トップ ニュース 【舞台裏】トランプ訪中延期の裏で動く北京 馬英九基金会の「変節」と、孤立する鄭麗文主席を習氏が救った「米国の影」
【舞台裏】トランプ訪中延期の裏で動く北京 馬英九基金会の「変節」と、孤立する鄭麗文主席を習氏が救った「米国の影」 中国国営メディアは、中国共産党総書記・習近平氏(写真)が国民党主席・鄭麗文氏の代表団による訪中を歓迎・招待し、「鄭・習会談」が行われる可能性が高いと大々的に報じた。(写真/AP通信提供)
かねてより噂されていた台湾最大野党・中国国民党(国民党)主席の鄭麗文(てい・れいぶん)氏と中国共産党総書記・習近平(しゅう・きんぺい)氏による「鄭・習会談」が、4月中旬に北京で開催されることが確定した。3月30日午前9時、中国国営新華社通信は、中国共産党中央台湾工作弁公室主任・宋涛(そう・とう)氏の名義で、習近平総書記が鄭麗文主席を歓迎し、4月7日から12日にかけて江蘇省、上海市、北京市を訪問するよう正式に招待したと報じた。
これを受け、鄭氏は招待を快諾。国民党副主席の張栄恭(ちょう・えいきょう)氏、蕭旭岑(しょう・きょくしん)氏とともに国内外のメディア向けに記者会見を開き、詳細を説明した。国民党内の事情通によると、訪問日程から推測して、注目の「鄭・習会談」は10日または11日に行われる可能性が高いという。
馬英九基金会の内紛と中国の異例な反応 今回の訪中で最も注目すべきは、最近発生した馬英九(ば・えいきゅう)基金会の人事騒動だ。鄭氏が対中交渉の窓口として重用していた蕭氏に対し、台湾元総統・馬英九氏が「今後の言動は私(馬氏)を代表するものではない」と一線を画す事態となった。
党內外では、鄭氏が馬氏による対中ルートの「後ろ盾」を失ったことで、不確実要素の多かった「鄭・習会談」の実現は一層困難になるだろうとの予測が支配的だった。しかし、事態は予想に反した。会談が実現しただけでなく、中国側は鄭氏に対し、極めて異例の高待遇を用意したのである。
中台事務に詳しい国民党関係者は、「かつての国共(国民党と共産党)交流では、双方が同時刻に公式発表を行うのが慣例だった。国民党の訪中者が習氏と面会する場合でも、事前に詳細が確定することはなく、外界は訪中日程から推測するしかなかった」と指摘する。
馬英九財団で人事騒動が勃発し、国民党主席の鄭麗文氏(写真)が切望していた「鄭・習会談」は実現困難と見られていたが、事態は一転した。(資料写真、顔麟宇撮影)
習近平総書記の「客人」となった鄭麗文氏 しかし 今回、中国側は鄭氏の訪中を先行して発表し、訪問先や期間まで明らかにした。さらに、習氏自らの招待であることを明言した。これは鄭氏が事実上「総書記の客人」として扱われることを意味する。過去に習氏と会談した朱立倫(しゅ・りつりん)氏や洪秀柱(こう・しゅうじゅう)氏ら歴代主席と比較しても、その待遇は格段に手厚い。
この動きは、党內外の「悲観論」を払拭するものとなった。現在、国民党內では訪米から帰国したばかりの盧秀燕(ろ・しゅうえん)台中市長や、親米派とされる朱立倫元主席の動きが活発化している。軍事調達や対中政策において孤立気味だった鄭氏に対し、盧氏や朱氏に近い勢力は「米中首脳会談すら延期されたのだから、鄭・習会談などあり得ない」と冷笑的な見方を示していた。今回の中国の発表は、こうした党内外の悲観論者に対する強力な回答となった。
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「米中会談後」の合意を覆した背景 関係筋によると、2025年11月に鄭氏が党首に就任して以降、彼女は直ちに張氏や蕭氏を通じて中国側と会談の可能性について協議を始めていた。中国の台湾政策を統括する高官らの反応も極めて前向きであり、両党トップの会談を自然な形で実現させるためには、外部に軽率で唐突な印象を与えないよう一定の「地ならし」が必要であるとの認識で一致していた。また、会談のタイミングとしては、トランプ氏の訪中後が適切であると見なされていた。
中国共産党が自ら鄭麗文氏の招待を発表したことは、元国民党主席の洪秀柱氏(左)と習近平氏(右) が会談した時よりも異例の
厚遇である。(写真/羅暐智撮影)
馬氏による「切り捨て」後も揺るがぬ蕭旭岑氏への信頼 当初の計画では、2026年2月初旬に国共両党のシンクタンクフォーラムを開催して交流の機運を高め、3月末の米中首脳会談を経て、4月中下旬に「鄭・習会談」を実施するというのが両党の合意であった。
しかし、中東情勢(米・イスラエル・イラン間の紛争)の泥沼化によりトランプ氏の訪中が延期。さらに馬英九基金会で人事騒動が勃発し、交渉の要である蕭旭岑氏が馬氏から事実上の「絶縁」を突きつけられたことで、鄭主席は訪中実現に強い不安を抱いていたという。
国民党の有力者は、「 驚くべきことに中国側は慎重になるどころか、むしろ『鄭・習会談』に向けて積極的な姿勢を強めた」と明かす。 本来、米中会談が延期されれば、順延するのが外交上の筋である。しかし、中国はスケジュールを据え置き、馬英九基金会の騒動も一切考慮しなかった。関係筋によると、張栄恭氏と蕭氏はこの間も通常通り中国側と協議を重ねており、中国当局の蕭氏に対する信頼が全く揺らいでいないことが浮き彫りとなった。
台湾元総統・馬英九氏(左)と現副主席・蕭旭岑氏(右)の決裂について、中国共産党はその背後に米国の介入があると強く疑っている 。(写真/郭晋瑋撮影)
両岸青年交流の停止と「米国の介入」への疑念 中国の台湾政策当局者が事態を静視しなかった背景には、今回の騒動を「米中競争」という大きな枠組みで捉えていることがある。
馬英九基金会で蕭氏ら実務派が追放された直後、新体制の同基金会が「2026年の全両岸青年交流の中止」を即座に命令した。これに対し中国側は、この人事異動が単なる内部管理の問題ではなく、「米国の勢力が背後で親中派を排除した」 可能性が高いと強く疑っている。複数の国民党関係者が「個人的な恩讐に過ぎない」と釈明しているものの、中国の工作系統は「これほどタイミングが重なるのは不自然だ」と断定している模様だ。
孤立する「交流派」への強力なバックアップ 国民党の事情通によると、ここ数ヶ月、米国側は武器調達条例案の可決を目指し、国民党に対して多大な圧力をかけてきたという。米国側は盧秀燕氏や朱立倫氏ら親米派を抱き込み、鄭麗文主席に対抗させるよう画策。
さらに蕭旭岑氏が旧正月前、米国在台協会(AIT)のレイモンド・グリーン所長を「(米政府の)課長より少し上のレベルに過ぎない」と酷評した直後、春節明けには国民党における対中交流の要衝の情勢が一夜にして激変した。
同関係者は、鄭氏や蕭氏ら「中台平和交流派」が相次いで攻撃にさらされている現状について、中国の対台湾工作システムが「これほど多くの事態が同時に重なるのは、到底偶然とは思えない」と注視していると指摘。国民党内の路線対立において平和交流派が周縁化されるのを防ぐため、中国側が「鄭・習会談」を実現させることで救援に乗り出したのは、極めて合理的であり、驚くに値しない結果であるとの見方を示した。
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