「上野の森親子ブックフェスタ」台湾絵本ブースが初出展 ベテラン翻訳家が選ぶ「今、大人も読むべき台湾絵本」

上野の森親子ブックフェスタにて、台湾の絵本40作品以上が初公開され、一青窈氏の朗読活動を通じて台湾文化の魅力が日本の親子連れに広く浸透した。(写真/文化部駐日台湾文化センター提供)
上野の森親子ブックフェスタにて、台湾の絵本40作品以上が初公開され、一青窈氏の朗読活動を通じて台湾文化の魅力が日本の親子連れに広く浸透した。(写真/文化部駐日台湾文化センター提供)

ゴールデンウィーク恒例の読書イベント「上野の森親子ブックフェスタ」において、今年、文化部駐日台湾文化センターの誘致により、主催団体である出版文化産業振興財団(JPIC)の支持を得て、台湾ブースの初出展が実現した。

同フェスティバルが2000年に創設されて以来、海外の非営利文化団体が参加するのは今回が初めてのケースとなる。会場では厳選された40作品以上の台湾オリジナル絵本が展示されたほか、絵本の朗読会、作家によるサイン会、親子向けの体験イベントが企画され、台湾絵本の多様な魅力と文化的な奥深さが多角的に紹介された。

ベテラン翻訳家による選書と「クジラの島」を描いたビジュアル

今回の展示作品は、日台双方の親子読書文化に精通したベテラン翻訳家・林真美(はやし・まみ)氏が選書と企画を担当した。展示構成は「日本で既刊の作品」「台湾のローカル文化」「クラシック絵本選」という三つのテーマに分かれ、専門的かつ親しみやすい視点が取り入れられた。

メインビジュアルは、台湾の絵本作家・林廉恩(リン・リエンエン)氏が担当。「クジラの島」をコンセプトに、台北101やタピオカミルクティー、タイワンツキノワグマ、ウンピョウといった台湾独自の要素を鮮やかに描き出し、来場者の目を引いた。会場で行われたスタンプラリーや抽選会も好評を博し、多くの来場者が絵本の購入方法を熱心に尋ねるなど、台湾作品への関心の高さがうかがえた。

作家と子供たちの交流、そして「台湾絵本元年」への歩み

​林廉恩氏によるサイン会も大きな反響を呼び、午前と午後の回ともに満員となった。参加した子供たちがリクエストした「ロケットに乗ったペンギン」などのユニークな題材に対し、林氏がその場で描き上げるパフォーマンスを披露。世界に一枚だけの手描き作品を手にした参加者にとって、貴重な交流の機会となった。

台湾の李遠(リ・エン)文化部長は、絵本を国際的な伝播力の高い文化コンテンツと位置づけ、新人賞の設立や2026年を「台湾絵本元年」とする方針を表明している。今回の出展はその成果を国際社会に示す重要な一歩となった。展示には、第一回「金絵賞」を受賞した『ぼくの頭にキノコが生えた(原題:我的頭頂長了一朵香菇)』などの注目作も含まれている。

一青窈氏による朗読と、国境を超える「絵本」の力

​イベントのメインステージでは、台湾にゆかりのある歌手の一青窈氏がゲストとして登壇。自身が初めて翻訳を手がけた絵本『HOME』の朗読を披露した。一青氏による情感豊かな表現は観客を深く物語の世界へと引き込み、その後の作者・林廉恩氏との対談では、コラージュ技法のこだわりや、日中両言語におけるオノマトペ(擬音語・擬態語)の表現の違いといった興味深いエピソードが語られた。クイズコーナーでは、多くの子供たちが「台湾」と元気よく答える場面もあり、台湾に対して「優しい人がたくさんいる場所」という好印象を抱いている様子がうかがえた。

台北駐日経済文化代表処の李逸洋(り・いつよう)代表は、言葉や世代を超える絵本という媒体を通じて日台の民間交流が深まることに期待を寄せ、「台湾の自由で創造的なソフトパワーを日本社会に広く知ってもらいたい」と述べた。

また、台北駐日経済文化代表処台湾文化センターの曾鈐龍(そう・けんりゅう)センター長は、今回の出展が日本の読者との直接的な接点となっただけでなく、国内の出版社に対して台湾作品の認知度を高める重要な契機になったと言及。今後の国際的な版権ビジネスや、さらなる文化交流の拡大につながる可能性を強調した。

編集:小田菜々香

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