台湾の最大野党である国民党主席・鄭麗文氏が、4月7日から12日の日程で中国を訪問する。国民党主席の訪中は10年ぶりであり、中国共産党総書記・習近平氏が直接面会する見通しだ。この中台間の重要イベントを巡り、様々な見方が浮上している。なぜ4月に予定される米大統領・トランプ氏の訪中より前のタイミングなのか。また、馬英九基金会における内部対立に伴う両岸(中台)交流の停止を受け、中国政府が台湾に対して「切れるカードがない」状況に陥り、やむを得ず「鄭・習会談」を前倒ししたのではないかとの憶測も呼んでいる。
鄭氏率いる代表団の訪中に関するニュースは、30日午前10時、中国国営通信の『新華社』および中国中央テレビ(CCTV)を通じて一斉に報じられた。中国政府の台湾政策を主管する国務院台湾事務弁公室(国台弁)主任・宋濤氏は、国共両党(国民党と共産党)関係および中台の平和的発展を推進するため、中国共産党中央委員会が鄭主席に対し、江蘇省、上海市、北京市への訪問を正式に要請したと発表した。報道からわずか3分後、国民党文化伝播委員会(広報部門)もこれを公式に認めた。現職の国民党主席による訪中は、2016年の前国民党主席・洪秀柱氏以来となるだけでなく、かねてより取り沙汰されていた「鄭・習会談」の実現を意味する。
「鄭・習会談」の日程が明らかになると、各界から高い関心が寄せられ、議論を呼んでいる。中国の外交トップである中共中央政治局委員兼中央外事工作委員会弁公室主任(外相)・王毅氏が、今年は米中関係の「重要な年(大年)」であり、ハイレベル交流の議題がすでに俎上に載っていると言及していたことから、大方の事前予想では、鄭氏の訪中日程はトランプ氏と習氏の「米中首脳会談」の後に設定されると見られていた。
2025年10月30日、米大統領のトランプ氏(左)と中国国家主席の習近平氏が韓国の釜山で会談し、今春のトランプ氏訪中で合意していたが、その後のイラン情勢の影響により延期された。(写真/AP通信提供) しかし、トランプ氏の訪中が3月末から5月中旬へと延期されたことで、結果的に「鄭・習会談」が先行することとなった。この日程調整については、両岸交流を推進してきた馬英九基金会で浮上した内部問題、いわゆる「お家騒動」と関連があるのではないかと訝しむ声も一部で上がっている。同基金会は、前執行長・蕭旭岑氏や前副執行長・王光慈氏ら中枢メンバーを事実上更迭しただけでなく、若者向けの人材育成プログラム「大九学堂」の学生による訪中交流までも一時停止したと報じられている。この事態を受け、台湾内で「平和的交流」を主張する声が弱まることを危惧した中国政府が、「鄭・習会談」の前倒しを決断したのではないかという見方である。
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ベテラン・張栄恭氏が「鄭・習会談」の立役者に 鄭氏は国民党主席の選挙戦期間中から、中国を訪問し習氏と会談する意向を表明しており、就任後もその実現に向けて積極的に動いていた。昨年11月、鄭氏の代理として国民党副主席・張栄恭氏が中国を訪問し、国台弁主任の宋氏と国共フォーラムの再開や「鄭・習会談」の調整について協議を行った。張氏は、前国民党主席・連戦氏の元幕僚であり、党内の両岸問題を取り仕切る重鎮である。2005年、連氏が党主席として訪中し「平和の旅」を展開した際にも、張氏は国民党文化伝播委員会の主任委員として連氏に全行程で随行している。
関係者によると、宋氏は張氏に比べて両岸問題における経験が浅かったため、張氏は協議の場で、2005年に行われた連氏と前中国最高指導者・胡錦濤氏の歴史的会談のプロセスや、国共両党間の定例コミュニケーション・プラットフォーム構築の歴史的背景を、手取り足取り説明したという。これに対し宋氏も極めて前向きな反応を示し、結果として国共シンクタンク・フォーラムの再開にこぎ着けただけでなく、鄭氏の訪中日程の最終決定に至ったとされている。
国民党副主席の張栄恭氏は、今回の国共交流再開における背後の重要な立役者である。(写真/劉偉宏撮影)
2つの核心的要素!なぜ鄭・習会談は4月に設定されたのか? 事情を知る関係者によれば、「鄭・習会談」の日程については、実は春節(旧正月)前の段階で中国側からすでに同意を得ており、残る課題は時期と会談内容の調整のみであった。国共双方は、今回のトップ会談が「会うための会談」に終わることを望まず、両岸の平和に有益な効果をもたらすものでなければならないとの認識で一致していた。最終的に4月開催で合意に至った背景には、主に2つの要因があるという。
第1に、国民党側の事情である。台湾では年末に統一地方選挙が控えており、訪中時期が遅れれば与党・民主進歩党(民進党)に政治的に利用され、選挙戦に悪影響を及ぼす恐れがある。そのため鄭氏は、上半期中の訪中実現を強く求めていた。
第2に、中国側の事情である。当初、中国政府は3月末から4月初旬にかけて米大統領・トランプ氏の訪中を受け入れる準備を進めており、そのため4月中旬を「鄭・習会談」のための期間として確保していた。その後、トランプ氏自身の都合で訪中が5月に延期されたものの、国民党が下半期に抱える地方選挙へのプレッシャーを考慮し、国共双方で合意していた4月中旬という日程が維持された。つまり、「米中首脳会談」の延期に連動して遅らせることもなく、また意図的に前倒ししたわけでもないという。
国民党側は、年末の統一地方選挙への影響を避けるため、「鄭・習会談」が下半期にずれ込むことを望んでいない。写真は、軍人村(眷村)出身者の春季親睦大会に出席した国民党主席の鄭麗文氏。(写真/陳品佑撮影)
鄭麗文氏の国共フォーラム再開の動きに、中国側は誠意を評価 関係者が『風傳媒』に語ったところによると、今回の鄭氏の訪問調整プロセスにおいて、中国側は極めて積極的かつ誠意ある友好的な姿勢を見せた。鄭氏が就任後直ちに国共シンクタンクの交流プラットフォームを復活させたことから、中国側は鄭氏の行動力と国共交流再開への強い意志を評価し、それに応える形で「鄭・習会談」に対する善意と誠意を示したという。
また、同関係者は、鄭氏が上半期中の開催にこだわった理由について、「下半期の台湾の政治的焦点は地方首長選挙に移るため、上半期に会談を済ませておけば地方選挙への影響を最小限に抑えられる」と指摘する。過去の経験上、地方選挙における主な争点は民生、経済、地方課題であり、両岸関係や外交問題が及ぼす影響は元来限定的である。その上、4月時点で会談を終えていれば、選挙の時期には関連する話題の影響は微々たるものになるという計算だ。
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馬英九財団の内部軋轢、中国は「鄭・習会談」で立場を表明か? 一方で、現在、馬英九基金会では内部で軋轢が生じている。本来の実務トップであった蕭氏や王氏が事実上追放され、さらには指導体制の刷新に伴い、「大九学堂」の学生による訪中交流プログラムの停止が取り沙汰されている。各界では、今回の「鄭・習会談」を通じて、中国政府が馬英九基金会の変故に対する何らかの立場を示すのではないかとの関心が集まっている。
馬英九基金会は先般、指導体制を刷新し、「大九学堂」の訪中計画が一時停止されたと報じられている。写真は、「大九学堂」の学生を率いてシンガポールを訪問した前総統の馬英九氏。(写真/馬英九氏のFacebook提供) 関係者は、中国側が鄭氏に対する明確な支持と評価のサインを送っていると語る。一部には、鄭氏や蕭氏が前総統・馬英九氏の強力な後ろ盾を失えば、中国側からの承認は得られないとの見方もあった。しかし、現在の「鄭・習会談」実現という展開を見る限り、その推測は的外れである。中国政府が重視しているのは、個人の政治的勢力ではなく、政策の全体的な方向性である。
馬英九財団の騒動の背後に潜む米中覇権争い? さらに同関係者は、中国側が特に懸念を抱いているのは、「馬英九基金会の主導権が交代した後、なぜ大九学堂の訪中交流がすべて停止されたのか」という点だと指摘する。馬氏の現在の動きは、かつて自身が提唱していた「両岸交流や青年交流を核とする」という理念とは趣を異にしており、中国側はこの事態に疑念を抱いているという。
国民党副主席の蕭旭岑氏は、これまで馬英九基金会に在籍中、両岸交流を積極的に推進してきた。同氏が事実上追放された現在、財団内部で親中派と親米派の権力闘争があったのではないかとの憶測を呼んでいる。(写真/顔麟宇撮影) 関係者は総じて、中国政府は依然として馬氏の過去の両岸交流への貢献を高く評価していると述べる。しかし、現在の馬英九事務所(馬弁)を巡る動向からは、内部で「親中派対親米派」の派閥闘争が起きているのではないかという連想を禁じ得ないという。「でなければ、なぜ両岸交流を停止するのか。その理由は不可解だ」と関係者は語る。現在の中国側の視点からすれば、中国政府は馬弁の内部抗争に全く影響を受けておらず、むしろ今回の手配を通じて、鄭氏や蕭氏が堅持する「両岸交流路線」への支持を誇示していると言える。