大阪・関西万博「メディアデー」において、「大屋根リング解説ツアー」は、設計者の藤本壮介氏自らが案内し、大屋根リングの最上部まで進みながら、その空間的な仕掛けと思想を体感できる貴重な機会となった。
「多様でありながら、ひとつ」を体現する象徴的建築
大阪・関西万博のシンボルとして設計された「大屋根リング」は、「多様でありながら、ひとつ」という会場全体のデザイン理念を表現している。今回のツアーでは、実際にリングの上に登り、設計プロデューサーの藤本氏が建築コンセプトや空間構成の工夫、そして来場者へのメッセージを直接解説した。
リングの最高地点からは、全長2キロメートルに及ぶ円形構造が一望でき、そこに世界中の多様なパビリオンが集結している様子を見渡せる。「多様性がここに集まり、共に未来を作っている風景が見える」と藤本氏は語り、この空間は現代世界に必要不可欠な「つながりの象徴」だと強調した。

未来へのメッセージを込めた空間デザイン
「このリングはただの建築ではなく、未来に向けた強いメッセージ」と藤本氏は語り、「訪れた子どもたちや若者が、世界の広さと多様さに触れ、交流の第一歩を踏み出すきっかけになれば」との思いを明かした。

リングの屋上は季節ごとに表情を変える庭園として設計され、様々な植物や花々が植えられている。「何度でも来たくなる場所にしたい」という藤本氏の言葉通り、芝生の上で寝転びながら空を見上げ、時間を共有できる空間が広がっている。
「空を切り取る」革新的な建築発想
特に注目されるのが「空を切り取る」という建築的発想だ。藤本氏は会場選定時に夢洲の広大な空を目にし、「どんなパビリオンを建てても、この空には敵わない」と感じたという。そこで「空そのものをシンボルとする」ことを決意し、リングの縁を立ち上げることで空が円形に切り取られ、「もう一つの地球」が浮かんでいるような視覚効果を生み出した。
「空は、美しい地球環境の象徴。地球上のどこから見ても、我々が見上げているのは"ひとつの空"である」と述べ、多様性と共生というテーマを体感として訴える設計意図を語った。
リングの一部は2段構造となっており、緩やかな傾斜に芝生が広がるスペースでは、夕日がリングの向こうへと沈んでいく風景を眺めることができる。「空を見上げ、地球と人間の関係を感じられる特別な場所」として設計されている点が強調された。

自然素材を活かした各国パビリオンの個性
リングから見える各国パビリオンの個性にも注目が集まった。フランス、アメリカ、フィリピン、マレーシア、アイルランドなど各国のパビリオンは、それぞれ自然素材を活かした構造や木造建築を採用し、サステナブル社会への意識を建築として表現している。
例えばアイルランドは木のルーバー、バレンシアは竹園、フィリピンは伝統的な籠文化を再解釈したデザインを取り入れている。ドイツ・イタリア・チェコ・スペイン・バーレーンなども木造パビリオンを採用しており、「自然との共生」という本万博の理念が具体化されている。