先週、行政院会議で「関税特別条件」として知られる草案が承認され、トランプの関税戦争の影響に対応するための措置が講じられた。この法案が実際に経済的影響を緩和するのに役立つかどうかは別の話だが、実際のところ、これらの対策は他にもっと深刻で致命的な状況を全く考慮されていない可能性がある。
その「致命的」な要因は、トランプ、あるいはアメリカが台湾の半導体に対して持つ「小さな思惑」、さらに言えば「百年債」の存在だ。
4月2日に発表された対等関税の導入後、台湾を含む75か国がアメリカに対して交渉を求め、低姿勢で「ゼロ関税」を求める姿勢を示した。これにより、トランプは他国からの賞賛を浴びることとなった。
行政院がトランプの関税戦争に対応して策定した関税規則や、社会と業界で議論されている減税(自動車や健康食品など)に対する関心は理解できるものだが、もっと根本的な問題が無視されている可能性が高い。トランプの関税戦争の交渉で最も厄介で怖い部分は、単に関税の問題にとどまらず、他国に対してアメリカの利益に従うことを強要する点にある。
例えば、交渉対象国として名を連ねる日本は、最初は幸運だと感じていたが、その後アメリカの要求が一般的な関税や経済交渉の基準をはるかに超えるものであることを実感。軍費負担や為替、さらには逆差を完全になくすことまで求められるという事態です。また、ゼロ関税を提唱したベトナムなどは、中国への経済封鎖への協力を求められ、インドに対しては貿易障壁の撤廃や関税の引き下げに加え、国防やエネルギー、戦略技術に関する問題も持ち出されることに。
要するに、関税自体の税率の高低が本質的な問題ではなく、トランプは不合理な高関税を武器に、各国にアメリカの利益を受け入れさせようとしているのだ。関税そのものはもはや主要な要素とは言えない。
台湾の場合を見れば、そのことは非常に明白だ。WTO(世界貿易機関)の2023年のデータによると、台湾のアメリカ商品に対する加重平均関税率はわずか1.7%、ホワイトハウスの算出する62%とは程遠い。中国は3%であり、これもホワイトハウスが言う67%とは大きな乖離がある。驚くべきことにカンボジアは7.9%ですが、アメリカが発表した数字は97%に達している。
したがって、台湾がアメリカに対して「ゼロ関税」を標榜しても、その1.7%の関税を零にすることがアメリカの利益にどれほど寄与するか疑わしい。台湾は年間400億ドル超のアメリカ商品を輸入しているが、ゼロ関税による減税利益が10億ドルにも満たない可能性すらある。したがって、賴政府が提案する「ゼロ関税からの交渉」は、アメリカにとってほとんど興味を引かないものだと言えるだろう。 (関連記事: 陸文浩の視点:台湾周辺海域で中国軍艦の兵力が突如2倍に増加、その狙いは何か? | 関連記事をもっと読む )
アメリカが台湾にとって最も魅力的で価値のあるものは半導体技術と産業だ。トランプ1.0時代に台湾のTSMCにアメリカへの投資を迫ったり、バイデン政権のチップ法案による補助金でアメリカが吸引していくのは明らかだ。しかし、トランプ2.0時代にはさらに厳しい要求が予想され、台湾の半導体を「丸ごと持って行く」という勢いが伺える。