トップ ニュース 笹川平和財団・小原氏が読み解く「中国軍の内部混乱と米中対立」 習政権の軍パージとイラン情勢の影響
笹川平和財団・小原氏が読み解く「中国軍の内部混乱と米中対立」 習政権の軍パージとイラン情勢の影響 中国は米中対等を目指し軍拡を進める一方、人民解放軍内部の高官相次ぐ失脚で指導体制に空白が生じ、中東情勢の余波で対米外交も停滞している。(写真/日本記者クラブ提供)
日本記者クラブは2026年3月24日、シリーズ「中国で何が起きているのか」の第33回記者会見を開催した。笹川平和財団上席フェローの小原凡司氏が登壇し、中国の安全保障政策や最新の軍事動向について詳細な解説を行った。
米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃開始から3週間が経過し、3月末に予定されていたトランプ米大統領の訪中が延期される見通しとなる中、小原氏は米中関係の変質や中国軍内部の混迷について鋭い分析を示した。
「グランドバーゲニング」を求める中国の国家戦略 小原氏は、中国にとって現在最も重要なのは米国との「グランドバーゲニング(大規模な取引)」であり、経済や軍事を含めた交渉を通じて米中が相互に干渉せず利益を追求できる世界秩序を求めていると指摘した。中国は自らを「世界の東にそびえ立つ」存在と位置づけ、米国との手打ちができて初めて中華民族の偉大な復興を達成できると考えている。一方で米中ともに大国間の戦争は望んでいないものの、相手の弱点を突き、自国に損害が出ない範囲での軍事行動には躊躇(ちゅうちょ)しない姿勢を見せているという。
台湾情勢と「知能化戦争」への傾倒 台湾情勢に関し、米国家情報長官室(ODNI)が「中国は2027年までの武力侵攻を計画していない」と分析している点に触れ、中国は現在、対米抑止力の強化と台湾への圧力増大に注力していると説明。昨年末に東部戦区が行った軍事演習「正義使命」では、着上陸作戦ではなく、重要施設へのピンポイント攻撃や海上封鎖を想定した訓練が実施された。これは中国側も上陸作戦のリスクの高さを認識している証左といえる。
しかし、米国がベネズエラで電撃的な軍事行動を展開したことは、中国に強い衝撃を与えた。米軍の圧倒的な作戦遂行能力を再認識すると同時に、トランプ政権のモンロー主義的な動きによって、中南米における中国の影響力拡大が阻まれることに強い危機感を抱いているという。
核・海軍力の増強と先端技術の導入 核戦略において、中国は米国と対等の抑止力を持つために大陸間弾道ミサイルのサイロ建設や核弾頭の増強を進めており、米露が先に軍縮を行わない限り軍備管理の交渉には応じない姿勢を崩していない。また、通常兵力でも米国を牽制するため、空母打撃群の整備を急いでいる。海南島の三亜や青島の総合保障基地では拡張工事が進められており、電磁式カタパルトを装備した3隻目の空母「福建」と早期警戒機KJ-600の運用が始まれば、中国の航空優勢確保や遠方への戦力投射能力は大幅に向上するとみられる。さらに、知能化戦争を見据え、自律型の無人水上艦やドローンの群制御、大型無人機Q-10を用いた集団消耗戦の能力構築も進展している。
深刻化する人民解放軍内部の混乱 その一方で、人民解放軍内部では深刻な混乱が続いている。張又侠・中央軍事委員会副主席や劉振立・統合参謀部参謀長など、習近平国家主席自らが抜擢した最高幹部を含む多数の将校が失脚し、指導体制に大きな空洞が生じている。小原氏は、この失脚の本質は汚職のみならず、習主席に対する絶対的忠誠心や党の指導に対する疑義にあると分析する。結果として、軍事作戦の合理性をトップに進言できる人材が不在となり、習主席が誤った判断で軍事行動を起こすリスクが高まっていると懸念を示した。
中東情勢と米中首脳会談の行方 中東情勢について、中国はイランを対米牽制の重要なパートナーと見なす一方、湾岸諸国からのエネルギー輸入への依存から、直接的な軍事支援は避け、ロケット燃料や汎用部品の提供にとどめている。 トランプ氏がイラン問題に注力することで米中首脳会談の準備が停滞していることに、中国は強い不満を抱いている。国際社会に対し、米中が対等に交渉する姿を誇示したい中国にとって、現在は極めて難しい舵取りを強いられていると締めくくった。
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