トップ ニュース 【林庭瑤コラム】トランプ氏の中東護衛要請、台湾・頼清徳総統が艦隊遠征?
【林庭瑤コラム】トランプ氏の中東護衛要請、台湾・頼清徳総統が艦隊遠征? 頼清徳総統は19日午前、高雄市を訪れ、「海昌計画」、「海軍大気海洋局」および「海軍第256戦隊」を視察し、潜水艦「海鯤」に搭乗した。(総統府提供)
アメリカ、イスラエル、イランをめぐる中東の戦局は、まさに「尻尾が犬を振る(Wag the dog)」というブラックコメディの様相を呈している。イスラエルが執拗に火種を作り、アメリカがそれに巻き込まれた結果、イランとの「非対称戦」の泥沼で進退窮まっているのである。ドナルド・トランプ氏がドイツ、フランス、日本、オーストラリア、さらには中国に対して「護衛の招集令」を発する中、これら古くからの大国がこぞって耳を貸さず、言葉を濁している一方で、台湾の内部では奇妙な「参戦の熱狂」が巻き起こっている。
長年、戦略的な真空状態の中で生きてきた一部の「オピニオンリーダー」たちは、台湾総統・頼清徳氏のためにトランプ氏へ忠誠を誓う「忠誠の証(投名状)」の起草に奔走している。彼らは台湾が中国に対抗し、台湾を防衛する能力があることを証明するため、国軍の血を流してでも「台湾愛」の看板を磨き上げようと試みているのだ。
中東遠征の幻想:トランプ氏へ「忠誠の証」を差し出すのか? この議論の火付け役となったのは、米国防総省やアメリカ在台協会(AIT)での勤務経験を持つ、元米空軍中佐・胡振東氏である。同氏が台湾メディア『風傳媒』の独占インタビュー で語った「自ら進んで立ち上がるべきだ」という主張は、現実主義者の耳には現代版の「自ら罠に飛び込む」ようなものに聞こえる。胡氏は、台湾が中東へ掃海艇を派遣し支援すべきだと主張しており、その理由は驚くべきことに「声を上げる千載一遇のチャンス」だからだという。
これは1990年代の湾岸戦争における「砂漠の嵐作戦」を彷彿とさせる。当時、絶頂期にあったアメリカでさえ、ジョージ・H・W・ブッシュ氏は台湾の派兵による関与を望まず、台湾に対しては「暗黙の支援」という名目で1億米ドルを支払わせるにとどめた。アメリカが「世界のリーダー」として圧倒的な勢いを誇っていた当時でさえ台湾の軍事的プレゼンスを必要としなかったのに対し、米軍が「帝国の衰退期」にある現在、主力空母「ジェラルド・R・フォード」でさえトイレの詰まりや乗組員の長期任務による士気崩壊が報じられている中で、胡氏は台湾に対して自ら「地獄への切符」を受け取りに行くよう提案しているのである。世界の同盟国がトランプ氏を見放す中、台湾だけがこの「片思い」の軍事冒険ゲームを続けている姿を世界に見せつけたいとでもいうのだろうか。
アメリカの空母ジェラルド・R・フォード。(AP通信)
ロマン主義の誘惑:「正常な国家」へ向かうための代価か? 歴史を振り返ると、『ペロポネソス戦争史』には古代ギリシャのアテナイによるシチリア遠征という古典的な物語が記されている。紀元前415年、アテナイは野心家であるアルキビアデス氏の扇動により、今回と同様に「遠征」に対するバラ色の幻想を抱いた。当時、アテナイは無名の小さな同盟国セゲスタを支援するため、戦略家・ニキアス氏の必死の反対を押し切り、国家の全財力を傾けて地中海最強の遠征艦隊をシチリア攻撃へと向かわせたのだ。
その結果はどうなったか。この「意志を示す」ために飾られた遠征軍は、最終的に集団墓地へと変わった。数万人の精鋭である市民兵が異郷で命を落とし、アテナイが誇る海軍の基盤は完全に崩壊したのである。この「支援」がアテナイの覇権崩壊を直接的に招く結果となった。汪氏や矢板氏が「意志」と「好機」について熱弁を振るう際、彼らは明らかに一つの事実を忘れている。それは、駒が自ら盤上に飛び乗って打ち手を名乗ろうとする時、それは往々にして相手に取られる瞬間であるということだ。
「目には目を」の現実:台湾は焦土戦に耐えられるのか? このように傍観して囃し立てる野心家たちは、イランが単なるスローガンを叫ぶだけのかかしではなく、「焦土戦略」を遂行できる地域の大国であることを忘れているようだ。最前線に位置するカタールやサウジアラビアといった石油大国を見てみればよい。彼らはイランと隣接しており、「目には目を、歯には歯を」という聖戦の論理を熟知している。そのため、米イラン紛争における彼らの対応は、誰よりも「穏やかで控えめ」なものである。
イランの無人機がすでにカタールの油田を精密に攻撃できる能力を持ち、さらには米国西海岸のハイテク企業にまで脅威を及ぼし得る中、台湾がドイツから購入した老朽化した掃海艇がペルシャ湾に展開すれば、それはイランにとって格好の「政治的標的」となるだけでなく、台湾のエネルギー供給という生命線を焦土的報復の危険にさらすことになる。これは米国支援の護衛なのか、それとも自ら火を招く行為なのか。米国から護衛参加を求められている各国も、攻撃のリスクや戦争への巻き込まれを懸念している。こうした状況下で、台湾は本当に中東への派遣に踏み切れるのか。
2026年3月14日、迎撃されたイランの無人機の残骸がアラブ首長国連邦の石油施設に落下し、火災と黒煙を引き起こした。(AP通信)
ミアシャイマー氏の警告:真の「愚か者」とは誰か 攻撃的現実主義の代表的学者であるジョン・ミアシャイマー氏は、「われわれ(米国)は愚か者の集まりだ」と厳しく批判する。米国は勝算のないイランとの戦争を引き起こし、中国やロシアに米軍の限界を露呈させただけでなく、「迎撃ミサイル不足」という構造的問題にも陥っているという。数百万ドルのミサイルで、数千ドル規模のイラン製シャヘド無人機を迎撃する構図は、もはや戦争ではなく「慢性的な自滅」に等しいと指摘する。
こうした戦略的膠着状態に対し、米国の有力な戦略家が懸念を示す一方で、台湾の一部では中東への軍派遣を主張する声もある。他国の戦争に介入する判断は、しばしば自国の実力を過大評価し、戦争の拡大性を過小評価することで、取り返しのつかない結果を招く可能性がある。賴清徳総統が艦隊派遣によって対米姿勢を示す前に、誤った戦略判断に陥る危険性を慎重に見極める必要がある。
『孫子』火攻篇には「主は怒りによりて兵を起こすべからず、将は憤りによりて戦うべからず」とある。中東への派兵は、一見すると米国への忠誠の表明に見えるが、実際には出口戦略のない危険な賭けに国家の命運を委ねることになりかねない。台湾がエネルギー転換や地政学的圧力という課題に直面する中で、こうした判断が果たして妥当なのかが問われている。
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