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編集部

《歴史を読み解く》北朝鮮のミサイル威嚇に対する、2017年の日本政府と社会の反応

近年、相次ぐミサイル発射で日韓を威嚇する北朝鮮。ミサイル発射訓練の様子(AP通信)
なぜこの記事を振り返るのか
10月31日、台湾に台風が接近する中、北朝鮮は日本とロシアの間の海域にミサイルを発射した。このニュースを受け、日韓の株式市場は大幅に下落した。近年、北朝鮮は頻繁にミサイル発射で日韓を威嚇している。2017年に掲載されたこの記事は、その中の1つの発射が日本政府と社会へ与えた影響を記録している。
中国が日中戦争を持ち出して日本に心理的圧力をかけ続けるように、北朝鮮も過去の朝鮮半島侵略と「鬼畜米帝」との同盟関係を理由に、ミサイル発射による威嚇を正当化している。飢餓が深刻化する国内で、一発のミサイルが多くの子供たちの食事になり得るという現実は、完全に無視されている。
一方、第二次世界大戦後、米軍によって「爪と牙」を抜かれ、「温室」のような平和な環境で過ごしてきた日本社会は、他国からの武力行使という現実に直面し、政府も国民も大きな衝撃を受けている。これは単なる安全保障の問題ではなく、戦後日本の国家アイデンティティと平和主義の根幹に関わる課題である。「平和国家」として歩んできた道のりと、新たな国際環境との整合性が、今、厳しく問われている。(新新聞編集部)

ミサイル発射と警報

2017年9月15日早朝6時57分、日本の東北12道県でJアラート(全国瞬時警報システム)が発動された。「ミサイル発射!ミサイル発射!」という警報が鳴り響いた。数時間後、号外を持った新聞配達員が街頭に現れ、通行人は足を止めて重い活字の見出しに眉をひそめた。


「米国への示威」で日本上空を通過

今回発射されたのは火星12型中距離弾道ミサイルで、防衛省は最大射程を5000キロと評価。8月29日の発射とほぼ同じ軌道で北海道上空を通過し太平洋に落下したが、飛行距離は1000キロ延長された。


NHKは立体図表を用い、3700キロの落下地点から半径を描き、日本の南東にある「グアム」を示した。小野寺五典防衛相は、北朝鮮が火星12型の「グアム到達能力」を誇示する意図があったと分析。米国への示威行為でありながら、日本上空を通過させる二重の威嚇だった。ミサイルは最高高度約800キロに達し、日本の現有防衛システムでは迎撃不能とされる。

金正恩氏。(AP通信)

拉致問題という消えない傷跡

台風の報道で一時的にミサイル報道は薄れたものの、同日のメディアは白髪の老人たちの姿を映し出した。20年以上前に家族を失った「北朝鮮による拉致被害者家族会」のメンバーだ。9月17日は小泉純一郎元首相と故金正日総書記の会談から15周年。当時、安倍晋三官房副長官も同行していた。


この会談で北朝鮮は初めて、工作員育成のための日本人拉致を公式に認めた。1970年代から続いた沿岸部での不審な失踪事件の真相が明らかになり、日本中が衝撃を受けた。


「日本版9.11」としての拉致問題

戦後、経済発展と平和憲法の下で豊かな生活を築いた日本。台湾人の印象では礼儀正しく秩序を重んじる国民性として知られ、日本の記者たちは「温室での生活」と表現する。


ニューヨーク大学のロバート・S・ボイントン教授は著書『The Invitation-Only Zone』で、この「温室社会」にとって拉致問題は「日本版9.11」に相当する衝撃だったと分析している。


2000年の平壌協議で北朝鮮は13人の拉致を認め5人を帰国させたが、残りは死亡したと主張。遺骨の性別すら一致しない不可解な対応が続き、2014年に金正恩政権は突如30人の新たな名簿を提示した。


日本側は860人の失踪・拉致疑惑者リストを提出したが、真相は依然として不明のままだ。安倍首相はトランプ大統領との会談でも拉致問題解決を最優先課題として強調。世論調査でも北朝鮮関連で「最も関心がある」との回答が8割を占め、ミサイル・核の脅威を上回る。安倍首相は拉致被害者を忘れない象徴として青いリボンを着用し続けている。


歴史的憎悪が独裁政権の延命薬に

北朝鮮の史観では、対日報復は当然の権利とされている。1910年の日本による朝鮮半島占領、大韓帝国の滅亡から、平壌は前回8月29日にミサイル発射を選んだ。この日は「日韓併合」107周年の記念日であり、北朝鮮の公式メディア・朝鮮中央通信は「残虐な日本を震撼させる大胆な作戦」を成功させたと誇示した。確かに日本は朝鮮半島への侵略を繰り返してきたが、民族主義と歴史的憎悪は独裁政権の延命薬となっている。


16世紀の明朝万暦年間、日本の太閤・豊臣秀吉は「明への道を借りる」として朝鮮に出兵した。明・朝・日の三国が6年にわたって混戦を繰り広げ、最終的に豊臣の死去によって日本軍は撤退した。朝鮮は日中両大国の間で、時に中国の保護国となり、時に日本の植民地となった。この歴史的屈辱が強靭な国民性を育み、恩讐に敏感な性格も自然な成り行きといえる。

北朝鮮は民族感情を煽り、指導者を神格化することで政権基盤を固めてきた。写真は朝鮮中央通信が配信した金正恩氏の白頭山登頂の宣伝写真。(資料写真・朝鮮中央通信)

かつて日本が朝鮮半島を「越えて」中国を侵略したように、今度は北朝鮮がミサイルで日本を「越えて」米国を威嚇している。9月15日のミサイル威嚇後、朝鮮中央通信は日本の対米追従を非難し、「主体思想の核弾で島国を海に沈める」と警告した。「温室」で平和を謳歌する日本は既に軍国主義から脱却したが、地政学的な歴史の清算は皮肉な形で続いている。


日本は今や米国の「被保護国」となり、軍事力で劣る北朝鮮からミサイルと水爆による威嚇を甘受している。安倍首相は「このような蛮行は断じて容認できない」と強く非難したが、日本CIGS戦略研究所主幹研究員の宮家邦彦氏はNHKの取材で、軍事行動も対話による解決も困難だと明言した。


心理的備え、続く「いたずら」に対して

民主主義政府は、金正恩氏の人質となった数千の人命を前に対応に苦慮している。ミサイルの脅威は、拉致なき拉致の様相を呈している。


朝日新聞はミサイル通過の翌日、北朝鮮の今後の主要行事日程を掲載。10月10日の労働党創建記念日から翌年4月の軍創建記念日、9月の建国70周年まで列挙した。忍耐強い日本人は、静かに心の準備を進めているようだ。(2017年9月20日付「新新聞」1594号掲載)


編集:佐野華美


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