙げる。
「消耗戦になればアメリカは持ちこたえられない」と謝氏は指摘する。例えば、ミサイル製造に不可欠なレアアースについて、米メディア自身が「アメリカの備蓄は2か月分に満たない」と報じている実態を挙げ、資源供給の限界が戦争の継続を阻むとの見解を示した。
イランは3月12日、米国に対し、「イランの正当な国際的権利の承認」「今回の戦争による損害賠償」「今後の攻撃を禁ずる安全保障」の3つの停戦条件を提示した。
これに対し謝氏は、賠償と安全保障が米国に受け入れられる可能性は極めて低いとみる一方、権利の承認については交渉の余地があるとしている。米国が対イラン制裁を一部解除することが、停戦への現実的な突破口となるだろう。「イランという民族は内面的に脆い部分があり、非常に妥協を望んでいる」と謝氏は分析する。トランプ大統領が譲歩の姿勢を見せれば、双方は停戦へと向かう可能性がある。ただし、ホルムズ海峡の制海権については、依然としてイランが固持し続けると予測される。
一方で、イスラエルの動向には警戒が必要だ。イスラエルがイランの壊滅を画策して30年以上が経過しており、「この大きな方針が変わることはない。機会があれば再び(攻撃を)仕掛けるだろう」と謝氏は述べている。
第2四半期、原油価格は150ドルへ 独経済に打撃、露に恩恵の構図 国際原油価格が高騰する中、主要国は戦略石油備蓄の放出を続けているが、謝氏は「戦略備蓄は心理的効果に過ぎない」と一蹴する。イランによるホルムズ海峡支配が長期化することで、石油市場のリスクはかつてないほど高まっている。価格が1バレル60ドル台に戻ることは短期的には考えにくく、第2四半期には一時150ドルまで急騰した後、100ドル前後の高値圏で数か月間乱高下(震盪)が続くと同氏は予測している。
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謝国忠氏は、ホルムズ海峡の支配権について、イランが引き続き強く掌握し続けるとの見方を示している。(資料写真、AP通信) この原油高騰の余波を最も受けるのは、ドイツだ。電力の約70%を原子力発電で賄うフランスに比べ、エネルギーを石油や天然ガスに高度に依存しているドイツ経済への衝撃は計り知れない。
対照的に、今回の戦争で最大の恩恵を受けるのはロシアだ。米国がロシアへの石油制裁を緩和せざるを得なくなれば、ロシアは予期せぬ巨利を得ることになる。謝氏は、ロシアがその資金を武器調達に充てることで軍事力を強化し、結果としてウクライナがさらなる窮地に立たされるとの懸念を示している。
中国の戦略、通貨備蓄から「実物資産」への転換 原油価格の高止まりはエネルギー転換を加速させる。謝氏は、20年後には新エネルギーが石油供給の半分を代替すると予測し、その最大の受益者は中国になるとみる。太陽光発電や電気自動車(EV)などの輸出が大幅に増加するためだ。中国の2025年の貿易黒字は過去最高の1.19兆ドルに達したが、今年はさらなる更新が見込まれており、莫大な資金が中国政府に集中している。
謝国忠氏は、中国の光伏(太陽光発電)輸出が大幅に増加するとの見方を示している。(Antonio Garcia@Unsplash) 現在、中国政府が展開している戦略は「通貨備蓄を実物資源の備蓄に変える」ことだ。石油や鉱物、銅、鉄といった化学元素周期表に並ぶ資源が安値になったタイミングで大量に買い付け、備蓄を進めている。「万が一に備え、自国で資源を確保しなければ誰も信じられないというのが中国の本音だ。今後、世界中のマネーは資源へと流れていくだろう」と謝氏は指摘する。
通貨見通し ドル高継続、円は160円突破の恐れ 中東情勢の緊迫化を受け、第2四半期のドル指数は引き続き強含みで推移するとみられる。円、ウォン、台湾ドル、ユーロなど主要通貨が対ドルで下落基調を続ける中、人民元は数少ない例外となる。巨額の貿易黒字を背景に、人民元が対ドルで下落する余地は少ない。ただし、「戦争という状況下で中国政府は極めて慎重になる。まずは安定を優先するため、人民元の大幅な上昇も抑えられるだろう」と予測する。
日本円については、日本政府が1ドル=160円の防衛ラインを維持しようと市場と攻防を続けているが、謝氏は悲観的だ。貿易黒字の減少に加え、対中関係の悪化による経済への悪影響が本格化するのはこれからであり、円の長期的な下落トレンドは変わらないとみる。第2四半期中に160円の大台を突破する確率は非常に高い。
謝国忠氏は、第2四半期の台湾ドルは対ドルで下落基調が続くものの、32.5元を割り込むことはないとの見通しを示した。(資料写真、郭晋瑋撮影)
韓国と台湾、それぞれの懸念材料 韓国経済もまた、厳しい局面にある。北朝鮮への防衛策として高高度防衛ミサイル(THAAD)導入を決定して以来、中国との摩擦が長期化している。さらに、半導体、自動車、ディスプレイ、電池といった主要産業において中国勢の猛烈な追い上げに直面している。「日本の問題は周知の事実だが、韓国が抱える構造的課題は見過ごされがちだ。第2四半期のウォンの下落幅は、円に引けを取らないものになるだろう」と謝氏は警鐘を鳴らす。
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一方の台湾は、AIブームを背景に株価が好調を維持している。年初から3月19日までの台湾ドルの対ドル下落率は1.61%に留まり、ウォン(4.1%下落)や日本円(1.67%下落)と比較しても底堅い。第2四半期も円やウォンに連動して下落する可能性が高いものの、石油輸入への依存度が高い台湾では、中央銀行がインフレ抑制のために過度な通貨安を容認しない構えだ。そのため、台湾ドルの下落幅は日韓よりも緩やかになり、1ドル=32.5台湾ドル付近が下値を支える防衛ラインになると謝氏は予測している。
米利下げは「年内困難」の見通し、イールドカーブはフラット化へ 金利見通しについて、国内外の主流派は「2026年後半に計50ベーシスポイント(0.50%)の利下げが行われる」との見方を示しているが、謝氏はこれに異を唱える。「年内の利下げは非常に困難であり、実現しないだろう」と同氏は断言する。高油価に伴うインフレ圧力が、米連邦準備制度理事会(FRB)の判断を慎重にさせるためだ。一方、米10年債利回りには上昇圧力がかかっており、米国の対イラン作戦 の影響で近く4.5%に達し、来年には5%を目指す展開になると予測している。
また、米国政府が利払い費の抑制を目的として、国債の発行期間を短期化させている点にも注目すべきだ。これにより20年債や30年債の重要性は低下しており、需給バランスの観点からイールドカーブは「フラット化」に向かうとみられる。具体的には、10年債利回りが急峻に上昇する一方で、20年債や30年債の上昇幅は限定的なものに留まる見通しだ。
中国の戦略 表面上の「不介入」と、裏での「イラン支援」 謝氏は、現在の世界情勢における問題の本質は、中国の台頭に対する国際社会の「パニック」にあると指摘する。「見知らぬ国家が強大化することへの恐怖」が、多くの非理性的な行動を引き起こしているというのだ。これに対し、現在の中国の戦略は「不作為に徹し、他者が過ちを犯すのを静観する」というものである。
米国の対イラン作戦 についても、中国は表面上「静観」を決め込み不介入を装っているが、実態としてはイランを支援する立場を取る。イランの崩壊は中国にとって極めて不利益であり、何より米国に石油の支配権(油権)を完全に握らせるわけにはいかないという戦略的判断があるからだ。
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