韓国・大田市(テジョン)に位置し「電子政府の心臓」と呼ばれる国家情報資源管理院(NIRS)で26日、火災が発生した。リチウム電池の爆発によりサーバー機房が22時間にわたり燃え続け、647の公的システムが停止、多数のオンライン手続きが利用不能となり、各地の民政窓口には長蛇の列ができた。李在明大統領は30日、国民に直接謝罪し、全省庁に対しセキュリティおよびバックアップ体制の全面見直しを指示。完全復旧には少なくとも4週間を要すると見込まれている。
韓国メディアは、今回の火災が韓国のデジタル基盤の脆弱性を露呈させ、「IT先進国」の面目を失わせたと批判。しかもAPEC開催を目前に控えた中での事態であり、与野党の責任追及合戦が激化している。与党は尹錫悦前政権がバックアップ体制を整備していなかったと非難し、野党は李在明大統領の責任逃れを指摘するなど、「責任の所在」を巡る政治的応酬が復旧対応の切迫性を覆い隠している。
李在明「想像を超える事態」 国民に謝罪、セキュリティ強化を指示
『コリア・タイムズ』によると、火災は首都ソウルから約140キロ離れた大田市のNIRS本部で発生。調査当局はLGエナジーソリューション製のリチウム電池が保守作業中に爆発し、5階のサーバー室で火災が発生したとみている。22時間燃え続けた火災で647の行政システムが停止、うち少なくとも96が深刻な損傷を受け、大邱(テグ)のデータセンターに移転が必要となった。政府は完全復旧に4週間を要すると推定している。
韓国は世界有数のインターネット普及率を誇り、多くの行政サービスがデジタル化されているため、市民生活に大きな混乱をもたらした。戸籍や印鑑証明、旅券申請が可能な「政府24(Gov24)」や、韓国郵政(Korea Post)の金融・郵便サービスシステムが全面停止した。
李大統領は「想像も理解もできない事態」と述べ、バックアップを起動できなかったNIRSを厳しく批判。「問題を事前に把握できなかったことは私の責任でもある」と認めた上で、「全省庁はセキュリティと安全マニュアルを徹底的に点検し、強化計画を策定すること。来週には私自身が報告を確認する」と述べた。
中央災難安全対策本部によれば、30日午後2時時点で復旧したのは647サービス中91件、復旧率14.1%にとどまる。「政府24」や韓国郵政サービスなど利用者の多い一次サービス38件のうち20件が復旧した。当局は中秋連休前までに需要の高いサービスを優先的に回復するとしている。 (関連記事: トランプ氏「外国映画に関税100%」構想 韓国ドラマ・Kカルチャーに直撃の恐れ | 関連記事をもっと読む )
ネットワーク停止で詐欺警戒も
政府ネットワークの停止を受け、李大統領は特にサイバー攻撃や詐欺に注意するよう指示した。金融委員会(FSC)と金融監督院(FSS)は「スミッシング」(フィッシングSMS)への警戒を呼びかけ、詐欺グループが政府サービス停止の隙を突いて偽リンクやアプリを送りつける可能性があると警告。行政安全部は「政府がSMSやSNSで直接リンクを送ることはない」と強調した。