大阪・関西万博》藤本壮介氏が「大屋根リング」設計思想を語る 分断の時代に世界が繋がる場所を目指して

大阪・関西万博会場で「大屋根リング藤本プロデューサー解説ツアー」が実施。建築家・藤本壮介氏が自ら解説した。(黃信維 撮影)

2025年4月9日、大阪・関西万博会場で、メディア向けに「大屋根リング藤本プロデューサー解説ツアー」が実施された。会場デザインプロデューサーの建築家・藤本壮介氏が、万博のシンボル「大屋根リング」の上部に参加者を案内し、設計コンセプトや建築的特徴、社会的・思想的意義を解説した。

「多様でありながら、ひとつ」という大阪・関西万博の会場デザイン理念を象徴する「大屋根リング」。今回のツアーでは、参加者が実際にリング上部に登り、藤本氏から空間設計の思想や見どころについて直接説明を受けた。

大阪萬博 圖片來源:黃信維撮影
大阪・関西万博のシンボル「大屋根リング」(黃信維 撮影)

ツアー冒頭、藤本氏は「会場デザインのコンセプトを説明した後、リングの上から会場全体をご覧いただきます」と挨拶。リング最高点まで案内しながら、「そこから会場全体が一望できます」と述べた。

万博の開催意義について藤本氏は「21世紀の今、このイベントを行う意味を深く考えた」と語り、「単なる新技術の展示ではなく、分断が進む現代において、160か国が半年間一つの場所に集い、共に過ごすことは極めて貴重」と指摘。「世界中の人々が未来を共に考える、まさに現代に必要な出来事」と強調した

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大屋根リングの上に行くと、会場全体が一望可能だ。(黃信維 撮影)

大屋根リングの空間構成については「会場は一つの都市のようなもの。混雑を避けながら自然な人の流れを生み出す設計」と説明。「リング内にすべての国のパビリオンを配置することで、多様な文化や価値観を持つ人々が集う"つながりの場"が生まれる」と語った。

また、「このリングは人々を温かく迎え入れるという意味も込めている。世界中の人々が集い、共に未来を思い描く場所であるべき」とその象徴性を強調した。

来場できない人々へも配慮し、「航空写真やヘリコプター映像を通じて、世界中のあらゆる人々が"今ここに世界が集まっている"という事実を目にし、共感できるようにしたい」と述べた。

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大屋根リングがリングが来場者を温かく迎え入れる。(黃信維 撮影)

「大屋根リング」は世界最大規模の木造建築でもあり、サステナブル建築の先端を行く。藤本氏は「建築に使う木材は、自然の森の中で成長しながら二酸化炭素を吸収する。伐採後はすぐに植林することで、循環型社会の実現につながる」として、木造建築のグローバルな意義を語った。

「大規模木造建築は世界で10年前から推進されているが、日本は遅れていた」と指摘し、「日本には千年以上の木造建築の伝統、優れた技術、豊かな森林資源がある。これを生かさないのは非常にもったいない」と語った。

構造面では、柱に穴を開けて梁を通し、楔で固定するという伝統工法「抜きの工法」を現代的にアレンジ。耐震基準をクリアするため金属製の楔を使用し、「何度も試験を重ねて実用化にこぎつけた」と述べた。まさに伝統と革新を融合させた象徴である。

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伝統工法「抜きの工法」を現代的にアレンジ。(黃信維 撮影)

使用木材は国産材約70%(杉・檜)、輸入材約30%(欧州赤松など)。「将来は100%国産材にしたい。万博を機に日本の林業の重要性に注目が集まり、森林資源の循環が活性化されることを願う」と語った。

藤本氏は東京とパリに事務所を構え、国際的に活躍。10年前から欧州でも活動し、日本の木造建築文化が国際的に活用されていない現状を「非常にもったいない」と感じていたという。

「日本は木造建築の伝統、技術、資源に恵まれているのに世界の流れから遅れている。今回の万博でそのポテンシャルを世界に示したい」と、本プロジェクトへの強い使命感を明かした。

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