米中両国は12日、関税の一時的な引き下げと通商交渉の開始で合意し、貿易戦争の緊張が緩和された。これを受けて、米国企業は90日間の「ゴールデンウィンドウ」を活用し、中国から大量の商品を輸入しており、米中航路の運賃も上昇傾向を見せ始めている。
米中共同声明によると、中国からの輸入品に対する関税は即日から30%に引き下げられ、4月時点の145%から大幅に減少する。この減税措置は8月12日まで継続される予定だ。『日経アジア』は、玩具や衣料品、その他消費財を扱う米国小売業者が、中国のサプライヤーに対し、以前の注文の出荷を要請したり、新規の緊急発注を行っていると報じた。
米テキサス州の教育玩具メーカー「Viahart」のCEO、モルソン・ハート氏は、トランプ政権が4月に関税を145%まで引き上げた後、生産拠点の東南アジアへの移転を開始したと明かした。今回の貿易休戦によって、サプライチェーン移行のための時間が稼げたという。
ハート氏は、「在庫をもっと確保したい。現在、中国からの生産移転で忙しい。『Brain Flakes』という商品の在庫は10月には売り切れる見込みだった」と語り、90日以内にできるだけ多くの中国製品を米国に輸送する方針を強調した。「30%の関税は依然として重いが、145%と比べれば夢のような話だ」と語った。
イリノイ州に本社を構える「Learning Resources」のCEO、リック・ウォルデンバーグ氏も、中国に対して玩具の注文出荷を要請し、在庫補充を急いでいる。ウォルデンバーグ氏は、「関税戦争によって我が社の運営コストは大きく増加した。すべてに代償が伴うが、それでも税は払うつもりだ。未来は読めない。進むしかない」と語った。
米国からの発注が再び戻る中、中国の工場も活気を取り戻しつつある。製造業者によれば、12日の米中共同声明発表以降、電話やメッセージが鳴り止まず、納期短縮を求める催促が相次いでいるという。アジア地域のアパレルや靴のサプライヤーも、米国の顧客と発注計画の再評価を進めている。米オレゴン州の調達会社「Alliance Trading Group」の代表、パトリック・ソン氏は、「今週中に、優先して連絡すべき製品と顧客、今後の注文をどう扱うかを話し合う」と述べた。
全米小売業協会(National Retail Federation)のCEO、マシュー・シェイ氏は、今回の一時的な減税により、小売業者にとって年末のクリスマス商戦に向けた在庫準備のための一時的な猶予が得られたと評価した。多くの業者は、減税措置がなければ、11月の販売ピーク時に店頭の商品棚が空になると警告していた。
先週末のスイスでの米中会談の結果、両国は段階的な関税の撤廃に合意した。米国は、大統領令により、低価格小包にかかる輸入関税を120%から54%に引き下げた。中国も、5月14日から米国製品への関税を125%から10%に引き下げると発表した。
中国製品への大量発注の殺到により、海運会社は輸送能力を再び中国方面へシフトしており、米国西海岸航路の運賃は今後数週間で20%上昇すると予想されている。海運データ分析会社「Xeneta」のチーフアナリスト、ピーター・サンド氏は、「荷主や船会社にとって、今後90日間は輸入の重要なウィンドウ期間となる。関税30%は依然として高いが、145%よりははるかにマシ。そうでなければ、一部の商品は米国市場に生き残れない」と述べた。 (関連記事: トランプ氏、対中関税緩和の翌日にEU非難 「中国より悪い。米国に極めて不公平」 | 関連記事をもっと読む )
編集:梅木奈実
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