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主筆室

【社説】台湾の国防費、GDPの10%へ? 賴清德政権「力による平和」戦略の矛盾

台湾の賴清德総統は「力による平和」を掲げ、中国との平和協定締結を拒否した。国防費はGDP比2.5%に達する見込みだが、トランプ前米大統領は10%まで引き上げるよう主張。専門家からは「軍国主義化」との批判も出ている。志願兵減少や徴兵制延長など、人的資源の課題も浮上。装備面では時代遅れの兵器購入や新技術への対応遅れが指摘され、台湾の防衛戦略の再考が求められている。


「力による平和」の代償:台湾国防費、際限なき上昇へ

賴清德総統は「力による平和」を実現すると豪語し、中国共産党との平和協定締結を拒否した。しかし、どの程度の軍事費があれば「力」があると言えるのだろうか。来年度の台湾の国防予算は、GDP比2.5%に達すると推定されている。同じく「力」を主張するトランプ前米大統領は最近、台湾の軍事費をGDP比10%まで引き上げるべきだと強く主張した。これに対し、一部の学者はトランプ氏が台湾を「軍国主義」に向かわせようとしていると非難している。


「不合理」に高騰する国防支出

蔡英文前総統は義務兵役を1年に延長し、非対称戦力の優先開発、国産潜水艦の開発、予備役軍力の改革を推進した。蔡英文政権下で7年連続して国防予算は増加し、賴清德政権下ではさらに顕著な増加が見られる。国防支出は前年同期比7.7%増加し、総額で6,470億台湾ドル(202.5億米ドル)、GDP比約2.45%に達し、NATO加盟国の目標である2%を既に上回っている。


「兵力」確保の課題:志願兵の大量離職と徴兵制の矛盾

賴清德が言う「力」の第一は「兵力」だ。蔡英文政権が義務兵役を延長する一方で、賴清德は選挙前に「義務兵は戦場に行かない」と約束した。一般の若者の「兵役忌避」感情を和らげるため、民進党政府は義務兵の給与を志願兵に近い水準まで引き上げた。しかし、これにより志願兵の大量離職を招き、「不適格」な志願兵の数が年々増加している。年間で旅団規模の人数が離職し、志願兵の数は15.5万人に減少、今年は9,100人以上の義務兵を徴集する予定だ。この状況下で、国軍の主力部隊の人員が明らかに減少しており、義務兵で主力戦闘力を補填せざるを得なくなる可能性がある。


若者の「兵役忌避」心理:解消困難な課題

賴清德の選挙公約「義務兵は戦場に行かない」は既に破られている。立法院予算中心の最新報告によると、2024年6月末時点での志願兵の数は近年最低を記録し、外島の歩兵部隊を含む多くの第一種戦闘部隊の現役比率が80%を下回っている。若者の「兵役忌避」心理が解消されていないことは明らかだ。立法院予算中心は、軍は志願兵不足にどう対応するかを慎重に考える必要があると警告している。


「不適合」な装備:時代遅れの兵器購入

台湾が米国から購入したM1A2主力戦車は今年末までに納入される予定だが、この調達は20年遅れている。軍事専門家によると、陸上戦闘の様式は劇的に変化しており、主力戦車の重要性は既に低下している。台湾の防衛作戦において、対上陸作戦や都市戦(巷戦)では、巨大な戦車はもはや地上戦を支配していない。M1A2主力戦車はかつての栄光ある地位を失い、むしろ重荷になる可能性がある。

現代戦争の脅威:無人機と新技術への対応

ロシア・ウクライナ戦争では、無人機による戦車や装甲車への攻撃が頻繁に見られる。無人機の脅威下では、どんな強力な戦車も生存率が極めて低くなる。中国という無人機大国に直面する台湾にとって、TOW対戦車ミサイル、ジャベリンミサイル、NLAWロケット弾などの装備は、主力戦車よりも対上陸作戦や都市戦に適している。


「認知戦」への過度の依存:実効性のある防衛力の必要性

賴清德政権の「力」は、台湾を「武器庫」や「ハリネズミ島」にすることに過ぎないのではないか。米国の学界はGDP比5%への増加を主張しているが、トランプ前大統領はさらに10%を要求している。台湾の「力」増強は、単に米国の軍需産業の利益に奉仕するためなのか。それとも台湾を「軍国主義」に追い込むためなのか。


莊子の寓話:賢明な統治の重要性

『莊子』には、趙の惠文王が剣術に夢中になり、国政を顧みなくなった逸話がある。3000人もの剣士が日夜競い合い、多くの死傷者を出す中、太子悝は莊子に助言を求めた。莊子は王に「天子の剣」「諸侯の剣」「庶人の剣」の三種があると説く。天子の剣は諸国の領土で作られ、諸侯を鎮め天下を統一する。諸侯の剣は国の豪傑と賢者で作られ、諸侯を服従させ天下を安定させる。一方、庶人の剣は乱暴で粗野な者たちが互いに殺し合うだけで、闘鶏と変わらず国家には無益だと指摘する。莊子は王が好むのは庶人の剣だと述べ、王を深く考えさせた。


場当たり的な政策:本末転倒な軍事力増強

賴清德政権は、渇しても井戸を掘らないようなもので、軍の主力部隊を拡大することを考えず、社会の宮廟義勇軍、保安警察、義勇警察、民間防衛、予備役などの力を直接利用し、コントロールすることだけを考えている。これらの力を軍事任務の支援に協力させようとしているが、このような本末転倒で筋の通らない計画を巡回しているだけだ。その一方で、虚勢を張って対岸(中国)を挑発する勇気はあるのに、志願兵をいかに「長期間留めて活用する」かを考えようとしない。経験豊富な古参兵を大量に失い、1年で旅団規模の人数が離れていくのを放置しているのは、自ら武功を捨てているようなものではないか。


国君として、国家の長期的な安定と発展の道を考えず、むしろ全精力を庶人の剣を弄ぶような小手先の技に費やすのは、果たして国家の幸福につながるだろうか。


編集:高畷祐子


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