中国で「内巻」と呼ばれる過度な競争が各産業を席巻している。電気自動車や電池、インフラに至るまで例外はなく、優勝劣敗の淘汰が激化し、多くの外資系企業は苦境に陥り撤退を余儀なくされてきた。だが、日本経済新聞は21日、この「内巻」を逆手に取る日本企業の動きが目立ち始めていると報じた。パナソニックや本田(ホンダ)といった代表的企業は、中国市場での競争圧力を自社の世界競争力強化につなげる戦略を進めている。
日本市場撤退から「世界トップ3」へ パナソニックのホームドア事業再起への道
日本市場撤退から「世界トップ3」へ パナソニックのホームドア事業再起への道
「我々の目標は世界トップ3だ」。パナソニックホールディングス傘下で地下鉄ホームドア事業を担う譚可部長は北京の設計センターで自信を示した。同センターのチームは現在、インドやインドネシアの顧客向けに最新設備を設計中であり、この事業部門の再生こそが日本企業が「内巻(過度競争)」を活用する象徴的な事例である。
1970年代、パナソニックは日本で自動ホームドア事業にいち早く参入した。しかし国内市場規模の制約や採算難に直面し、2009年に事業を終了、全面撤退を余儀なくされた。表面的には失敗に見えた結末は、だが中国市場で驚くべき転機を迎える。
パナソニックは1981年に製品輸入を通じて中国に参入し、1993年には現地生産を開始した。本格的な事業再生の契機となったのは2008年の北京五輪である。大会に伴う大量の人流に対応するため、北京市の地下鉄は大規模にホームドアシステムを導入。パナソニックは日本で培った技術力を武器に重要路線の受注に成功し、首都国際空港線などに設備を供給した。
この成功はパナソニックに知名度をもたらすとともに、中国市場の巨大な可能性を認識させるものとなった。2010年までに同社は開発から製造、販売に至る一貫体制を中国で構築。日本本社が誇る「信頼性・安全性技術」と、中国のサプライチェーンが持つ「コスト競争力」や世界に広がる販売網を組み合わせた。
譚部長は「中国で調達する部品は日本より3〜5割安く、技術水準や供給の安定性も非常に高い」と語り、中国拠点の優位性を明らかにした。この融合によってパナソニックのホームドア事業は一新され、2024年時点で世界10か国12都市で21件の案件を受注し、世界シェアは7〜8位に上昇。将来的には2030年までに海外売上比率を現行の約60%から85%へ大幅に拡大し、世界トップ3入りを狙うとしている。
本田(ホンダ)、重慶を「汎用エンジン」世界最強拠点に
同様の事例は自動車大手の本田(ホンダ)にも見られる。本田(ホンダ)は発電機や農業機械などに搭載される汎用エンジン事業の核心拠点を中国・重慶に置いた。重慶は中国の工業都市であると同時に、世界の汎用エンジンおよび関連機器の生産中心地であり、世界生産量の約7割を占める巨大な規模経済を形成している。 (関連記事: ホンダ、米国製造に生産移管を検討 トランプ関税回避で北米車の9割「Made in USA」へ | 関連記事をもっと読む )
本田(ホンダ)の主力である中型汎用エンジンは、かつて主に日本国内で生産されていた。しかし効率性とコスト優位性を求め、2010年代以降、生産の重心を重慶、タイ、インドへと順次移行。その中で重慶は独自の環境を背景に、本田(ホンダ)の世界戦略における最重要拠点となった。