【舞台裏】中国のスパイ工作か、元民衆党候補の徐春鶯氏を起訴 頼清徳総統周辺にも波及、捜査当局に衝撃

かつて台湾民衆党の比例代表候補リストの当選圏内に名を連ねた徐春鶯氏(写真)が中国スパイ事件に関与したとして、検察は反浸透法違反などの罪で起訴した。関係者の捜索を進める中で、野党陣営の人物らに混じり、思いがけず与党・民進党関係者の名が浮上した。(写真/柯承恵撮影)
かつて台湾民衆党の比例代表候補リストの当選圏内に名を連ねた徐春鶯氏(写真)が中国スパイ事件に関与したとして、検察は反浸透法違反などの罪で起訴した。関係者の捜索を進める中で、野党陣営の人物らに混じり、思いがけず与党・民進党関係者の名が浮上した。(写真/柯承恵撮影)

台湾民衆党(以下、民衆党)比例代表立法委員(国会議員に相当)候補李貞秀氏の国籍問題が立法院で紛糾する中、新北地方検察署は2026年3月24日、かつて同党の比例名簿に含まれ物議を醸した「新住民発展協会」名誉理事長の徐春鶯氏を起訴したと発表した。

起訴理由は、反浸透法、銀行法、刑法上の公文書偽造および詐欺取財等の罪に問われている。徐氏は敵対勢力である中国共産党の指示を受け、民衆党の総統候補であった柯文哲氏や台北市長候補の黄珊珊氏の応援・宣伝活動を行ったほか、長期にわたり台湾国内の政党内部情報を中国側に提供していた疑いが持たれている。

本件は、第一審の新北地検が「反浸透法」で起訴したにとどまらず、第二審の高等検察署(高検)が「台湾の国家安全法」に基づき、組織拡大罪で捜査を継続しており、さらなる波紋を呼んでいる。

「反浸透法」と「国安法」の二段構え 捜査の手は与党内部へも

​中国による選挙介入事件は通常、第一審の地方検察署が「反浸透法」で捜査するが、「国家安全法」上の「組織拡大罪」については、第二審の高検および高分検が指揮を執る。新北地検による選挙介入の捜査の背後で、高検もまた調査局を指揮し、組織的なスパイ網の解明を進めていた。

捜査当局が徐氏と中国共産党との接触を把握する中、現在、検察・捜査当局を最も震撼させているのは、徐氏が接触していたリストの存在だ。その中には、民進党関係者、それも頼清徳総統に近い派閥の人物が含まれていたという。

これを受け、当局は極めて慎重な対応を迫られており、政界全体へのさらなる波及が懸念されている。

台湾民眾黨主席柯文哲(右三)、柯文哲競選總幹事黄珊珊(右四)、政大教授江明修(右一)中華兩岸婚姻家庭服務聯盟秘書長徐春鶯(左一)、台灣新住民黨主席麥玉珍(左二)16日出席柯文哲競總「共融多元,族群文化政策」記者會。(柯承惠攝)
検察当局の調べによると、徐春鶯氏(左から1人目)は中国共産党の指示を受け、2022年の統一地方選挙において、当時民衆党主席だった柯文哲氏(右から3人目)や、台北市長選に立候補していた黄珊珊氏(右から4人目)の応援演説に参加していた。(写真/柯承惠撮影)

二段構えの捜査、検察総長が下した「長い糸で大魚を釣る」への決断

​当初、新北地方検察署(新北地検)は2024年後半の時点で、すでに徐春鶯氏への強制捜査に着手できる十分な体制を整えていた。当局がそこまで自信を深めていた背景には、徐氏が中国民政部海峡両岸婚姻中心の楊文濤主任や、上海市委員会祖統会の孫憲副主任らと接触していた事実を完全に把握していたことがある。

徐氏が民衆党の総統候補であった柯文哲氏や台北市長候補の黄珊珊氏の応援・宣伝活動を行っていたことは、「反浸透法」の構成要件を満たしており、さらに「銀行法」違反にあたる地下送金の証拠も揃っていた。新北地検としては、指揮下の捜査機関を動かして一斉捜索に踏み切りさえすれば、徐氏が「中国共産党の協力者」であることを裏付ける決定的な物証を得る、あるいは少なくとも地下送金の容疑で追い詰めるという、「進退の自由」を確保した極めて有利な状況にあった。
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「藪を突いて蛇を出す」懸念 一審と二審の捜査方針が対立

​しかし、一方で「国家安全法」上の組織拡大罪を追っていた高等検察署(高検)の捜査は難航していた。長期にわたる監視や通信傍受でも決定的な証拠が掴めず、もし新北地検が先行して強制捜査を行えば、徐氏という「魚」は捕らえられても、背後の共犯者たちが警戒して身を隠してしまう「藪を突いて蛇を出す」事態を強く懸念していた。二審の検察側は、捜査網をさらに広げるための時間を稼ぐべく、地検側の行動を一時見合わせるよう求めた。

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