イスラエル・米の対イラン攻撃から3週間、松永泰行教授が現状と展望を分析 日本記者クラブで会見

松永泰行教授は記者会見で、米国の対イラン先制攻撃に対するイランの長期持久戦術と、モジタバ新最高指導者体制下の内政不安を指摘し、早期停戦の必要性を訴えた。(写真/日本記者クラブ提供)
松永泰行教授は記者会見で、米国の対イラン先制攻撃に対するイランの長期持久戦術と、モジタバ新最高指導者体制下の内政不安を指摘し、早期停戦の必要性を訴えた。(写真/日本記者クラブ提供)

日本記者クラブで18日、東京外国語大学大学院の松永泰行教授を招き、「イスラエル・米の対イラン攻撃 背景と影響」と題した記者会見が開催された。イスラエルと米国によるイランへの軍事攻撃開始からまもなく3週間を迎える中、現代イラン政治研究の第一人者である松永教授が、双方の軍事戦略やイラン国内情勢、今後の見通しについて詳細な分析を行った。

イランの戦略:迎撃ミサイルの枯渇を狙う「消耗戦」

​松永教授の解説によると、2月28日の開戦初日、イランは最高指導者執務室に対する大規模な奇襲空爆を受け、ハメネイ最高指導者をはじめとする軍最高幹部らを失う甚大な被害を被った。しかし、イラン側は即座に総力戦で反撃するのではなく、保有するミサイルや無人機を段階的かつ計画的に投入する戦術を採っている。

これは、米国やイスラエルの迎撃ミサイルの在庫を枯渇させ、戦争継続のコストを高めることで、相手側に自発的な終戦を決断させるという合理的な軍事戦略に基づいている。また、ホルムズ海峡の事実上の封鎖についても、機雷の敷設といった物理的な破壊ではなく、巡航ミサイルなどの脅威によって船舶保険料を高騰させ、経済的圧力をかけることが主眼であると指摘した。

異例の後継指名と革命理念からの「逸脱」

​イラン国内情勢に関しては、ハメネイ最高指導者の殺害後、次男のモジタバ氏が後継に指名された異例の事態に言及した。モジタバ氏はイスラム法学者としての実績や公職経験が皆無であるにもかかわらず、イスラム革命防衛隊の強い後押しにより選出されたとされる。

松永教授は、これが戦時下における作戦継続と体制維持を最優先した結果であり、1979年のイスラム革命の理念からの逸脱を意味すると分析。国民生活が破壊され体制への不満が高まる中、新指導体制が国をまとめ上げられるかは極めて不透明な状況にあるとした。

AIによるインフラ破壊と人道的懸念

​一方、米国とイスラエルによる攻撃の目的について、松永教授は「正当化が困難な予防戦争の側面が強い」と指摘した。イランの核施設やミサイル網の破壊にとどまらず、AI(人工知能)を活用して標的を選定しているとみられ、警察署や病院、学校など、軍事とは無関係な民間インフラまで網羅的に破壊されているのが実態だという。このような一方的かつ非合法的な攻撃は国際社会の理解を得にくく、人道的な観点からも深刻な懸念があると述べた。

今後の展望:早期停戦でも安定化には程遠く

​今後の展望として松永教授は、事態のさらなる拡大を防ぐためにも、米国側からの攻撃停止宣言による早期終戦が国際社会にとって最善のシナリオであると強調した。

しかし、仮に早期に停戦が成立したとしても、経済制裁下での戦後復興には中国の支援が不可欠であり、国民の体制への反発も根強く残る。このため、イラン国内および周辺地域の安定化には程遠いとの厳しい見解を示し、会見を締めくくった。

編集:小田菜々香

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