日本外国特派員協会(FCCJ)にて、英国人写真家でありジャーナリストのスティーブン・マンスフィールド氏が自身の20冊目となる著書「The Modern Japanese Garden」に関する講演を行った。アジア・タイムズのスコット・フォスター氏の紹介で登壇したマンスフィールド氏は、沖縄から北海道まで500カ所以上の日本庭園を巡った経験を基に、日本庭園の歴史、社会との関わり、そして自然との関係性について深く掘り下げた。
日本庭園の歴史と社会的背景を考察
マンスフィールド氏は、自身の故郷である英国と同様に、日本を中国、フランス、英国と並ぶ世界の四大庭園大国の一つとして位置づけている。本書の制作には4年の歳月が費やされ、最初の1年は出版社との企画会議、続く2年は全国各地での撮影と調査、最後の1年はデザインとプロモーションに充てられた。
テムズ・アンド・ハドソン社などから出版され、年内には河出書房新社から日本語版の刊行も予定されている。本書には400枚の写真が収められており、その大半は著者自身がライカやニコン、さらに一部はiPhoneを用いて撮影したものである。
また、ピコ・アイヤー氏による序文に加え、建築家のミラ・ローカー氏、景観評論家のティム・リチャードソン氏、庭園デザイナーで僧侶の枡野俊明氏、そして世界的な建築家である隈研吾氏ら4名によるエッセイも収録されている。
講演では、日本庭園の起源が神道以前のアニミズム、すなわち自然の中に神々を見出す岩座(いわくら)や森の空間にまで遡ることが説明された。その後、中国の影響を受けた平安時代の庭園から、戦乱の世に内面と向き合った室町時代の石庭、そして大名たちが権力を誇示した江戸時代の回遊式庭園へと、庭園が日本の歴史と文化の変遷を如実に反映してきたことが示された。
特に1900年から1945年にかけての「起業家たちの庭園」については、岩崎家や根津家などの富裕層が造営した庭園を挙げ、西洋の自然主義の影響や芝生の導入、水管理の近代化などが見られる一方で、特権階級による空間の独占という社会的側面にも言及した。
合成素材も登場、現代の日本庭園はどこへ向かうのか
戦後の現代庭園については、重森三玲がタイルやコンクリートといった人工素材を導入した先駆的な試みや、丹下健三による香川県庁舎の庭園での「石を切る」という斬新な手法が紹介された。
現代では、炭素繊維やプラスチック、ポリカーボネートなどの完全な合成素材を用いた庭園も登場しており、もはや植物などの有機物を一切含まない「屋外アートインスタレーション」のような形態へと進化を遂げている。マンスフィールド氏は、伝統的な制約から解放された現代庭園の自由さを評価しつつも、急速に時代遅れになるリスクも孕んでいると指摘した。
質疑応答では多岐にわたるテーマが議論された。気候変動の影響については、夏の高温多湿化により合成素材の劣化が早まる可能性や、広大な回遊式庭園において高齢者の見学が困難になる懸念が示された一方で、苔庭にとっては好条件になり得るとの推測も語られた。
また、自身が千葉県で購入した中古住宅での庭造りの経験も披露され、泥だらけの庭に自ら石を配し、明治時代の石臼や瓦を犬走りに取り入れながら試行錯誤を重ねたエピソードが会場の関心を引いた。
さらに、現代の庭園が純粋な「日本庭園」と呼べるのかという問いに対し、同氏は伝統的な基盤を持たない現代の庭園は「日本風庭園」であるとしつつも、建築や都市計画など新たな分野からの影響を吸収して進化を続ける現代のあり方を肯定的に捉えている。
また、枡野俊明氏については、仏教僧としての精神性と、切断した石の痕跡を残すような革新的なデザイン手法を融合させた、現代において極めて稀有で重要な存在であると高く評価した。自然を模倣するだけでなく、それを超越しようとする日本庭園の奥深さは、時代や素材が変化してもなお、新たな形で国内外の人々を魅了し続けている。
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編集:小田菜々香














































