第二次世界大戦後、ヨーロッパと日本の工業能力は底に落ち込み、アメリカは世界の製造業生産量の半分以上を占め、多くの国々がアメリカ製品に依存していた。80年が経過し、世界の貿易構造は何度も変化し、「アメリカ製」はもはや絶対的な優位性を持たなくなった。2024年、アメリカの製造業は世界の製造業生産高のわずか10%強を占めるにすぎず、輸入額は輸出額を1.2兆ドル(約38.7兆円)上回っている。この状況にトランプは強い不満を示し、アメリカの製造業復活を目指して様々な政策を打ち出したが、就任100日で支持率は70年ぶりの低水準となり、彼の製造業回帰計画にも多くの懸念材料が浮上している。
アメリカのドナルド・トランプ大統領は、巨大な関税障壁を設けることで製造業の国内回帰を促進し、企業に工場をアメリカ本土に移転させ、アメリカを再び世界の製造業大国にしようとしている。『エコノミスト』誌の分析によると、イーライリリー、シュナイダーエレクトリック、IBMなどの多国籍企業が、関税リスクへの対応とアメリカ市場の成長可能性を確保するため、アメリカへの大規模投資計画を次々と発表している。一方で、トランプの要求を満たすことは困難だと考える企業も多く、ペプシコやディアジオなどの食品飲料企業は、関税が利益を圧迫すると指摘し、工場をアメリカに移転する難しさをトランプが過小評価しており、彼の政策が逆効果をもたらす可能性があることを認識していないと主張している。
Donald Trump wants to make America a manufacturing powerhouse again. But he fails to understand why that is such a tricky propositionhttps://t.co/tzVCrasmcY
— The Economist (@TheEconomist)April 29, 2025
トランプのMAGA構想には多くの潜在的リスクがある。まず労働力不足の問題がある。アメリカの製造業労働者の平均賃金は中国の労働者の2倍、ベトナムの労働者のほぼ6倍だが、それでも十分なアメリカ人を製造業に引き付けることができていない。米国勢調査局による製造業工場の最新調査では、5分の1の工場が、生産能力を100%活用できない理由の一つとして労働力不足を挙げている。 (関連記事: 視点寄稿:見えない独裁には、見える正義が必要 | 関連記事をもっと読む )
アメリカに工場を設立したい外国企業は、熟練溶接工や機械オペレーターなどの技術労働力の不足を嘆いている。TSMCの魏哲家会長は、同社のアリゾナ州での投資計画が米国の労働力不足によって制限されていると述べている。このような状況では自動化生産が解決策となりうるが、これもトランプ政権の政策と衝突する。ハワード・ルトニックは最近、「iPhoneに小さなネジを取り付ける何百万人もの人間の大軍」がアメリカに戻ってくると述べたが、アップルはiPhoneの組み立てをインドに移行する計画が報じられている。また、アメリカの製造業におけるロボット技術は、他国に追いつくまでにまだ時間がかかる。国際ロボット連盟の2023年統計によれば、アメリカの製造業ロボット密度は1万人あたり295台で、2020年の255台から増加したものの、中国の1万人あたり470台には遠く及ばず、韓国に至っては1万人あたり1012台という高密度を誇っている。