木宮正史氏、日韓国交正常化60年で講演 日韓の経済連携と対中戦略・構造的転換を語る

日韓国交正常化から60年を迎えたのを機に、「日韓関係の現状と展望」をテーマに、木宮正史氏を講師とした記者ブリーフィングを開催した。(映像より 公益財団法人フォーリン・プレスセンター提供)

日韓国交正常化から60年を迎えたのを機に、公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)は14日、「日韓関係の現状と展望」をテーマとする記者ブリーフィングを開催した。講師として登壇したのは、東京大学大学院総合文化研究科前教授で、現在は同大学の特任研究員を務める木宮正史氏。会場にはベルギー、韓国をはじめとする海外メディアの記者らが集まり、約90分にわたり講演と質疑応答が行われた。

ブリーフィングでは、《風傳媒》が事前に提出した質問に対し、木宮氏自ら「台湾のメディアからの質問です」と言及した上で回答を行った。質問内容は「インド太平洋地域の緊張が続く中で、日韓両国の安全保障や経済連携の重要性が一層増していると感じます。特に、台湾海峡を含む海洋の安定や地域の経済秩序について、今後の日韓協力にはどのような可能性や課題があるとお考えでしょうか」というものであった。

これに対し木宮氏は、日本が台湾海峡の危機を自身の安全保障に直結する問題と見なしていることは明白であるとしながらも、韓国は文在寅政権期まで「戦略的曖昧さ(Strategic Ambiguity)」の立場を維持し、台湾問題については関与を避けてきたと説明した。また、進歩系の李在明氏も「台湾海峡の問題が韓国とどう関係あるのか」と発言していることを引き合いに出し、韓国では台湾問題を自国の戦略的課題とする意識が薄いと述べた。

一方で、韓国では中国が北朝鮮に対して最大の影響力を持つとの認識が根強く、特に進歩派政権においては南北関係の安定を優先する観点から、中国との摩擦を避けたい意図が働いていると指摘した。ただし、韓国の若年層では中国への反発が強まっている傾向もあり、世論と政権の間に認識のズレが生じつつあるとの見方も示した。

木宮氏は「中国への対応について日韓両国が完全に足並みをそろえるのは困難だが、米中対立の激化や台湾海峡情勢の緊張を踏まえると、一定の戦略的調整と意思疎通は不可欠である」と述べ、台湾問題に関しても日韓協力の可能性を排除すべきではないと締めくくった。

講演では、1965年の国交正常化が両国にとっていかなる意味を持ったのかを皮切りに、日韓関係の歴史的経緯と構造変容について詳述された。木宮氏はまず、「1965年の基本条約は日本にとっては請求権問題の解決であり、韓国にとっては歴史的清算の出発点だった」と述べ、双方の認識の隔たりがその後の関係の軋轢につながったとの認識を示した。 (関連記事: 韓国大統領選》残り2週間、李在明が保守派の牙城を突破⁈ “Z世代”1200万票は誰を支持するのか、勝敗の鍵となる恐れ 関連記事をもっと読む

次に、冷戦構造下において日韓は反共陣営の一角として協力関係を築いたことを挙げ、「ソ連・中国・北朝鮮という共産主義の脅威に対抗するため、日韓は同じ陣営に立ち、連携を深めていった」と語った。こうした背景のもと、1965年の協定では日本から韓国への2億ドル相当の経済支援が実施され、韓国の産業化と経済成長に大きく寄与したと説明した。