トップ ニュース 遠藤正敬氏が語る戸籍の変遷 壬申戸籍から植民地支配、戦後の国籍剥奪まで
遠藤正敬氏が語る戸籍の変遷 壬申戸籍から植民地支配、戦後の国籍剥奪まで 戸籍制度は単なる行政手続きではなく、明治期から国民を管理しアイデンティティを規定してきた政治的構造であり、現代においてはその存続意義が問われている。(写真/日本記者クラブ提供)
2026年3月26日、政治学者で早稲田大学非常勤講師の遠藤正敬氏が日本記者クラブで記者会見を行い、自著『戸籍の日本史』をテーマに講演した。遠藤氏は戸籍研究の第一人者であり、2017年にサントリー学芸賞を受賞している。本講演では、律令制下で創設された戸籍が明治維新を経て再編・復活し、今日までどのように機能してきたかについて詳細な解説がなされた。
遠藤氏は、戸籍を単なる法学や行政の手続きとしてではなく、「国家が個人を管理する権力関係」、すなわち政治学の問題として捉えるべきだと主張した。大学の授業で学生に尋ねても自身の戸籍を見たことがある者はごく僅かであり、多くの人が住民票との違いを理解していない現状を指摘し、戸籍という存在が日本社会において十分に理解されていないと述べた。
近代国民国家の建設と「壬申戸籍」 歴史的に見ると、古代の戸籍は徴兵や徴税、浮浪人の取り締まりなどを目的とした国家による個人管理の制度であった。これが明治維新において、欧米列強の脅威に対抗し得る近代的な国民国家を建設するため再編された。1872年に編纂された「壬申(じんしん)戸籍」では、天皇や皇族を除くすべての登録者が「臣民」と定義され、身分を問わず日本国民としての意識を植え付ける役割を果たした。戸籍は単なる身分登録簿にとどまらず、臣民であることの証明として機能したのである。
「家」制度の確立と「プチ天皇」としての戸主 1898年に施行された明治民法および改正戸籍法により、「家」制度が確立した。この制度下では、家の長である「戸主」が家族の財産管理や婚姻の同意権など強大な権限を持ち、事実上の「プチ天皇」として君臨した。戸主の座は原則として嫡出の長男に継承されたが、樋口一葉のように男子が不在または早世した場合には、例外的に女性が戸主になるケースも存在した。しかし、女性戸主が結婚する際に行われた「入夫(にゅうふ)婚姻」の制度では、女性が戸主の地位を夫に譲らなければならない規定があり、当時の男尊女卑の思想が色濃く反映されていた。
植民地支配と「戸籍主義」の展開 大日本帝国の拡大に伴い、戸籍は植民地支配においても重要な役割を担った。北海道のアイヌや沖縄の人々が日本式の氏名を付与され戸籍に登録されたほか、台湾や朝鮮の人々もそれぞれ「台湾戸籍」「朝鮮戸籍」に編入された。
戦後の国籍剥奪と制度の存続 戦後処理においても、戸籍は決定的な役割を果たした。1952年4月28日のサンフランシスコ平和条約発効に先立ち、日本政府は法務省通達により、朝鮮戸籍および台湾戸籍にある者の日本国籍を、本人の選択権を認めず一律に剥奪した。
また、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の占領下では、戸籍の廃止や個人単位への移行が検討された。しかし日本側は「紙不足」などの経済的理由を盾に抵抗し、結果として家制度の名残を色濃く残す戸籍制度が存続することとなった。
夫婦別姓議論と「戸籍廃止」への提言 現在の選択的夫婦別姓をめぐる議論について、遠藤氏は「夫婦同姓が日本の美しい伝統である」とする保守層の主張を真っ向から否定した。同姓が義務付けられたのは1898年の明治民法以降であり、それ以前は夫婦別姓が原則であったという歴史的事実を提示した。
その上で、マイナンバーや住民票が普及した現代において、行政コストの面からも戸籍の必要性は薄れていると指摘。段階的な「選択的戸籍制度」の導入を経て、最終的には戸籍を廃止し、各種統計を一本化すべきであるとの見解を示した。
質疑応答:制度の形骸化と再編の必要性 質疑応答では、松本清張の小説『砂の器』に関連し、戦災で戸籍が焼失した際の「口頭申し立てによる戸籍再生」が悪用され、他人に成りすます事例が実際に存在したことに言及。
また、戸籍廃止論を一般に浸透させる難しさについての質問に対し、明治政府も当初は別姓を予定しており、国民国家形成の過程で家制度が政治的に利用された背景を改めて説明した。遠藤氏は、時代の変化に合わせた制度の合理的な見直しの必要性を強く訴えた。
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