台湾経済、AIブームで急成長
台湾の経済成長見通しが大幅に改善している。その主因は、世界的なAIブームによるハイテク製品輸出の急増だ。格付け会社フィッチ・レーティングスは、台湾の2024年実質GDP成長率を4.0%と予測。2023年の1.3%から大幅な上昇を見込んでいる。
対米輸出が62%増、中国を抜き最大輸出先に
2024年前半7ヶ月の対米輸出は前年同期比62%増。これにより米国は20年以上ぶりに中国を抜き、台湾最大の輸出相手国となった。フィッチは、半導体市場の回復と継続的な投資回帰傾向が、国内投資をさらに刺激すると見ている。
AI関連需要が経済を下支え
2025年のGDP成長率は2.7%に減速すると予測されるものの、依然として堅調な水準だ。AI関連製品の輸出と投資が経済成長を支え、伝統的製造業の需要低迷を相殺すると見られる。実質賃金の伸び悩みにもかかわらず、個人消費は底堅さを維持すると予想されている。
下振れリスクは主要貿易相手国の景気後退
経済成長の下振れリスクとしては、主要貿易相手国の景気後退、グローバルなAI関連支出ブームの冷え込み、地政学的緊張の高まり、米国大統領選後の通商政策の不確実性などが挙げられる。
「AA」格付けを維持、財政健全性が評価
フィッチは先週、台湾の格付けを「AA」で据え置き、見通しは安定的とした。極めて強固な対外資産負債ポジション、慎重な財政管理政策、競争力のある事業環境が評価された。一方で、小規模で輸出依存型の経済構造、複雑化する中台関係、他のAA格付け国と比べて低い一人当たり所得水準などが制約要因となっている。
財政赤字の低さ、政府債務比率の良好さが強み
台湾の対外資産負債ポジションは、フィッチが格付けする国々の中で最強クラス。40年以上続く経常黒字がその背景にある。2024年の経常黒字はGDP比13.6%と予測され、外貨準備高は経常支出の17.3ヶ月分に相当。いずれもAA格付け国の中央値を大きく上回る。
政府の総財政赤字はGDP比0.8%と穏健な水準を維持し、AA格付け国中央値の2.3%を下回る。新型コロナ対策の段階的縮小も赤字抑制に寄与すると見られる。
強い経済成長と低い財政赤字により、政府債務残高のGDP比は2023年末の33.0%から2025年末には30.5%に低下する見通し。これはAA格付け国中央値の50.0%を大きく下回る水準だ。
(関連記事: TSMCの海外展開、"護国の砦"は揺るがず | 関連記事をもっと読む )編集/高畷祐子