中国を過小評価するな 米専門家が米国に『同盟強化』を提言

アメリカ大統領トランプ。(AP通信)
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バイデン政権下で「インド太平洋の皇帝」と呼ばれたカート・キャンベル氏と、国家安全保障会議(NSC)中国担当副部長のラッシュ・ドシ氏が、米外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』で共同論文「中国を過小評価するな(Underestimate China)」を発表し、米国が中国の現状と実力を誤って評価している恐れがあると警告した。ワシントンが北京の長期的優位を相殺したいのであれば、同盟を活用して規模を拡大する新時代の戦略が必要だと指摘する。

キャンベル氏とドシ氏は、バイデン時代の国家安全保障戦略の要職を務め、中国政策のブレーンでもあったが、現在はワシントンの中枢を離れつつも、トランプ政権の外交戦略に民間の立場から関与している。最新号の『フォーリン・アフェアーズ』に掲載された「中国を過小評価するな」(Underestimate China)では、「大国間競争で成功するには厳密かつ感情を排した評価が不可欠だ。しかし米国の中国観は極端から極端へと振れてきた」と述べた。すなわち「台頭する中国が米国を凌駕する」との懸念から、現在は「中国は衰退しつつある」との楽観論へと揺れている。

キャンベル氏は現在、ワシントンのシンクタンク「アジア・グループ」の会長兼共同創設者で、バイデン政権では国務副長官、NSC初代インド太平洋調整官(通称「インド太平洋の皇帝」)およびホワイトハウス高官を歴任。QUAD(日米豪印戦略対話)、AUKUS(米英豪安全保障協力)、日米韓キャンプデービッド首脳会談、太平洋島嶼国およびASEAN特別首脳会議の推進に携わった。

ドシ氏は現在、ジョージタウン大学助教授および外交問題評議会の中国戦略イニシアチブの責任者であり、「長期ゲーム:中国の対米大戦略」(The Long Game: China's Grand Strategy to Displace American Order)の著者として知られ、バイデン政権ではNSC中国・台湾担当副部長を務めた。

両氏は、米国がかつて中国を懸念したのは、その急速な経済成長、国際貿易における優位、拡大する地政学的野心によるものだったと指摘する。しかし中国が「ゼロコロナ政策」を撤廃した後も経済成長が実現せず、米国では人口高齢化、想像を絶する若者失業率、深化する経済停滞といった中国の負の側面ばかりが目立つようになった。対照的に米国では失業率は過去最低、株価は過去最高、国際同盟の強化やAIなどの技術革新も進む。この結果、「高齢化し、成長が鈍化し、柔軟性を欠く中国は、台頭する米国を凌駕できない」との新たなコンセンサスが形成されつつある。 (関連記事: トランプ政権に激震 親台派高官が相次ぎ退任へ、ウォルツ氏国連大使指名 関連記事をもっと読む

同盟戦略によるスケールの優位維持

両氏は、ワシントンにとって長期競争の厳格な戦略には三つの現実が核心になると説く。第一に、規模が極めて重要であること。第二に、中国の規模は米国がこれまで対峙したどの相手とも異なり、北京が直面する課題によってもこの現実は変わらないこと。第三に、同盟は米国が必要な規模を達成する唯一の現実的な手段であること。これにより、ワシントンは同盟国を足手まといや従属国ではなく、必要な能力を提供する大国スケールの共同体として扱う必要がある。第二次世界大戦後、米国が他国と同盟を組むのは、力の投射ではなく、力の維持のためというのは初めてのことだ。