米国のトランプ大統領の予測不可能な関税劇は、米国が80年以上築いてきた世界経済秩序と常識を混乱させているが、彼には常に前言と矛盾する荒唐無稽な言動を正当化する言い訳がある。閣僚たちはトランプを弁護し、メディアの生中継でもトランプの偉大さを褒め称え忠誠心を示すことに必死で、トランプの機嫌を損ねるのを恐れている。これは米国版『後宮甄嬛伝』と揶揄され、自身のリアリティ番組『アプレンティス』よりも興味深い。
トランプの予測不可能な性格は各界を困惑させているが、彼が習近平やプーチンとの関係の良さを頻繁に語ることから、筆者は大学時代にある成功した実業家から受けた忠告を思い出す。その人物は「職場で誰かと親しいと公言し、特に『最高の友人』と称する人物に出会ったら警戒すべきだ。そういう人は薄情で、自分の利益しか考えない」と語っていた。筆者は幸いそのような人物に遭遇していなかったが、トランプの言動を通じてその人生哲学を理解できた。
トランプはプーチンが自分の面子を立ててロシア・ウクライナ戦争を停止すると一方的に考え、就任後1日で戦争を終結できると宣言した。しかし就任後約100日が経過し、特使の度重なる訪露や関税による脅しも効果がない。プーチンは別の計算を持っており、トランプを軽視しているか、その策略を見抜いている様子だ。
トランプは習近平との良好な関係を主張する一方で、パナマ運河問題で李嘉誠の長江和記社に港湾運営からの撤退を迫り、中国に対して世界最高の145%関税を課している。当初は習近平が訪米してトランプの誕生日パーティーに出席するという話もあったが、現在では中国が報復措置を選択して貿易戦争を激化させていると述べている。これもトランプ流の自己正当化だ。
習近平はトランプの第1期での教訓から学んだはずだ。マー・ア・ラゴ訪問中にシリア空爆が行われ、その後も関税で中国輸出を圧迫された。習近平が再びトランプの「親友」という言葉を信じれば、それは余りにも単純だろう。米中という2頭の象の対立に加え、ロシアも虎視眈々と機会を窺っており、国際情勢はしばらく混乱が続く。
台湾の大多数は親米派だが、中国の武力侵攻時に米軍が台湾軍と共に最後まで戦うかについては疑問を持っている。一方で、圧倒的多数の台湾人は中国共産党の独裁統治下での生活を望んでいない。現実的に台湾は軍事、経済、外交面で米国に依存しており、米国を疑う余裕はない。
しかしトランプに対しては常に警戒が必要だ。米国の政界や民間には台湾友好派が多いが、トランプが任期中の対台湾政策を決定する。台湾は先手を打ち、トランプが台湾を中国との取引材料にする可能性に備えなければならない。国際関係に道義や正義を期待してはならない。国益こそが唯一の目標であり、これはトランプの行動様式と一致する。
ラテンアメリカ政策専門家のジェームズ・ボスワースは「トランプは習近平やプーチンのように彼に対抗する外国指導者により敬意を示す」と指摘している。米中対立の最前線に位置する台湾は、急変する情勢に対応する戦略と計画がさらに必要である。
*著者は致理科技大学副教授。
編集:佐野華美 (関連記事: 尻すぼみで対中関税145%から65%へ大幅引き下げへ トランプ米中貿易戦争に終止符か? | 関連記事をもっと読む )
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