公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)は21日、「日本の経済安全保障政策(Japan’s Economic Security Policy)」をテーマに、外国メディア向けの記者ブリーフィングを開催した。会見には経済安全保障担当大臣・城内実氏が登壇し、法制度、供給網、技術、インフラ、国際協力に至るまで、経済安全保障の幅広い分野にわたる政府の最新の取り組みを説明した。
冒頭で城内大臣は、「自由で開かれた国際秩序が重大な挑戦にさらされている今、国家と国民の安全を経済面から確保する必要が高まっている」と述べ、経済安全保障政策の重要性を強調。「単なる貿易政策ではなく、生活、医療、インフラ全体に関わる問題であり、自由かつ公正な経済活動と安全保障のバランスをいかに取るかが問われている」と語った。
中国を対象にした政策か? 外国記者の問いに「特定国を想定していない」と説明
会見では、ドイツ経済紙『ハンデルスブラット(Handelsblatt)』の記者から「日本は経済安全保障政策において中国の影響力を意識しているのか?サプライチェーンや技術規制で中国に対抗しているのか」との質問が出された。
これに対し、城内大臣は「経済安全保障推進法は、特定の国を念頭に置いたものではない」と明言。そのうえで「日本の立場は、経済の自律性とレジリエンスを高め、価値観を共有する国々との連携を強化し、いかなる国にも過度に依存しない供給体制を構築することにある」と説明した。
経済的威圧への危機感 「重要物資の輸出制限による政治的圧力は現実に存在」
質疑応答に続く政策説明の中で城内氏は、「現実に、政治的意図をもって重要物資の供給を制限し、他国に経済的圧力をかける動きが存在する」と述べ、こうした行動が国際社会における大きなリスクになっていると指摘。「経済的威圧(economic coercion)」という用語を用い、「単なる経済摩擦ではなく、国家安全保障に直結する深刻な問題である」と述べた。
マスクや抗生物質の不足を教訓に β-ラクタム系抗生物質の重要性を強調
コロナ禍で日本国内でマスクが不足し、抗生物質の一部が入手困難になった経験を引き合いに出し、城内氏は「外部依存のリスクは、既に国民も体感した」と語った。特に医療分野において、β-ラクタム系抗生物質のような命に関わる物資が供給されなければ、手術の延期や患者の死亡につながりかねないと警鐘を鳴らした。
そのうえで、「今後は備蓄の強化や国内生産体制の整備を進め、安定供給を図っていく」と表明した。
経済安全保障推進法と情報保護法の整備 政策は実施段階へ
城内氏は、2022年に成立した「経済安全保障推進法」に基づき、以下の4つの制度が整備されたことを改めて説明した。
1. 重要物資の安定供給確保
2. 基幹インフラサービスの保護
3. 先端的技術の研究開発支援 (関連記事: 論評:対等関税が世界経済貿易に大打撃、地政学はどのように再編されるか | 関連記事をもっと読む )
4. 特許出願の非公開制度