台湾・台北メトロ(北捷)で最近発生した優先席をめぐる衝突事件が、大きな波紋を広げている。高齢の女性が車内で若い男性乗客に席を譲るよう強く求め、拒否されると手提げ袋で攻撃。すると男性は反撃し、女性を対面の座席に蹴り飛ばした。この一部始終を記録した映像がインターネット上で拡散し、世論を二分する議論を呼んだ。その後、女性が複数の前科を持つ通緝犯(指名手配犯)であることが判明し、警察に逮捕された。
事件全記録|台北メトロでの優先席衝突の経過
今回の騒動は、台北メトロの車両内で発生した。白髪の高齢女性が、長髪の男性が優先席に座っているのを見て、他に空席があるにもかかわらず譲るよう強く要求。しかし男性が拒否すると、女性は持っていた手提げ袋で男性の膝を叩き、口論に発展した。
男性は自分のブランド紙袋を隣の乗客に預け、立ち上がって女性と正面から対峙。その後、女性が再び手を上げようとすると、男性は即座に蹴りを放ち、女性を向かい側の座席に吹き飛ばした。驚いた女性は「女性だと思っていた」「こんなに怖いとは思わなかった」と叫び、映像が拡散すると「自衛だ」として男性を支持する声が多く集まった。
過去の問題行動|「白髪魔女」と呼ばれた女性の素顔
映像が広まると、女性の過去の行動が次々と掘り起こされた。ネットユーザーの指摘によれば、この女性は長年にわたり台北メトロの優先席をめぐって乗客と衝突を繰り返していた。しかも対象は女性や子供、妊婦が多く、空席があっても頑なに優先席に固執する姿が目撃されてきた。
さらに学術界でも悪名高く、「学術会議ゴキブリ」と揶揄されていたことが判明。学会やシンポジウムに頻繁に現れては、茶菓子を大量に持ち去る、講演者に奇妙な質問を浴びせる、学者やスタッフを罵倒する、攻撃的なメールを送りつけるなどの迷惑行為を繰り返してきた。台湾大学や中央大学の教授も「学界では有名な人物」「白髪魔女と呼ばれていた」と証言している。
最新の展開|逮捕と過去の前科
事件後まもなく、女性は台北市内のコンビニで再びトラブルを起こし、警察に発見された。調べによると女性は73歳で、過去に複数の窃盗事件で前科があり、刑期を履行しなかったため通緝犯として追われていた。このたび目立った行動が目撃され、身柄を拘束され収監されることとなった。
男性乗客の素性と法律的な見解
蹴りを放った若い男性は台大(台湾大学)の卒業生であることが明らかになった。元同級生は「普段は温厚な人物だったので映像に驚いた」と語ったが、通勤客の多くは「正当防衛だ」と支持を寄せた。
警察は監視カメラやICカード記録を確認し、双方の身元を特定。社会秩序維持法第87条に基づき「互いに暴力を振るった者」として出頭を求め、最大1万8,000台湾ドル(約8万7千円)の罰金が科される可能性がある。
弁護士の王至徳氏は「ネット世論は男性支持が多いが、法的には正当防衛の範囲を超える恐れがある」と指摘。女性の攻撃は比較的軽度だったため、男性の蹴りは「防衛過剰」と判断され、傷害罪や損害賠償責任を負う可能性があると分析した。
編集:梅木奈実 (関連記事: 台湾、公共交通の「博愛座」名称を変更へ 制度見直しで「道徳的強制」に終止符 | 関連記事をもっと読む )
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