台湾漫画家Peter Mann氏「音楽×漫画」の新境地 日本滞在経験を糧に新作制作へ

台湾漫画家Peter Mann氏「音楽×漫画」の新境地 日本滞在経験を糧に新作制作へ(写真/黃信維撮影)

台湾出身の漫画家Peter Mann氏が東京で《風傳媒》の取材に応じ、音楽と漫画を融合させた独自の創作手法や、日本での1年間のワーキングホリデー体験について語った。現在は台湾に戻り、新たな作品制作に向けた準備を進めているという。

代表作『芭樂歌(BLA BLA SONG)』は、音楽と漫画を組み合わせた異色の作品として話題を呼んでいる。Peter氏は創作のきっかけについて「以前は映像制作やイラストの仕事をしていたので、音楽関係者から作品制作を依頼されることが多かった。長年の積み重ねに加え、自分自身も音楽が好きだったため、漫画と音楽を組み合わせるアイデアが自然に浮かんだ」と振り返る。漫画制作の魅力については「一人で作れるのが良い。自分のペースで物語を考えて描けますから」と語った。

代表作『芭樂歌(BLA BLA SONG)』は、音楽と漫画を組み合わせた異色の作品として話題を呼んでいる。(写真/黃信維撮影)
代表作『芭樂歌(BLA BLA SONG)』は、音楽と漫画を組み合わせた異色の作品として話題を呼んでいる。(写真/黃信維撮影)

また、作品の奇想天外な世界観について「漫画ならではの表現の自由度を存分に活かしたい」と話す。幼少期からアニメや漫画に親しんで育った経験が「想像力を広げるきっかけになった」といい、「シュールでありながら、どこか共感してもらえる作品を描きたい」と創作への思いを込めた。

Peter氏はこれまで北九州市でのアーティスト・イン・レジデンスにも参加した経験がある。当時について「文化交流の要素が強く、自治体や現地クリエイターとの接点が多かった」と振り返る一方、今回の長期滞在では「展示会の開催や同人誌の販売、新しい読者との出会いを目標に活動していた」と説明した。特に日本市場を意識した創作活動では「日本の読者に理解してもらうため、言葉遊びに頼らず、中性的な表現になるよう工夫した」と苦労を明かした。

『芭樂歌』の制作では、音楽と漫画のコラボレーションを自ら主導したという。制作の背景について「音楽と漫画を結び付ける試みは、台湾ではまだ珍しい取り組み。漫画家自身が発起人となって、編集者やレーベル、音楽家をまとめる形で実現させた」と説明。さらに文化部の補助を受けて『芭樂歌』続編の制作にも取り組んでおり、「今年下半期には発表したい」と意欲を見せた。

台湾漫画の国際展開については「台湾は自由な創作環境が魅力だが、多様な才能にあふれているため、目立つのは簡単ではない」と率直に語る。その上で「台湾には優れた作品がたくさんある。日本の出版業界も変革期を迎えているので、今こそ台湾のクリエイターにとってチャンスだと思う」と前向きな見方を示した。ただし、言語の壁については依然として課題があることも認めている。

今年6月から10月にかけては『芭樂歌』続編の関連企画を段階的に展開していく予定だ。「最終的には単行本としてまとめるが、その過程では音楽とのコラボなど、いろいろな形で発信していきたい」と語り、ファンに向けて「ぜひSNSもチェックしてほしい」と呼びかけた。

​編集:田中佳奈