米国のドナルド・トランプ大統領が全ての輸入車に対して追加で25%の関税を課す政策を打ち出したことを受け、世界中の自動車メーカーが恐慌状態に陥っている。特に北米市場で大きなシェアを持つ日本のホンダ(本田技研工業)は、メキシコやカナダにある一部の車種の生産ラインを米国本土に移す計画を進めていると最新の報道で明らかになった。これにより、輸入関税の影響を回避する狙いがある。
『日経アジア』の報道によると、同社は今後2〜3年以内に米国内の生産ラインの生産量を約30%増加させる計画であり、これによりホンダが米国で販売する車両のうち、最終的には9割が現地生産の「国産品」となる見通しだ。実際、現時点のデータによれば、ホンダは米国で年間約142万台の自動車を販売しており、これは同社の世界販売の4割を占めている。そのうち約100万台、つまり7割は既に米国内で製造されている(Made in USA)。このため、地元の生産能力を30%引き上げれば、米国販売の9割を現地製造でまかなえる計算となる。
「ホンダ、米国で現地生産9割に 関税で『隣国から輸出』転換」の英文記事をNikkei Asia@NikkeiAsia に掲載しています。Honda considers increase in U.S. production to meet 90% of local saleshttps://t.co/W38ICjwc8n
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei)April 15, 2025
過去数十年にわたり、かつての「北米自由貿易協定(NAFTA)」、およびその後改定された「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に基づき、条件を満たす商品は3カ国間の貿易で関税が免除されてきた。この優遇措置により、ホンダを含む日本の自動車メーカーは、労働コストの比較的安いメキシコやカナダに工場を設置し、生産・組立を行い、最終的に完成車を米国に輸出していた。
しかし、トランプ氏が再びホワイトハウスに戻り、関税を交渉の武器として活用する中で、米政府の新方針は輸入車に追加関税を課すだけでなく、協定に基づいた商品にも課税対象を拡大している。たとえ各自動車メーカーが米国製部品の比率に応じて「負担軽減」が可能であっても、このように突然追加される関税は、ホンダの事業運営に大きな影響を及ぼすと見られ、これを受けてホンダは生産体制の見直しに踏み切ることになった。 (関連記事: トランプが「台湾の砦」全体を移転? 米商務長官:「半導体産業すべて」が台湾から米国へ移動 | 関連記事をもっと読む )

報道によれば、ホンダが移転を検討している生産ラインは、人気車種のCR-V SUVおよびシビック(Civic)セダンが対象となっており、これらは現在、主にカナダの工場で製造されている。また、一部は米国本土でも生産されているという。ホンダはまず、米国の生産ラインにおける人員体制を拡大し、現行の2交代制を3交代制へと移行するほか、週末の稼働拡大などにより対応する計画である。ただし、生産ラインおよびサプライチェーン全体を完全に移管するには、少なくとも2年の期間を要する見通しである。もう一つの人気コンパクトSUVであるHR-Vについては、メキシコから完全に米国へ移管する必要があり、これにはさらに多くの時間と資金が必要となる。