トランプ氏「もう関税は上げたくない」 対中強硬路線を軌道修正か、TikTok問題も後回しに

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トランプ氏の「解放の日」関税は9日に全面的に中国へと方向転換された(ただし、他の国々に対しては引き続き10%の基本関税が課されている)。これに対し、多くの人々は、結局のところ彼が米国最大の戦略的な競争相手である中国を標的にしたのだと見ており、従来掲げられていた全面的な「対等関税」は単なる目くらましだったのではないかとの見方が強まった。しかし、トランプ氏は17日になって再び世界を驚かせた。彼は、米中間で続いている「報復の応酬」となる関税戦争が終息に近づいている可能性があり、「これ以上関税を引き上げたくない」と発言したのである。TikTokの売却交渉については、貿易問題が解決してから処理するとの意向を示した。

4月2日に米国が大多数の輸入品に対して10%の基本関税を課すと発表して以降、市場は激しく反応した。トランプ政権は「対等関税」の実施を先送りにしたものの、中国の報復関税に対抗する形で、中国からの輸入品に対する関税を繰り返し引き上げ、現在では245%という異常な税率に達している。これに対して中国は、米国製品に対して125%の報復関税を課し、「この数字のゲームには加わらない」と表明した。しかし、ブルームバーグ通信は、トランプ氏の最新の発言は、関税引き下げに前向きな姿勢を示唆していると報じている。

トランプ氏は17日、ホワイトハウスで次のように述べた。「私は関税をこれ以上引き上げたくない。なぜなら、それが消費者の購買意欲を削ぐことになるからだ」「関税がある一定の水準に達すると、人々は買い物をやめてしまう。だから私はもう関税を上げたくない。我々は人々に買い続けてもらう必要がある」。『日経アジア』はこの発言について、トランプ氏がさらなる関税引き上げに対して慎重な姿勢を示したものであり、市場の需要や消費者行動の重要性を強調したと分析している。一方、ロイターは、米中両国が依然として連絡を取り合っているものの、米中関係の今後を左右する「米中首脳会談(川習会)」の開催は、依然として日程が決まっていないと指摘した。

米中首脳会談はまもなく開催か?台湾問題は必ず議題に?

トランプ氏は、中国側がこれまでに複数回、米国側と接触しており、交渉の実現を試みていると述べた。「彼(習近平)を知っていれば分かるが、あらゆる接触は彼の掌の中で管理されている。彼は極めて用心深く、非常に聡明だ」と語った。ただし、ブルームバーグは、トランプ氏が習近平氏と直接接触しているかという記者の質問を避けたと伝えている。また、ブルームバーグは16日、事情に詳しい人物の話として、北京は「トランプ氏が本当に交渉を望むのであれば、より多くの敬意を示し、閣僚らの中国に対する侮辱的な発言を抑えるべきだ」と考えていると報じた。

美國總統川普與商務部長盧特尼克。(美聯社)
アメリカ大統領トランプ氏と商務長官ルートニック氏。(AP通信)

この中国政府の意向に詳しい情報筋はさらに、北京は米国に対して、より一貫性のある立場を取り、場当たり的な方針転換を避けることを求めていると述べた。加えて、中国に対する制裁や台湾問題の解決に積極的な姿勢を示すよう要求している。また、中国側は、米国が大統領の信任を受けた交渉責任者を任命し、その人物が「川習会」の場で署名可能な協定の準備にあたることを望んでいるという。ワシントンのシンクタンク「戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies)」の中国問題専門家スコット・ケネディ氏は、「両国は徐々に交渉のテーブルに向かっており、互いに有利な立場を主張しつつ、議題や参加者、交渉の枠組みを形成しようとしている」と分析している。

「TikTokの問題は後回しにできる」

TikTokに関する質問に対し、トランプ氏は、中国の親会社バイトダンスがTikTokの米国事業を分離する計画について、すでに合意が存在すると認めたうえで、「この取引は米中貿易交渉の結果次第だ」と述べた。トランプ氏は「我々はTikTokに関する合意を持っているが、これは中国の態度次第であり、貿易問題が解決に向かえば、この取引を進めるつもりだ」と語った。

またトランプ氏は以前、新たな関税に対する中国の報復措置がTikTok取引の進展を妨げていると述べていた。彼は「TikTokは中国にとって良い取引だ」と強調し、「中国はこの取引の成立を望んでいるはずだ」とも述べた。さらに、「もし中国がTikTokの米国事業の分離に同意すれば、関税の問題も交渉の一部になり得る」「仮に我々が交渉のテーブルについた場合、TikTokに関する議論は5分もかからないだろう。それほど時間はかからない」と語った。 (関連記事: 対中関税245%に引き上げ トランプ氏「中国を関税で孤立化」WSJ独占報道 関連記事をもっと読む

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編集:梅木奈実

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