2025年大阪・関西万博に出展するパソナグループのパビリオン「PASONA NATUREVERSE」が、4月9日のメディアデーにて報道陣に公開された。記者も当日現地を訪れ、展示の世界観と演出を体感した。
本パビリオンは「いのち、ありがとう」をテーマに掲げ、人間と自然とのつながり、未来社会における命と科学技術の共生を表現する体験型展示空間だ。自然の象徴である螺旋形状の建築デザインには、約4億年前に登場し3度の大量絶滅を生き抜いた「アンモナイト」がモチーフとして採用されている。建物は「アンモナイトパビリオン」と「巻き貝パビリオン」で構成され、頂点には手塚治虫の人気キャラクター「アトム」が立ち、パソナグループの拠点である淡路島の方向を指し示している。
展示は「からだ」「こころ」「きずな」という3つのゾーンに分かれ、医療、食、働き方、多様性、助け合いといったテーマが未来的な演出で紹介されている。特に注目されたのは、再設計された新キャラクター「ネオアトム」と「ブラック・ジャック」の登場だ。

パビリオンの中央には、命の過去・現在・未来を10層の地層で可視化した「生命進化の樹」が設置されている。東京大学の池上高志教授が監修したこの展示は、生命の起源から現代社会の文明、そしてミツバチ絶滅やiPS医療による新たな生命の誕生、太陽膨張による地球の終焉といった遠未来までを俯瞰できる構成。鏡を活用することで、地層の上下に無限の連なりを感じさせ、来場者に時間と命の循環を問いかける演出となっていた。

「未来の医療」では、iPS細胞を用いた実際の心臓模型(iPS心臓)展示をはじめ、カテーテル手術の2D・3D操作体験、そして自走型マイクロロボットや空飛ぶ手術室の映像展示など、医学とテクノロジーの最前線が紹介されていた。大阪大学の澤芳樹名誉教授が開発に関わるiPS心筋シートの実物展示は、医療現場の臨場感を伝える貴重なコンテンツとなっている。

睡眠の科学をテーマにした「未来の眠り」展示や、身体機能を拡張する装着型サイボーグ「HAL」、遠隔地の動作を再現する「マスター・リモートシステム」、生命活動を測定するセンサーなど、未来の暮らしを支える技術展示も充実していた。
「Wonder Earth」では、土中の微生物を五感で体感する空間が演出され、土と共に生きる命の尊さと、その循環の美しさが語られていた。また、LEDキューブを駆使した5分間の「NATUREVERSEショー」では、手塚プロダクション制作のショートムービー『ネオアトム誕生』が上映され、アトムが未来医療で蘇り、新しい命として再び地球と人々をつなぐ姿が描かれていた。 (関連記事: 2025大阪万博》台湾の“未来”と“感性”を体感!大阪万博・TECH WORLD館の見どころ解説 | 関連記事をもっと読む )
パビリオン担当者によれば、「ネイチャーとユニバースを掛け合わせた“ネイチャーバース”という造語には、人と人、自然と人が響き合う社会への願いが込められている」とのこと。展示のテーマである「こころ」「からだ」「きずな」という3つのゾーンを通じて、命の尊さと自然への感謝を来場者に体感してもらいたいと語った。