李忠謙コラム》ワシントンの専門家が警告:台湾が直面する「4つの危機」ーー政治的ゼロサム、民主主義の後退、トランプへの過信、中国との対話拒否

カーネギー国際平和財団のキーウィス、ローゼンバーグ、デュース、ウォーハイマー(右から左)が台湾についての観察を語り合う。(YouTubeより転載)

『ワシントン・ポスト』のホワイトハウス記者で政治評論家のジョシュ・ローギン(Josh Rogin)は、トランプ政権1期目における対中政策と米中対立を分析した著書『Chaos Under Heaven(天下大乱)』を執筆した。この本は、当時大きな話題を呼び、多くのトランプ支持者の注目を集めた「トランプ・蔡英文電話会談」から始まり、米中貿易戦争、新型コロナウイルスの流行、そしてトランプの再選失敗に至るまでを描いている。ローギンがこの本の結びで述べたトランプ評は、今でもそのまま当てはまるように見える。

「トランプは盤面を混乱させるのは得意だが、駒を並べ直すことはできない」「誰も、従来の見方に縛られず、直感だけで行動する大統領が現れるとは予想できなかった。彼は多くの新しい政策の可能性を開いたが、政府運営を混乱させ、結局その政策をほとんど実行不可能にしてしまった。」

トランプ1.0と比べて、より恣意的かつ奔放なトランプ2.0は、まさに「天下大乱」とは何かを世界に見せつけている。8年前、まだ大統領に就任していなかったトランプは、蔡英文総統からの祝電を偶然受け取り、台湾海峡と太平洋両岸に大きな波紋を広げた。その影響は現在に至るまで完全には収まっていない。しかし、トランプ2.0の今日、台湾は「トランプ・蔡英文電話会談」(たとえそれが偶発的であったとしても)のような楽観的なスタートを迎えていない。トランプは「堅い机と鋭いペン先」の軽蔑と嘲笑の態度を引き継ぎ、「アメリカの半導体ビジネスを奪った」台湾は「保護料を払うべきだ」と主張。TSMCをアメリカに移転させる意向や、「今日のウクライナ、明日の台湾」といった疑米論も広がっている。

「台湾は大丈夫なのか」「台湾はトランプ2.0にどう対応するのか」を理解するため、カーネギー国際平和財団の4人の国際関係専門家クリストファー・S・チヴィス(Christopher S. Chivvis)、スティーブン・ワートハイム(Stephen Wertheim)、マシュー・ダス(Matthew Duss)、ブレット・ローゼンバーグ(Brett Rosenberg)は先日共に台湾を訪問し、台湾の政府関係者や思想的指導者と会談し、米国が外交政策方針を全面的に見直す中、台湾人が地政学的な急速な変化をどのように見ているかを観察した。この4人のワシントンのシンクタンク研究者は先週のカーネギー財団のPodcast番組で対談し、台湾への近距離観察の所感を共有し、米国の対台湾政策の課題について深く議論した。 (関連記事: 舞台裏》台湾の対米関税交渉、重要な90日間 外交部は予算削減…在外公館閉鎖の懸念に頭を悩ます 関連記事をもっと読む

深刻な分極化が進む台湾政治

チヴィスは、今回の台湾訪問で最も印象的だったのは「台湾政治の二極化があまりにも深刻で、台湾にとって非常に不利だ」という点だと語った。ワートハイムは、民進党関係者との会話では皆が国民党への敵意を示し、国民党側は「民進党が台湾を破滅に導いている」と研究者たちに語ったという。実際、頼清徳が総統選に勝利し、国民党が立法院の多数派を握った後、両党は政策で互いを牽制し合い、与党は社会を動員して大規模なリコール運動を起こそうとしている。