米国家安全保障担当補佐官マイク・ウォルツ氏(Mike Waltz)および副補佐官アレックス・ウォン氏(Alex Wong)が辞任する見通しとなった。ドナルド・トランプ米大統領は5月1日、自身のSNSで、ウォルツ氏を国連大使に指名する方針を発表し、移行期間中はマルコ・ルビオ(Marco Rubio)国務長官が国家安全保障担当補佐官を兼務すると表明した。
複数の米メディアによると、ウォルツ氏は誤って『アトランティック』編集長ジェフリー・ゴールドバーグ氏(Jeffrey Goldberg)を国家安全保障高官の通信グループに加え、米軍によるイエメン空爆に関する情報が漏洩。この件でトランプ氏の不満を買い、ウォルツ氏は数日内に辞任する予定だという。これはトランプ氏の大統領再登板後、初の高官更迭となる。
トランプ氏は1日午後、「トゥルース・ソーシャル(Truth Social)」でウォルツ氏の国連大使指名を発表し、ウォルツ氏の退任を事実上認めた。投稿では、ウォルツ氏が軍人、議員、国家安全保障担当補佐官として国益を最優先してきたと述べ、新たな職務でもその姿勢を期待すると記した。また、移行期間中はルビオ国務長官が補佐官を兼任することを明らかにした。
アレックス・ウォン氏とマイケル・ウォルツ氏、親台派官僚が相次ぎ退任
3月末、トランプ氏は共和党のエリース・ステファニク(Elise Stefanik)下院議員を国連大使に指名する案を撤回。これは下院における共和党の議席数を守り、「アメリカ・ファースト」政策を進める狙いがあったとされる。

ウォルツ氏は昨年末の大統領選後に国家安全保障担当補佐官に指名された。陸軍特殊部隊「グリーンベレー」で27年勤務し、アフガニスタン、中東、アフリカでの作戦に従事して銅星章4個を受章、中佐で退役後、同部隊出身者として初めて連邦議会入りした経歴を持つ。
また、米国家安全保障会議の副補佐官アレックス・ウォン氏も辞任の見込みとされ、両者ともに「親台派」と位置付けられてきた。ウォン氏は広東省出身の移民の子で、ハーバード大学法科大学院卒。台湾系の妻を持ち、2018年には国務省東アジア・太平洋副次官補として訪台。トランプ氏が署名した台湾旅行法直後の訪問で「米台関係は取引ではない」と強調し、台湾人民が自由に進路を選べる環境を確保するのが米国の政策目標だと述べた。台湾旅行法は、米台間の高官交流の制限を緩和し、全レベルの訪問を奨励する内容だった。
トランプ特使ウィトコフ氏が後任か
《ウォール・ストリート・ジャーナル》は今回の件を「トランプ政権初の大きな醜聞の一つ」と位置付ける。トランプ氏は当初ウォルツ氏を即座に解任しなかったが、関係者に不満を漏らしていたという。CNNは「トランプ氏は以前からウォルツ氏への信頼を失っていた」と報じている。トランプが正式な後任を検討している間、ルビオや副国務長官クリストファー・ランドウ(Christopher Landau)もワルツのポジションを一時的に引き継ぐ候補として挙げられている。

《ロイター》によれば、ルビオ国務長官やクリストファー・ランドー国務副長官が一時的な後任として浮上しており、トランプ氏の特使スティーブ・ウィトコフ氏(Steve Witkoff)も正式な後任候補とされるが、最終決定はされていない。ウィトコフ氏は元不動産弁護士で、不動産開発業者として成功。現在は米中東特使で、中東外交だけでなく、トランプ氏の私的な非公式特使としてロシアのプーチン大統領との連絡役も担い、ウクライナ問題の外交に関与している。
民主党の議員らは「トランプ氏は解任対象を間違えた」と批判しており、イエメン空爆の標的をシグナルのグループ内で議論していたのは国防長官ピート・ヘグセス氏(Pete Hegseth)だと指摘している。 (関連記事: トランプ『米国製造業復活』構想、関税政策だけで十分? 『エコノミスト』分析の三つの壁:労働力確保・工場建設・老朽化したインフラ | 関連記事をもっと読む )
編集:梅木奈実
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