トランプ氏、日米首脳会談で「真珠湾」持ち出し異例の発言 イラン攻撃の未通知を正当化、高市首相は絶句
2026年3月19日、ホワイトハウスで会談に臨む高市早苗首相とトランプ米大統領。(写真/AP通信提供)
トランプ米大統領は19日、訪米中の高市早苗首相との会談で、持ち前の予測不能なスタイルを改めて見せつけた。米軍とイスラエル軍によるイランへの電撃的な攻撃について、日本や欧州などの同盟国に事前の通知がなかった理由を記者団に問われると、トランプ氏は1941年の旧日本軍による真珠湾攻撃を引き合いに出し、高市氏の目の前で持論を展開した。
「奇襲については日本が一番知っているはずだ」
日米複数の報道によると、波紋を呼ぶこのやり取りは、ホワイトハウスの大統領執務室で行われた。19日午前、トランプ氏と高市氏による首脳会談の冒頭、記者会見の席で記者が質問を投げかけた。焦点は、今年2月28日の対イラン攻撃について、なぜワシントンは日本や欧州などの主要同盟国に事前通告を行わなかったのか、という外交上の疑念だった。
この鋭い問いに対し、トランプ氏はまず「あまり多くの人間に知らせるべきではないこともある」と断言。続けて、隣に座る高市氏に矛先を向け、「奇襲について、日本以上に熟知している国がこの世界にあるだろうか」と問いかけた。さらにトランプ氏は「真珠湾攻撃の時、日本も私に事前通知などしなかっただろう」と言い放った。
現場にいた『ニューヨーク・タイムズ』のハビエル・ヘルナンデス東京支局長によると、トランプ氏がこの「真珠湾ジョーク」を繰り出すと、米政府高官や記者団から笑いが漏れた。トランプ氏は自身のユーモアに満足げな様子で、イランへの軍事行動について「我々は奇襲を完遂した。不意を突くことこそが目的だったからだ。奇襲のおかげで期待以上の成果を上げることができた」と付け加えた。
トランプ氏はさらに、「奇襲に対する信念は、我々よりも君たち(日本)の方がずっと深いはずだ」と畳みかけた。
高市首相の反応は
『ニューヨーク・タイムズ』が「タブーを破った」と評したこの会見で、高市氏の反応も大きな焦点となった。
近代日本史上最も物議を醸し、日米双方にとって痛ましい記憶である真珠湾攻撃を冗談のネタにされた高市氏は、完全に不意を突かれた形となった。『ニューヨーク・タイムズ』は高市氏の様子を詳細に描写している。トランプ氏の発言を聞いた瞬間、高市氏は目を見開き、深く息を吸い込んだ。両手を太ももの上で固く握りしめ、一言も発することなく沈黙を貫いた。保守強硬派として知られる日本の女性首相は、ホワイトハウスのソファで硬直したまま、この気まずい場面に応じた。
歴史のタブーと和解 トルーマン、オバマ、そしてトランプ
『ニューヨーク・タイムズ』はまた、真珠湾攻撃に対する歴代米大統領の姿勢の変遷についても振り返っている。第二次世界大戦終結直後、ハリー・S・トルーマン大統領は、真珠湾攻撃という歴史を利用し、日本社会の改造や平和憲法の制定を正当化した。1945年から1952年にかけて、米国主導の連合国による占領下で制定されたこの憲法は、日本に戦争放棄を強いた。軍事力の発展を厳格に制限された日本は、自国の安全保障を米国の「核の傘」に完全に依存することとなった。
その後、国際情勢が冷戦期に入り、アジアで共産主義が急速に拡大すると、米国は共産圏を封じ込めるための拠点として、太平洋の「不沈空母」としての日本を必要とするようになった。これに伴い、米国側は真珠湾攻撃の語り方を変えていく。NYTは、ワシントンが同事案を一方的な非難の対象ではなく「歴史の悲劇」として描写し始めたと指摘する。米国高官らは、強固な安全保障・経済協力条約を構築するため、日本との同盟を急いだ。数十年もの間、歴代の大統領たちは、米国を二戦に巻き込むこととなった1941年の攻撃について言及することを極力避け、日本との同盟深化に専心してきた。
こうした歴史的な和解への努力は、2016年に最高潮に達した。旧日本軍の航空機が真珠湾の太平洋艦隊を壊滅させてから75年という節目、当時のバラク・オバマ大統領と安倍晋三首相は、真珠湾のアリゾナ記念館を共に訪れた。安倍氏は現地で「ここに斃(たお)れたすべての魂」に対し心からの哀悼の意を表し、両首脳は白い百合の花で作られた平和の花輪を捧げた。
オバマ氏は戦死した米兵を称えると同時に、安倍氏の訪問は「国と国、人と人の間で、和解と協力は絶対的に可能であることを我々に思い出させてくれた」と強調した。
専門家の解析 驚くべき「外交の後退」
日米が激しい戦争の記憶から生死を共にする同盟国へと歩んできたこの長い和解の道のりがあったからこそ、19日に行われたトランプ氏の発言に対し、専門家からは「不可解だ」との声が上がっている。ブルッキングス研究所のミレヤ・ソリス・アジア政策研究センター長も、『ニューヨーク・タイムズ』に対し驚きと懸念を表明した。
ソリス氏は、歴代の大統領が日本の指導者の前で真珠湾攻撃への言及を慎んできたのは、「日米間ですでに非常に深く実質的な和解のプロセスを経てきたからだ」と指摘する。それは相互の信頼と共通の利益の上に築かれた、歴史的な成果であった。
WSJ報、同盟国の「不満」と「依存」のジレンマ
トランプ大統領は「なぜ同盟国に事前通知しなかったのか」との問いに対し、「これは奇襲であり、かつて日本もそうした」と釈明したが、同盟国がこの論理を容易に受け入れられるはずもない。『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』紙は、今回のイラン空爆が世界的なエネルギーパニックを引き起こし、米国と同盟国の間に深刻な亀裂を生じさせたと指摘している。多くの主要同盟国が攻撃を知らされたのは開始のわずか数時間前であり、イタリアやエストニアの国防相にいたってはドバイで足止めを食らうなど、欧州やアラブの同盟諸国の間では不満が渦巻いている。
特に、トランプ氏が同盟国に対して「十分な軍事支援を提供していない」と公然と非難する一方で、同盟国側が提示した支援案を拒絶するなど、ホワイトハウスの対応は混迷を極めている。この戦争をどう終結させるのか、同盟諸国は憶測を巡らせるほかない状況だ。また、イスラエルとイランが地域の重要エネルギー施設を攻撃したことに対し、アラブ諸国は激しい憤りを見せている。トランプ氏は「イスラエルがイラン最大の天然ガス田を攻撃することを知らなかった」と主張しているが、米政府高官は、トランプ氏は事前に把握していたと証言している。
2月28日のテヘラン空爆とイランによるホルムズ海峡封鎖以降、国際原油価格は40%以上も急騰した。さらに、米国家反恐センター(NCTC)のジョー・ケント局長が戦争への反対を表明して辞任したことは、政権内部の深刻な足並みの乱れを露呈させた。トランプ氏は欧州の同盟国を「恩知らず」と批判し、ホルムズ海峡での護衛任務への参加を執拗に要求したかと思えば、直後に「彼らの助けなど必要ない」と前言を翻した。ヘグセス戦争部長(国防長官に相当)にいたっては、「米国とイスラエルは世界に大きな恩恵を施したのだから、同盟国は感謝の意を表すべきだ」と豪語している。
しかし、WSJ紙は次のような冷酷な現実も指摘している。トランプ政権がこの1年余り、同盟国への非難や関税の追加、さらにはグリーンランド買収提案による北大西洋条約機構(NATO)の危機を招いてきたとしても、突如として勃発したこのイラン戦時下において、同盟諸国は結局のところワシントンと歩調を合わせるほかない。欧州連合(EU)のカラス外交安全保障上級代表が漏らした「これは欧州の戦争ではないが、欧州の利益に直結している」という言葉は、欧州諸国の無力感を象徴している。
欧州大陸には米軍基地やインフラが点在しており、欧州は事実上、トランプ政権のイラン作戦における「武力投射プラットフォーム」としての役割を担わされている。米軍の空中給油機はルーマニアやブルガリアで整備と補給を繰り返している。米シンクタンク・大西洋評議会のジョナサン・パニコフ氏は、「同盟国は不満を抱きつつも、主要な安全保障を米国に依存し続けるだろう」と語る。トランプ氏による同盟国への辛辣な態度や「背後からの不意打ち」は、一部の国々に米国との関係を再考させ始めているが、短期的には依然として米国の「核の傘」を頼らざるを得ず、米国の顔色をうかがいながら行動を共にするという欧米世界の苦境が浮き彫りとなっている。
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