エヌビディアの"囲い込み"戦略が市場を支配
台北国際自動化工業展の開催に合わせ、エヌビディアのCEO黄仁勲氏の来台が噂される中、AIチップ市場でのエヌビディアの独占的地位が注目を集めている。ウォールストリートジャーナルの分析によると、エヌビディアの強みはハードウェアだけでなく、競合他社を締め出す"ビジネス要塞"にある。
この"要塞"は、アップルのiOSエコシステムに似た「ウォールドガーデン」と呼ばれる戦略だ。しかし、アップルが一般消費者向けサービスに注力するのに対し、エヌビディアはAIシステムやソフトウェア開発者に焦点を当てている。
CUDAが築く強固なエコシステム
エヌビディアの"囲い込み"戦略の核心は、2007年に登場したCUDAソフトウェアプラットフォームだ。CUDAは、元々3Dグラフィックスやゲーム向けに設計されたGPUを、暗号化アルゴリズムや仮想通貨マイニングなど、多様な計算タスクに活用することを可能にした。
黄氏は、チップからAI構築ソフトウェアまでを一貫して提供する「フルスタックコンピューティング」をエヌビディアの強みとして挙げる。実際、エヌビディアのソフトウェアエンジニアの数はハードウェアエンジニアを上回っている。
現在、CUDAは300以上のコードライブラリと600のAIモデルを含み、約4万社から500万人以上の開発者が利用している。この巨大なエコシステムが、エヌビディアの市場支配力の源泉となっている。
競合他社の挑戦
AIコンピューティング市場の巨大な潜在性に魅了され、多くの企業がエヌビディアの独占に挑戦している。Citi Researchのアナリスト、Atif Malik氏は、2027年までにAI関連チップ市場が年間4000億ドル規模に成長すると予測している。
インテルのBill Pearson副社長によると、多くの企業がCUDAのオープンソース代替品の開発に注力している。インテル自身も、Arm、グーグル、サムスン、クアルコムなどと共同でプロジェクトを進めている。OpenAIも独自のオープンソースプロジェクトを準備中だ。
新興企業Groqは最近、6.4億ドルの投資を獲得し、エヌビディアに匹敵するチップの開発を目指している。AMDも、Instinct シリーズAIチップで2024年に45億ドルの収益を見込んでいる。
大手テック企業も自社チップ開発に乗り出している。グーグルとアマゾンは独自のAIトレーニング・デプロイメント用チップを生産し、マイクロソフトも2023年にこの潮流に追随した。
コスト効率を求めて代替ソリューションへ
エヌビディアの製品を使用せずにChatGPTのようなAIを構築するコストは膨大だ。新興企業NinjaTech AIのCEO、Babak Pahlavan氏は、当初エヌビディアの製品使用を検討したが、高価格と供給不足のためアマゾンのカスタムチップに転向した。
Pahlavan氏によると、月間100万以上のアクティブユーザーにサービスを提供するためのアマゾンクラウドサービスの月額コストは約25万ドルだが、エヌビディアのチップを使用した場合、75万から120万ドルに跳ね上がるという。
エヌビディアの今後
競合他社の挑戦にもかかわらず、アナリストはエヌビディアが今後2〜3年間、約90%のAIチップ市場シェアを維持すると予測している。しかし、黄氏は次世代製品でのAIトレーニングコスト削減を約束しており、市場の変化に対応する姿勢を示している。
エヌビディアの今後は、アップルの例にも見られるような、企業や顧客を閉鎖的なプラットフォームに縛り付ける「慣性」にかかっているといえるだろう。競合他社の挑戦と、コスト効率を求める顧客の動向が、AIチップ市場の今後を左右する重要な要因となりそうだ。
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