台湾選手、政治的圧力に直面
『ニューヨーク・タイムズ』(NYT)は10日、オリンピックにおける台湾選手の困難な立場を報じました。中国への配慮から「中華台北」という「awkward name(厄介な名称)」での参加を余儀なくされる台湾選手たちは、自国のアイデンティティ表現に苦心しています。
卓球女子団体戦で中国に敗れた台湾の陳思羽選手は「自分のために戦っている」と述べ、国家への言及を避けました。簡彤娟選手も台湾の五輪での立場について「答えられない」と政治的話題を回避しました。
オリンピック精神と現実政治の衝突
IOCのトーマス・バッハ会長は「政治的中立を保ちつつ、政治を無視することはできない」と述べ、ロシアとベラルーシの個人選手参加を認めた決定を擁護しました。一方で、台湾応援団の「Taiwan」の文字入りタオルや台湾島型ポスターが没収される事態も起きています。
台湾外交部はこれらの「暴力行為」がオリンピック精神に反すると非難しました。
政治的表現の場としての五輪
歴史的に五輪は政治的表現の場でもありました。1936年ベルリン五輪でのジェシー・オーエンス選手の活躍、1968年メキシコシティ五輪での黒人権利運動支持、1980年のモスクワ五輪ボイコットなど、様々な政治的メッセージが発信されてきました。
難民選手団の活躍
2016年リオ五輪から参加している難民選手団は、それ自体が政治的声明となっています。パリ五輪では難民選手団のシンディ・ンガンバ選手が、初のメダル(ボクシング銅)を獲得しました。ンガンバ選手は「私は世界中の何百万人もの難民の一人に過ぎません。私が彼らに動機と希望をもたらすことができればと思います」と語りました。
香港選手団の複雑な立場
香港は「Hong Kong, China」として五輪に参加しています。フェンシングで金メダルを獲得した香港選手たちの活躍は称賛される一方で、政治的な議論も巻き起こしています。江旻憓選手は親中派と批判され、張家朗選手は民主派から同情を得るなど、勝利の喜びが政治的議論に飲み込まれる事態となりました。
香港の跆拳道選手、盧蔚豐は中国選手に敗れた後、「香港の人々に跆拳道をもっと知ってもらうことが重要だ」とスポーツの話題に徹しました。
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IOCは政治的中立を掲げていますが、実際には政治との完全な切り離しは困難です。ロシアとベラルーシの選手参加問題や、70以上の戦争や武力紛争、危機に見舞われている国々からの選手参加に対する批判の声など、オリンピックは常に政治的議論の的となっています。