【人物】頼清徳総統指名の検事総長候補に異議 公然と批判した陳宏達主任検事とは

2026-04-14 09:37
検事総長の人事公聴会で、候補者の徐錫祥(シュ・シシャン)氏を「不適格だ」と直言した台湾高等検察署の陳宏達(チェン・ホンダ)主任検事(写真)。頼清徳総統の指名に公然と異を唱える形となり、検察内部に激震が走っている。(資料写真、顏麟宇撮影)
検事総長の人事公聴会で、候補者の徐錫祥(シュ・シシャン)氏を「不適格だ」と直言した台湾高等検察署の陳宏達(チェン・ホンダ)主任検事(写真)。頼清徳総統の指名に公然と異を唱える形となり、検察内部に激震が走っている。(資料写真、顏麟宇撮影)

台湾の頼清徳総統は、第13代検事総長に最高検察署の徐錫祥(シュ・シシャン)主任検事を指名した。立法院(国会に相当)での人事同意投票を前に、2026年4月8日に開催された公聴会において、受邀した台湾高等検察署の陳宏達(チェン・ホンダ)主任検事が、徐氏について「不適格である」と直言。与野党議員の面前で総統の指名に異議を唱えるという、異例の事態となった。

検察内部の身内である徐氏に対し、事実上の「背後から撃つ」形となった今回の批判を受け、立法院の同意投票の行方に注目が集まっている。なぜ陳氏は、公の場で「検察の嫌われ役」を買って出て、検察組織に対する「自爆テロ」とも言える発言に踏み切ったのか、その背景を探る。

検察界きっての「物言う検事」陳宏達とは何者か

​検察体系に公然と異を唱える陳宏達とは、どのような経歴の持ち主なのか。現在67歳の陳氏は、輔仁大学法学部を卒業し、同大学院で修士号を取得。国立台湾海洋大学海洋法律研究所の博士候補生でもある。司法官訓練所第26期の出身で、現台湾法務部長(法相に相当)の鄭銘謙(テイ・メイケン)氏とは同期にあたる。

20251112-法務部次長徐錫祥12日於司法法制委員會備詢。(顏麟宇攝)
第13代検事総長に指名された法務部次長の徐錫祥氏(写真)。与野党の対立を背景に、人事同意権の行使には不透明感が漂う。(写真/顔麟宇撮影)

鄭氏が訓練所修了後に屏東地検署へ配属されたのに対し、陳氏は嘉義地検署へ配属された。当時の慣例では、配属先は訓練所での成績によって決定されたため、ベテラン検察官の間では「陳氏の成績は鄭氏よりも優秀であり、それゆえに当時の主要な配属先であった嘉義への配属を勝ち取った」というのが定説となっている。

厳格な師の下で培われた「不屈の精神」

陳氏が配属された当時の嘉義地検署を率いていたのは、屏東から異動してきた張春栄(ジャン・チュンロン)検察長だった。張氏は、屏東地検署の新庁舎建設時、業者の手抜き工事を監視するために連日現場を厳しくチェックし、主任検事に対してもコンクリート打ちの際などに現場で立ち会うよう命じるほど徹底した人物だった。

その厳格さは捜査の指揮においても同様であり、張氏の下で働く検事たちは、片時も油断を許されない緊張感の中で職務に当たっていたという。このような厳しい環境下での経験が、今日の陳氏の妥協を許さない姿勢を形作ったといえるだろう。

20260311-法務部長鄭銘謙出席「中央選舉委員會人事同意權案」、「李貞秀委員立法委員身分認定」等案黨團協商。(蔡親傑攝)
法務部長・鄭銘謙氏(中央)と同期の陳宏達氏。初回の配属先から推測すると、当時の成績は鄭氏を上回っていた可能性が高い。(写真/蔡親傑撮影)

名将・蕭順水の下で磨かれた手腕と「コネ」を拒む潔癖さ

​陳氏の故郷は新北市新店区にあり、職務の異動は北上する形で進んだ。検察官としての第2の舞台は桃園地検署である。当時の検察長は、警察官および刑事組長出身で、捜査のプロとして知られた蕭順水(シャオ・シュンシュイ)氏だった。その手法は変幻自在でユニークを極め、「名将の下に弱卒なし」の言葉通り、蕭氏の下からは第24期の邢泰釗(シン・タイジャオ)検事総長や、朱家琦(シュ・ジャチー)高雄高分検検察長といったそうそうたる顔ぶれが輩出されている。
(関連記事: 【杜宗熹コラム】鄭習会談が示すもの 中台「平和統一」への布石か、中国の対台湾メッセージを読む 関連記事をもっと読む

桃園地検署時代を知る検察官は、あるエピソードを回想する。当時、交際関係が複雑だと噂されていたある検察官がいた。蕭氏は陳氏の能力と本性を見極めるため、その検察官が担当していた案件を陳氏に引き継がせるよう命じた。

最新ニュース
台北・微風信義にてentakuの「わかってないなぁ展」と「うれしいすぎるよ展」が開催中
【寄稿】台湾はなぜインド人労働者を受け入れるのか その必要性と制度の意義
【李忠謙のコラム】トランプ氏、「AI画像」投稿で波紋 ホルムズ海峡めぐる強硬策のリスク
矢田稚子前首相補佐官、「女性参画と地方経済」をテーマに講演 男女賃金格差の是正を訴える
自民大勝と「高市現象」が刻む歴史的転換点 中北浩爾教授が分析するSNS動員と多極化する連立システムの行方
ネット動画と新たな対立軸が浮き彫りにする「高市現象」の背景 成蹊大学・伊藤昌亮教授が分析
中満泉国連事務次長、NPT空洞化に強い危機感 運用検討会議を前に日本の外交的役割に期待
【独占】読者へ届けたい「本来の美しさ」とは 美容整体師と画家の二つの顔を持つ麗(Urara)が語る、独自の人生哲学
【張鈞凱コラム】誰が習近平氏が「統一」に言及していないと言ったのか?
【国際の扉】イラン「二重海軍」体制の特異性、ホルムズ海峡を掌握する真の軍事力の正体
台湾、インド人労働者の受け入れへ 労働部長「第1陣は年内の可能性」
トランプ氏、ホルムズ海峡の「全面封鎖」を宣言 イランへの通行料支払船はすべて臨検・拿捕の対象に
米イラン交渉が決裂 トランプ氏、ホルムズ海峡封鎖を表明 原油高と世界経済への影響
【杜宗熹コラム】鄭習会談が示すもの 中台「平和統一」への布石か、中国の対台湾メッセージを読む
リッチモンドホテル青森、4月15日にレストランを全面刷新 「地域とつながる滞在型ホテル」へ進化、青森の食文化を体感
孤独は「1日15本の喫煙」に匹敵する健康被害 岡本純子氏、日本社会で孤立する中高年男性の危機的現状を指摘
イスラエル・米の対イラン攻撃で世界最大の供給途絶、田中伸男氏が「エレクトロステート」への転換を提言
参政党・神谷宗幣代表、日本外国特派員協会で会見 独立自尊の国防と日本人保護を強調
中東紛争とトランプ政権の地政学リスク エネルギー危機と市場の不確実性を専門家が分析
小野田AI戦略担当相、自身のAI利用は「業務で必要性感じず」 人材育成の重要性は強調
台湾北部に新交通網、台北・新北・桃園と台湾鉄道を結ぶ路線の開通時期
プーチン氏に数千億円の「臨時収入」 EU、イラン戦火でロシア産ガス依存から脱却できず
【独占】「偶然」から東京クリエイティブ業界の最前線へ 台湾出身プロデューサー・頼千川凛が拓く、日台クロスオーバーの新たなステージ
欧米人が熱狂する日本の空き家投資、その後に待つ「想定外」の現実
六本木ヒルズ展望台が『チ。』の世界に 数百万の星空と哲学が交差する「星空シアター」も登場
サマソニ最終ヘッドライナーにAdoが決定!25周年の節目に日本人アーティスト2組が並ぶ歴史的快挙
【MLB】8球団が「シティコネクト」新デザインを発表 公式ショップで販売開始
三菱地所、「DX注目企業2026」に選定 生成AI活用と組織的なDX推進力が評価
ユニクロ、平野歩夢のスペシャルトークイベントを4月15日に開催 大怪我からの復帰と未来を語る
Umios、JR東日本、東大、Phicが共創ブランド「umios Planet」を始動 海から「地球益」の具現化へ
ドジャースのワールドシリーズ連覇を祝す「チャンピオンリング」が登場 4月10日より受注販売開始
台湾半導体ドキュメンタリー『チップ・オデッセイ 台湾の賭け』国会初上映、TSMCの発展と民主主義サプライチェーンの結束に焦点
てんや「Good JAPAN」企画、富山産ほたるいかなど「日本の旬」を味わう初夏限定メニューを4月23日より発売
【2026年GW】東京駅グランスタ店長101人が「自社以外」から選んだ「ガチ推し」手土産スイーツTOP10が初公開
【CRAFT SAKE WEEK 2026】中田英寿氏が率いる「HANAAHU TEA」が出展、次世代ティーペアリングの到達点を提示
「技人国」ビザの審査厳格化、入管庁が4月15日より対人業務にN2要件を正式導入
2026年版外交青書が閣議報告 中国「重要な隣国」に表現後退、国際秩序の動揺を強調
世界を魅了する和太鼓集団の常設拠点「DRUM TAO THEATER KYOTO」が4月9日、京都駅前に開業
【独占】東京大学・羽藤英二教授が語る「東京トーチ」と都市交通の未来 リニア時代における地方創生と国際競争力の行方
【独占】「人生はもともと困難」フォロワー10万人の少女阿妙が語る、東京の職場でペンを武器に戦う「等身大」の姿
AIが招く大量失職の危機、OpenAIが「富裕層課税」を提言 ビル・ゲイツ氏の「ロボット税」が再浮上
中国軍上将40人中36人が公の場に姿見せず 習近平氏の粛清が台海情勢に影落とすか
【寄稿】原油価格はなぜ再び高騰したのか?二つの戦争から読み解く異なる経済ロジック
【張瀞文コラム】インテルとTSMCに大差がある中、なぜマスクは「テラファブ」を進めるのか
【米イラン戦争の教訓】ミアシャイマー氏「アメリカと距離を置け」 トランプ氏の誤算に警鐘
米3月CPIが急伸、原油高の影響鮮明に 米国債市場は利回り上昇を警戒
訪中の鄭麗文・国民党主席、上海で台湾企業関係者に「2028年の政権奪還」訴え
【10年ぶりの国共トップ会談】習近平氏は「統一」に直接言及せず、鄭麗文氏は「運命共同体」提唱
ホルムズ海峡、通航を「1日15隻」に制限 イランが石油航路を掌握、世界経済に新たな衝撃
【舞台裏】台湾有事の死角、中東戦火が突いた「石油より深刻な」3物資の欠乏 インフラ維持に潜む致命的リスクの正体