米国のEコマースジャイアント、アマゾン(Amazon)が商品の総額に関税によるコスト増加分を表示する計画だと報じられた。ホワイトハウスは4月29日、この取り組みを「敵意に満ちた政治的行為」と厳しく非難した。
米国の政治ニュースサイト「パンチボウル・ニュース」(Punchbowl News)によると、アマゾンは近く商品の総額に加えて、どれだけのコストが関税に由来するものかを表示し始める予定だという。同記事は詳細を明らかにしておらず、アマゾンの担当者もすぐにはコメントを出さなかった。
ホワイトハウスのカロライン・リービット(Karoline Leavitt)報道官は29日の記者会見で「これはアマゾンによる敵意に満ちた政治的行為です。バイデン政権がインフレを40年ぶりの高水準に押し上げた時、アマゾンはなぜこのような行動を取らなかったのでしょうか」と強く批判した。さらに、リービット報道官はアマゾンと中国との過去の関係についても厳しく指摘。ロイター通信が2021年に報じたアマゾンと「中国のプロパガンダ機関」との協力関係に触れ、今回の動きは驚くべきことではないと述べた。
しかし、その後アマゾンの広報担当ティム・ドイルは、アマゾンの低価格商品を扱うAmazon Haulチームが確かに一部商品の輸入費用表示を「検討」していたものの、アマゾン本体のサイトではこの機能を検討したことはなく、「この件は承認されたことはなく、実施されることもない」と述べた。『ワシントン・ポスト』の後の報道によると、トランプ米大統領はこの件でアマゾンCEOのジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)に電話をかけて苦情を伝え、その後メディアのインタビューでベゾスを称賛したという。
トランプ氏は、このアマゾン創業者が「正しいことをした」と述べ、「ジェフ・ベゾスはとても良い人だ。素晴らしい」「彼は問題をすぐに解決した。正しいことをした。本当に良い人だ」と賞賛した。
ただし『ウォール・ストリート・ジャーナル』によると、情報筋は、アマゾンが5月2日に中国からの小包に対する関税免除措置(いわゆる少額免除)の変更前に輸入費用の表示を検討していたと明かしている。この免除措置により、米国外からの少額小包は関税と税関検査が免除されており、アマゾンのHaulサイトで販売されている多くの商品がこの政策の恩恵を受けていた。 (関連記事: トランプ『米国製造業復活』構想、関税政策だけで十分? 『エコノミスト』分析の三つの壁:労働力確保・工場建設・老朽化したインフラ | 関連記事をもっと読む )
『ワシントン・ポスト』は、アマゾンとホワイトハウスの今回の争いについて、世界的な貿易戦争の影響がより多くのアメリカ人に及ぶにつれ、ホワイトハウスが直面する政治的リスクが増大していることを示していると分析している。多くの経済指標は健全な状態を維持しているものの、米国政府が課している関税(特に中国に対するもの)の影響は今後数週間から数カ月でより顕著になるだろう。『ワシントン・ポスト』の最新世論調査でも、アメリカ国民のほぼ3分の2がトランプ氏の関税政策を支持していないことが明らかになっている。