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ネット動画と新たな対立軸が浮き彫りにする「高市現象」の背景 成蹊大学・伊藤昌亮教授が分析 高市現象はショート動画が捉えた自己啓発的欲求と、曖昧な格差に苦しむ新たな社会対立構造の産物である。(写真/日本記者クラブ提供)
成蹊大学の伊藤昌亮教授は2026年4月9日、日本記者クラブで「高市現象と日本の政治」をテーマに講演した。伊藤氏は、ネット空間における支持拡大の構造や有権者の意識に変容をもたらした新たな「対立軸」について、社会学的見地から詳細な分析を行った。
伊藤氏は今回の高市現象を、単なる政局の一過性の動きではなく、現代社会に渦巻く不満や不安が反映された「社会現象」として捉えるべきだと指摘した。
「ショート動画」と「推し活」化する政治 伊藤氏の分析によれば、SNSを通じた政治コミュニケーションは、従来の「テキストとインフルエンサーによる拡散」から、「ショート動画とアルゴリズムによる拡散」へと劇的に変化している。
切り抜き職人の台頭: 自民党の公式動画よりも、一般の「切り抜き職人」が制作した、数十万もの共感を集める動画が圧倒的な流通量を誇る。 キャラクター性の重視: これらの動画は政策論争よりも、政治家のキャラクター性や自己肯定感、ポジティブな姿勢を強調する内容が中心だ。 自己啓発と支持の融合: 低成長時代において、若年層や不安定な雇用環境にある層は、社会全体の改善よりも「自己の生き方や成長」を模索している。政治家の放つ自己啓発的なメッセージに共感し、あたかも「推し活」のように支持を広げる構図が鮮明になった。
変容する対立軸、「左右」から「新旧」「上下」へ 伊藤氏は、現代の政治空間では従来の「保守対リベラル(左右)」という対立軸が機能不全に陥り、新たに「新旧」および「上下」の対立軸が顕在化していると論じた。
「新旧対立」の爆発: デジタル化の遅れや世代間格差に対する現役世代の不満が「新旧対立」として顕在化した。リベラル派が従来の枠組みで「右派」として批判を展開しても、有権者には既存の「オールド連合」に対抗するフレッシュな存在として映り、フレーミングのずれが生じている。 「曖昧な格差」による「上下対立」: かつての明白な貧困層ではなく、インフレや円安の影響を受けながらも恩恵を享受できない中小企業経営者や非正規雇用者など、下位中間層が抱える「曖昧な格差」が焦点となっている。彼らは負担増につながる再分配よりも「減税」や「積極財政」を求めており、独自の経済アピールがこれらの不満を的確に吸収した。
リベラル派の課題と今後の展望 最後に伊藤氏は、リベラル派が「反貧困・反差別・反戦」といった従来の枠組みをアップデートできず、中間層やマジョリティの中に生じた「曖昧な弱者」の不満を掬い上げられていないと苦言を呈した。
現在の社会現象は不満が結集した一時的な「沸騰現象」という側面も持つ。しかし、政治空間が日常に戻った際、複雑な安全保障や経済課題に対して、どのような対案と成長戦略を示せるかが、今後の政治的対立軸を再構築する鍵になると結論づけた。
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