張鈞凱コラム:「今回は中国を支持する!」本当の「壁国」が姿を現している

トランプは対等関税などで世界を威嚇し、中国大陸は「最後まで付き合う」と応じる。台湾のネット世論では「今は中国側に立つ」との声が出ている。(Threadsより)
目次

トランプ大帝がエイプリルフールの翌日に対等関税政策を発表した時、台湾の政権幹部は音楽祭に熱中していたり、春巻きを食べていたり様々だった。暗雲立ち込める中、2つの地域の反応が目を引いた。1つはシンガポールで、黄循財首相が成熟した小国の指導者の模範を示した。もう1つは中国大陸で、「最後まで付き合う」という4文字が多くの人々の心に響いた。

魔法のリアリズムが展開、台湾世論が「中国支持」を始める?

「私は台湾人だが、今は中国側に立つ!」「私は台湾を愛しているが、今回は中国の対応がかっこいいと思う。底力がある、決して屈しない」「中国が今回の関税で最も腰が据わっているとは、現実はあまりにも魔法的だ!」「中国だけが言うべきことを言い、行動する。初めて中国に根性があると感じた」「我々の政府は何も言えない。台湾を中国に渡した方がましだ」「実は誰もが中国の対応が正しいことを知っている。ただ台湾人が認めたくないだけだ」「反中感情で是非が分からなくなり、自分が跪いているのに立っている人を笑う」

以上は、ここ数日のPTT・Threads・親緑メディアを含むニュース報道での、多くの台湾ネットユーザーのコメントの抜粋である。多くの人はこれを対岸の「浸透」「世論戦」と考えたり、一時的な義憤だと思うだろう。しかし、レッテルを貼る前に考えてほしい。台湾の固定化したアイデンティティは突然逆転するものではないが、このような考えのコメントが現象として広がっているのも事実で、この関税戦争の別様な注釈となっている。

公平に言えば、このようなコメントの出現は決して偶然ではなく、徐々に風が吹き始めた過程である。トランプのTSMCと台湾半導体産業に対する貪欲さは、長年台湾社会の主流イデオロギーを支配してきた「親米主義」に小さな穴を開けた。政府・与党・側近が総動員で「TSMCを信じろ、魏哲家を信じろ」と呼びかけても、この小さな穴は塞がらない。人々が信じないのはアメリカとその従者たちだからだ。それ以前にも、台湾がアメリカからどれだけ時代遅れの武器を買い、どれだけのライ豚・ライ牛を食べても、アメリカの台湾に対する口先だけの現実は変わらなかった。どんなに鈍感な社会でも、何かがおかしいと感じる神経は残っており、賴清德総統は就任前から「アメリカを疑ってはならない」と命令せざるを得なかった。

20250306-總統賴清德(左)、台積電董事長魏哲家(右)6日於總統府召開記者會。(顏麟宇攝)
賴清德総統は3月6日、総統府でTSMC会長の魏哲家と記者会見を行い、TSMCの米国投資を「東進」と呼んだ。(顔麟宇撮影)

米メディアも「米国を疑い」始め、2025年に中国が世界化を救う?

しかし、今日「米国を疑う」のは、緑営にレッテルを貼られた「中共の同路人」だけではない。黄循財は「ルールに基づく世界化と自由貿易の時代は終わった」と強調したが、その始作俑者は他ならぬアメリカである。『ウォール・ストリート・ジャーナル』でさえ、トランプの下でアメリカは攻撃的で予測不可能な外交政策で「旧友たち」を遠ざけたと認めている。対照的に、中国は「世界の安定の柱」として現れている。 (関連記事: 陸文浩の視点:台湾の「域外敵対勢力」の炎は消えず、くすぶり続ける 関連記事をもっと読む

他国とのコミュニケーションを「お世辞」(kissing my ass)と見なし、中国人を「田舎者」や「賤民」(Chinese peasants)と呼ぶワシントンの指導者とは対照的に、北京は全く異なる姿勢を示している。中国外交部報道官の米国との舌戦は別として、4月8日以来、商務部部長の王文涛は台湾の世論が見落としている忙しい人物だ。