トップ ニュース トランプ氏、訪中を異例の延期 イラン情勢優先で米中会談に暗雲、中国側が抱く「ホワイトハウスへの不信感」の正体
トランプ氏、訪中を異例の延期 イラン情勢優先で米中会談に暗雲、中国側が抱く「ホワイトハウスへの不信感」の正体 2017年にトランプ氏は米大統領として訪中。習近平主席は紫禁城にて晩餐会を催し、一行を手厚くもてなした。(写真/AP通信)
国際外交における儀礼的な手続きの裏側には、通常、数ヶ月から半年以上にわたる緻密な計算とリハーサルが存在する。3月31日以降に予定されていた北京での「米中首脳会談」も例外ではなかった。しかし、パリで両国の代表が調整を進める中、イランとの戦火拡大とホルムズ海峡の封鎖問題に直面したトランプ大統領は、訪中日程を「5〜6週間」延期すると一言で言い放った。
香港紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト (SCMP)』は、中国当局がホワイトハウスの「朝令暮改」ぶりに強い不快感を示していると報じた。専門家の中には「米中関係の重要性は、もはや以前ほどではなくなったのではないか」との見方を示す者もいる。
緊迫する中東情勢と「消えた」首脳会談 トランプ氏は当初、2026年3月31日から4月2日にかけての訪中を予定しており、この会談は世界経済を安定させる最重要要因と見なされていた。しかし、2月28日にトランプ政権がイランへの空爆を敢行し、最高指導者ハメネイ師を殺害したことで事態は一変した。イラン側は中東の米軍基地へ報復攻撃を行い、世界のエネルギー動脈であるホルムズ海峡の封鎖を強めている。
2026年3月11日、アラブ首長国連邦(UAE)のホルフカンにて。ホルムズ海峡の沿岸を歩く男性。遠方にはタンカーや貨物船の姿が確認できる。(写真/AP通信提供) トランプ氏は「イランは終わりだ、米国の勝利だ」と繰り返し宣言しているが、実際にはホルムズ海峡の封鎖を解除できておらず、同盟国に対して護衛艦の派遣という「恩返し」を公然と要求している。こうした状況下で、レアアースの規制緩和や大豆の購入契約を協議するために中国へ向かう余裕は、彼にはないのが実情だ。
単なる戦況悪化による延期であれば、中国も辛うじて受け入れたかもしれない。しかし、SCMPによれば、中国当局はワシントンのこれまでの「常軌を逸した振る舞い」に対し、「極度の怒り(apoplectic)」を感じているという。ブレーキの壊れたジェットコースターのようなホワイトハウスは、国際規範や伝統的な外交慣例を置き去りにしている。約束を交渉のチップ(切り札)として扱い、瞬時に心変わりする相手を前に、中国の忍耐はかつてない試練にさらされている。
トランプ氏の「口実」と「計算」 今回の延期劇の表面的な理由はイラン情勢だが、トランプ氏の言動を詳しく紐解くと、そこには自己矛盾が透けて見える。清華大学戦略安全研究センターの孫成昊(スン・チョンハオ)研究員は、トランプ氏の訪中延期の理由が二転三転していると分析する。
孫氏はSCMPに対し、こうした行き当たりばったりの作領により、中国の上層部は「問題は外部環境ではなく、米国内部の調整が完全に混乱しており、ホワイトハウスの国家安全保障チームが『危機管理』と『首脳会談の準備』を並行して処理できていない」との結論に至った可能性が高いと指摘した。
釜山で行われた習近平主席とトランプ大統領の会談。中台関係やインド太平洋地域の今後の情勢を占う上で、極めて重要な意味を持つと見られる。(写真/ホワイトハウス公式サイト提供、 風傳媒編集)
「取引型外交」への格下げ 中国側の立場からすれば、元首外交の重要性は疑いようがない。しかし、孫氏は今回の延期が「トランプ式外交」の冷酷なシグナルを発したと見ている。それは、世界で最も重要な二国間のリーダー会談でさえ、外部の危機やホワイトハウス内部の派閥争いによって容易に撹乱されるという現実だ。トランプ氏は、今回の訪中を資源を集中させて外交礼儀を重んじる「厳粛な戦略的訪問」とは最初から考えていなかった恐れがある。
孫氏の分析によれば、トランプ氏が中国や他の主要同盟国に対し、ホルムズ海峡の再開への圧力を強めていることは、彼が今回の訪中を「単なる二国間会談ではなく、広範なグローバル危機管理と『取引型(トランザクショナル)外交』の枠組みに組み込んでいる」ことを示している。つまり、米中の大戦略を語るべき首脳会談が、「イラン攻撃に協力すれば、北京へ行ってやる」という利益交換のレベルにまで格下げされたのである。
ホワイトハウスの政治パフォーマンスと思惑 国際的な地政学の大きな文脈から離れ、純粋に米国内の政治工作として分析しても、トランプ氏が北京行きを見送ったことには実務的な裏付けがある。ユーラシア・グループ(Eurasia Group)のシニアアナリスト、ドミニク・チュウ(Dominic Chiu)氏は、今回の会談延期について「トランプ氏がイラン問題を最優先事項に据えていることの現れだ」と指摘する。
加えて、トランプ氏は現時点で北京を訪れ、手厚いもてなしを受けることによる「政治的な見え方(パブリックイメージ)」を警戒している可能性が高い。米軍が前線で命を懸けている最中に、三軍の最高司令官である大統領が北京で北京ダックに舌鼓を打ち、レッドカーペットを歩く姿は、米国の有権者の目には「広報上の大惨事」と映るからだ。
チュウ氏は「自身のイメージや映像が与える印象に極めて敏感なトランプ氏は、こうした訪問が公衆の面前で極めて不適切なものになると判断したのだろう」と述べる。一方で、会談が5〜6週間延期されたことは、必ずしも悪い面ばかりではないという。この猶予は双方にとっての「逃げ道」となり、煩雑な事務準備や膠着状態に陥った交渉戦線に、切実な息継ぎの時間を提供することになるからだ。
覆い隠された実質的な対立か ジョージア工科大学の王飛凌(フェイリン・ワン)教授(国際事務)は、首脳訪問の直前に露呈したこの巨大な不確実性について、米中両国間に「実質的な隔たりと深刻な意見の相違」が存在することを意味していると指摘する。王教授は「一方の側が、もう一方よりもこの会談の価値を重く見ている可能性がある」と語る。名指しこそ避けたものの、各地で火種を撒くワシントンに対し、事態の安定化を急ぐ中国の方が、今回の会談実現をより切望していることを示唆したものだ。
(関連記事:
トランプ氏、米中首脳会談の延期を発表 中東情勢緊迫で米国の威信に影
|
関連記事をもっと読む
)
2017年、中国の習近平国家主席夫妻の案内で、紫禁城を視察するアメリカのトランプ大統領夫妻。(写真/AP通信提供) ホプキンス・南京センター(Hopkins-Nanjing Centre)のデイビッド・アラセ(David Arase)教授は、現在のイラン危機や、トランプ氏による最近の「キューバ接収」を示唆する過激な発言を、一種の「攪乱要因」と表現する。「トランプ氏にとって、習近平氏と安定的かつ合意に基づいた関係の基準となる協定を結ぶこと以上に、重要なことがあるだろうか」とアラセ氏は問いかける。
アラセ氏は、今回の延期がトランプ氏の政治的な計算を露呈させていると分析する。トランプ氏は、イランやキューバといった厄介な問題を解決した後に、習氏に対してより多くの「戦略的な交渉カード」を握ることを目論んでいるのだ。言い換えれば、トランプ氏は自身の足元に火がついた状態で妥協を求めるのではなく、「勝者」の姿勢で北京に乗り込み、交渉を優位に進めたいと考えているのである。
「隔世の感」があるかつての蜜月 2017年にトランプ氏が米大統領として初めて中国を訪問した際と比較すると、当時の光景は今や越えがたい深い溝となっている。かつてトランプ氏と習近平氏は紫禁城で茶を飲み、京劇を鑑賞し、数千億ドル規模の経済合意に署名した。あの表面上の相互尊重と和やかな雰囲気は、今となっては文字通り「隔世の感」がある。
孫氏は、 中国側が依然として首脳会談の実現を望んでいるとしながらも、中国当局は今回の延期を「残酷なリマインダー(警告)」として受け止めるだろうと指摘する。それは、現在の米国の意思決定モデルの下では、元首級外交が持つ政治的象徴性や実務的なロジスティクスが、いとも簡単に反故にされてしまうという現実だ。中国が最も危惧しているのは、こうした無秩序な手法がもたらす不確実性によって、「明確な議題と予期される成果」を伴う首脳会談の開催そのものが困難になっていることだ。
孫氏は、外部環境全体、米国の意思決定ロジック、そして会合の潜在的なアジェンダのすべてが、2017年の訪中時よりも断片化され、取引的(トランザクショナル)になり、かつてないほど予測不能になっていると分析している。
更多新聞請搜尋🔍風傳媒日文版
最新ニュース
中国軍人事粛清、統合作戦能力に影響か 台湾安保当局「米支援削減を狙う『偽装の平和』」に警鐘 中国共産党の中央軍事委員会副主席、張又侠氏の失脚に伴い、中国軍内部で大規模な人事粛清が続いている。台湾の国家安全保障当局者は、これまでの将官級(上将・中将)にとどまらず、現在は校官級(佐官級)にまで粛清の範囲が広がっていると指摘した。さらに、一連の人事異動後、人民解放軍の「統合作戦能力」に明らかな落差が生じているとの分析を明らかにした。統合作戦能力の低下と「......
台湾、韓国に「最後通牒」 居留証を「南韓」表記に変更、外交摩擦の裏に透ける「親中警戒感」 韓国の電子渡航認証「K-ETA」において、台湾が依然として「中国(台湾)」と表記されている問題を受け、台湾当局は対抗措置に踏み切った。在台韓国人に発行される居留証の国名表記を、従来の「韓国(Korea)」から「南韓(South Korea)」に変更。分析家は、これが単なる呼称の問題にとどまらず、韓国と中国が急速に関係を深めていることに対する台湾の戦略的な懸念......
イスラエル・米の対イラン攻撃から3週間、松永泰行教授が現状と展望を分析 日本記者クラブで会見 日本記者クラブで18日、東京外国語大学大学院の松永泰行教授を招き、「イスラエル・米の対イラン攻撃 背景と影響」と題した記者会見が開催された。イスラエルと米国によるイランへの軍事攻撃開始からまもなく3週間を迎える中、現代イラン政治研究の第一人者である松永教授が、双方の軍事戦略やイラン国内情勢、今後の見通しについて詳細な分析を行った。イランの戦略:迎撃ミサイルの......
【中東緊迫】世界経済に「ハンドブレーキ」の懸念 ホルムズ海峡封鎖とエネルギー相互破壊の衝撃 イスラエル軍は18日、イランのエネルギー産業の「至宝」とされるサウス・パルスガス田を爆撃した。これにより、イランを巡る戦争はエネルギー施設を標的とした「相互破壊」の極限段階へと正式に移行した。イランの重要拠点が攻撃を受けた直後、革命防衛隊はカタールやサウジアラビアへミサイルを発射。カタールのラス・ラファン工業地区では「大規模な破壊」が報告されており、ロイター......
日本製鉄堺ブレイザーズ、天皇杯覇者との大一番へ 金岡公園体育館で「レア」なホームゲーム開催 大同生命SV.LEAGUE MEN所属の日本製鉄堺ブレイザーズ(本拠地:大阪府堺市)は、2026年4月4日(土)および5日(日)の2日間、堺市金岡公園体育館にて、昨年の天皇杯王者であるウルフドッグス名古屋を迎えたホームゲームを開催する。チャンピオンシップ進出をかけた正念場レギュラーシーズン最終戦を目前に控えた今節は、チャンピオンシップ進出を争うチームにとって......
トヨタ、2026年春闘で「満額回答」 AI時代に向けた「技」と「生産性」の向上へ不退転の決意 トヨタ自動車の2026年春季労使協議会(労使協)は18日、回答日を迎え、会社側は労働組合の賃金・賞与に関する要求に対して「満額回答」を提示した。自動車産業を取り巻く環境が激化する中、AI時代の到来を見据え、労使双方が「技を磨き、生産性を高める」という強い覚悟を行動に移すことで合意した。「かつてないレベルの生産性向上」への危機感今回の協議では、設備停止やプロ......
アークヒルズでソメイヨシノが開花 都心に現れる全長700mの「桜のトンネル」が春を彩る 森ビル株式会社(東京都港区、代表取締役社長 辻慎吾)が運営するアークヒルズ(桜坂〜スペイン坂)にて、2026年3月19日、ソメイヨシノの開花が確認された。アークヒルズの外周を取り囲む三方の道路には約130本の桜が植えられており、全長約700メートルに及ぶ桜並木は、都心では珍しい圧倒的な「桜のトンネル」として親しまれている。植樹から40年、歴史を刻むエリアのシ......
蔡力行、メディアテックの未来に向けた決定的な一手 エヌビディア黄仁勳との協業を再始動 グローバルなスマートフォン市場が成熟期に突入する中、台湾の半導体大手メディアテック(MediaTek)の次なる成長エンジンはどこにあるのか。同社の最高経営責任者(CEO)・蔡力行(リック・ツァイ)氏は、ポッドキャスト番組『A Bit Personal with Jodi Shelton』の独占インタビューに応じ、メディアテックの次なる戦略の青写真を明確に示し......
「台湾のシリコンバレー」新竹市長がつくば市を訪問 TSMC研究拠点を背景に産学連携を加速 台湾・新竹市の高虹安(カオ・ホンアン)市長率いる市訪問団は17日、日本の科学技術の拠点である茨城県つくば市を訪れ、五十嵐立青市長を表敬訪問した。台湾と日本の「科学技術都市」のトップが顔を合わせ、イノベーションや産業発展、人材育成における新たな協力の可能性について活発な意見交換を行った。「50嵐」がつなぐ親近感、和やかな交流会談の冒頭、高市長は台湾で絶大な人気......
「広域品川圏」が3月28日本格始動 高輪・大井町が同時開業、JR東日本が描く次世代都市の姿 WATERS takeshiba発着の「さくらクルーズ」を期間限定で運行するほか、将来的には「空飛ぶクルマ」の社会実装も視野に入れている。東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)は、浜松町駅から大井町駅にかけて展開する「広域品川圏(Greater Shinagawa)」の共創まちづくりを、2026年3月28日より本格始動すると発表した。同日は「TAKANAWA ......
一生に一度はお伊勢参り!三重県が台北で観光プロモーション 伊勢茶の呈茶や忍者演武で魅了 台湾の旅行者から高い人気を誇る三重県は16日、一見勝之知事自ら約20の観光事業者を引き連れ、台北文創(台北ニューホライズン)にて「三重県観光誘客プロモーション in 台北」を盛大に開催した。伊勢神宮の神聖な空気、伊賀流忍者の伝統、そして至高のグルメを凝縮した本イベントには、台湾の旅行・食品関連企業約50社が集結。日本台湾交流協会台北事務所の片山和之代表(駐台......
台湾、韓国への対抗措置で居留証表記を「南韓」に変更 林外交部長「効果がある」と確信 韓国のオンライン電子入国申告システム(電子入国カード)の一部項目において、台湾が「CHINA (TAIWAN)」と表記されている問題を巡り、台湾外交部(外務省に相当)は複数回にわたる抗議と交渉を経て、実質的な対抗措置に踏み切った。外交部は、3月1日付で台湾の外国人居留証(ARC)における韓国の名称を、従来の「韓国」から「南韓」に変更したと発表した。3月31日......
伝統の精神を現代の視点で再解釈、西麻布で展覧会「QUIET CLASSIC」開催 エイベックス・クリエイター・エージェンシー株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:加藤信介)が運営する西麻布のオルタナティヴ・スペース「WALL_alternative」にて、2026年3月11日(水)から4月11日(土)まで、展覧会「QUIET CLASSIC」が開催される。本展は、日本独自の「ものづくり」に宿る精神性や時間の積み重なりをテーマに、4名......
「TSMCの強みは複製困難」メディアテック蔡CEOが説く、台湾半導体の底力と地政学の虚実 世界的な半導体サプライチェーンの再編と米中技術覇権争いが激化する中、メディアテック(聯発科技)の蔡力行(リック・ツァイ)執行役員(CEO)は、地政学的な情勢に対して感情を排し、極めて冷静な分析を示した。同氏はポッドキャスト番組『A Bit Personal with Jodi Shelton』に出演し、近年の「ローカル製造」「サプライチェーンのリージョン化」......
横浜の没入型体験施設「ザ・ムービアム」会期延長が決定!6月28日まで トヨタグループは3月6日、横浜市山下ふ頭で開催中のイマーシブ・ミュージアム「THE MOVEUM YOKOHAMA by TOYOTA GROUP(ザ・ムービアム ヨコハマ)」の会期を、2026年6月28日まで延長すると発表した。当初の終了予定は2026年3月31日だったが、より多くの来場者に「移動と感動」の体験を提供するため、約3ヶ月の延長を決定。今後の状......
米、2027年「台湾侵攻説」を公式否定 情報長官「武力統一のタイムライン存在せず」 過去5年間にわたり、ワシントンのシンクタンクや政界では「2027年までの中国による台湾侵攻」が一種のコンセンサスとなっていた。あたかもその時が来れば、人民解放軍の揚陸艦が台湾海峡の中間線を越えてくるかのような、「デービッドソンの窓」と呼ばれる戦略的焦燥感が、近年的インド太平洋地域の安全保障論議を支配してきた。しかし、この中国による武力行使の時期に関する判断と......
麻布台ヒルズで第3回「廊下音楽」開催へ TENDREや梅井美咲らが出演 森ビル株式会社は、麻布台ヒルズにて「廊下」を舞台とした音楽イベント「廊下音楽(Hallway Music)」の第3弾を2026年3月27日に開催すると発表した。本イベントは、アコースティックな音楽や軽食を日常の延長線上で楽しむ新たな体験を提供し、人々のコミュニケーションの場を創出することを目的としている。注目の出演アーティストには、Squareステージにマル......
拡大する「コミュニティラン」市場、ピーティックスが2026年春の特選イベント特集を公開 イベント・コミュニティプラットフォームを運営するピーティックス(Peatix)は、2026年春のランニングシーズンに向け、「コミュニティラン」をテーマとした特集を公開した。近年、ランニングはタイムや順位を競うスポーツから、交流や景観を楽しむライフスタイルの一部へと変容しており、都市部を中心に「誰と走るか」という体験価値を重視するグループランやテーマ型イベント......