調査》台湾人が中国人を騙し、中国人が世界を騙す! 詐欺集団の暗黙のルール、政府は億単位を投じ争う実録

台湾人が詐欺集団によって『人身売買被害者』となるケースで、外交部の救出リストにはなお500人以上がいる。写真はミャンマー国境詐欺拠点で働かされている大勢の被害者たち。イメージ写真。(資料写真 AP通信)
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東南アジアの詐欺パークが日増しに猖獗を極める中、国連薬物犯罪事務所(UNODC)は4月21日に報告書を発表。東南アジアの詐欺ネットワークがすでに全世界に拡大し、根絶が困難であると指摘した。推定で数百の詐欺パークが存在し、年間約400億米ドル、台湾の今年度中央政府総予算収入の約40%に相当する利益を上げている。実際、台湾では2021年から自国民がカンボジアやミャンマーに誘い込まれて詐欺行為に従事するケースが相次いで報告されてきた。政府はこのために億単位の予算を編成し、省庁横断的な特別チームを設立して1000人以上の自国民を救出したが、今日に至っても、救出待ちの国民リストにはまだ500人以上の名前が残っている。

4月13日深夜から14日未明にかけて、カンボジア政府は最近摘発した中国人や台湾人を含む約190人の電信詐欺容疑者を3グループに分けて中国に送還。台湾外交部はただちに厳正な抗議を行った。情報筋の分析によれば、これは習近平国家主席が4月中旬にカンボジアを訪問した際の「お土産」だろうという。実際、台湾政府が東南アジアの詐欺パークに閉じ込められた自国民の救出・帰国を図る上で様々な困難がある理由の一つに、北京からの妨害がある。台湾側が継続的に斡旋を試みているものの、情報筋は、これらの「中国送り」となった台湾人について、今後の帰国の道は「危険が多く吉は少ない」と嘆息した。

2025年4月17日,中國國家主席習近平參加柬埔寨為他舉行的送行儀式、並與駐柬埔寨大使汪文斌握手,參院議長洪森在一旁陪同。(美聯社)
カンボジア政府は4月中旬、台湾人を含む通信詐欺容疑者190人を中国へ強制送還した。送還は数回に分けて実施され、習近平国家主席のカンボジア訪問期間中に実行。写真は習主席が4月17日に送別式に出席した様子。(資料写真 AP通信

台湾が懸命に取り組んでも 詐欺師を捕まえたら「中国送り」

今回の台湾籍電信詐欺師の中国送還騒動について、台湾の在外公館は実は4月1日にすでに情報を得ていた。しかし、様々なルートを通じて全力で交渉したにもかかわらず、カンボジア政府は強引に関係する台湾人を中国に送還し、リストの提供も拒否。事件発生後、外交部はすぐに法務部と大陸委員会に通知して対応を継続するよう要請し、「海峡両岸共同犯罪対策および司法共助協議」のメカニズムを通じて関係する台湾人を台湾に送還することを望んだ。

事件発生から11日後の4月24日、法務部常務次長の黄謀信は立法院司法および法制委員会の質疑応答で、この事件は最初から最後まで法務部・外交部・内政部警政署がすべて把握していたと述べたが、中国に送還された容疑者のリストについては、現在も把握しているかどうか不明だと述べた。翌日、外交部は『風伝媒』に対し、在外公館はすでにリストと人数をおおむね把握しているが、状況が継続的に変化し確認が困難で数字の正確さを確認することは難しく、具体的なリストと数字を明かすことはできないが、リストはすでに法務部と大陸委員会に転送していると説明。 (関連記事: 台湾文化部の100億元文化基金に不正疑惑 仮想通貨詐欺関係者の創投に3000万元出資、元民進党議員の息子も関与か 関連記事をもっと読む

しかし、外交部が期待をかける両岸共同打撃メカニズムはここ数年ほぼ機能停止状態にある。統計によれば、ここ3年間で台湾側が356人の手配犯の送還を要請したが、中国側はわずか10人しか送還しておらず、犯罪者に至っては0人しか送還されていない。警察関係者は率直に述べる。今回中国に送還された台湾籍容疑者が台湾に送還される可能性は極めて低く、台湾側がリストを把握していても手の打ちようがない。両岸共同打撃メカニズムはここ数年間断線状態であり、両岸の警察間の多くの情報交換も、多くが非公式チャネルを通じて行われる必要があるという。まして数百人が関わり、広く議論されている容疑者の送還問題はなおさらだ。