気候変動で揺れる台湾の椎茸産業 ー 5年で23%減少
台湾農業部の胡忠一次官は、気候変動の影響により2023年のキノコ類、特に椎茸の生産量が2018年と比較して大幅に減少したと発表した。2018年に117億1600万台湾ドルだったキノコ類の生産額は2023年には91億3100万台湾ドルに、椎茸に至っては86億6100万台湾ドルから66億1500万台湾ドルにまで落ち込んだ。
胡次官は「これは農家の怠慢ではなく、高温により菌種が弱体化したためだ」と説明。椎茸の生育に適した気温は23度で、25度を超えると発育不良になるという。
日本の技術に活路を見出す ー 年間1000種以上の菌種開発に期待
この状況を打開するため、台湾は日本の技術に期待を寄せている。台中市新社区農会と日本の「森産業株式会社」、台湾の「第一名店」社が三者間の協力覚書(MOU)を締結。さらに、新社区農会と農業試験所も技術協力の覚書を交わした。
胡次官によると、日本では毎年1000種以上の菌種が開発されており、国産菌種の市場占有率も国内首位を誇る。「日本の経験から学び、菌種の弱体化問題を実質的に改善し、耐熱性のある菌種を開発したい」と胡次官は意気込みを語った。
環境制御技術で生産性向上を目指す
胡次官は日本視察の経験も踏まえ、「日本ではすでに温度と湿度を制御した環境で生産を行っており、傘が大きく肉厚で品質の良い椎茸が生産されている」と指摘。台湾の生産性の低さも浮き彫りになった。
「日本では1つの菌床から600グラムの収穫があるのに対し、台湾では300グラムから200グラムに減少し、日本の1/2から1/3の収穫量になっている」と胡次官は説明した。
相互利益を目指す日台協力 ー 台湾の高温環境を活用
一方で、日本も近年30度以上の高温日が増加しており、台湾の高温環境が日本の耐熱品種研究に活用できる可能性も示唆された。胡次官は「お互いの産業競争力を強化できる」と期待を寄せている。
台湾国内の取り組み ー スマート農業で生産性向上
台湾国内でも対策が進められている。農糧署は農業試験所と共同で「スマート農業-キノコ類先導産業」計画を推進。生産から包装まで各工程の改善を図っている。
さらに、台中新社区では若手農家を支援し、「新型水簾式キノコ立体化モデル温室」を設置。この設備により効果的に温度を下げ、品質を向上させ、従来の栽培方法の6倍以上の生産量を実現できるという。
台湾椎茸産業の現状と展望
胡次官によると、台湾では年間2億903万個の菌床で椎茸を栽培しており、そのうち台中新社区が1億880万個(52%)を占める。全国の年間生産量4274トンのうち、新社区は2720トン(約64%)を生産している。
台湾は年間約1000トンの椎茸を輸入する一方、生鮮椎茸14.2トンを香港、シンガポール、オーストラリアに、乾燥椎茸をアメリカ、タイ、カナダに輸出している。胡次官は「生産能力の向上により、ビジネスチャンスの拡大を期待している」と述べ、日台協力による産業振興に期待を寄せている。 編集:高畷祐子
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