台湾映画上映会2026でクィア・ノワール『宵闇の火花』上映 チュウ・ピン監督が登壇

台湾映画『宵闇の火花』上映会が慶應大学で開催され、来日したチュウ・ピン監督が制作背景や台湾映画の多様な魅力を語った。(写真/映画宣伝・大福提供)
台湾映画『宵闇の火花』上映会が慶應大学で開催され、来日したチュウ・ピン監督が制作背景や台湾映画の多様な魅力を語った。(写真/映画宣伝・大福提供)

台湾駐日本代表処台湾文化センターと慶應義塾大学東アジア研究所の連携企画「台湾文化センター 台湾映画上映会2026」の第6回上映作品として、映画『宵闇の火花』(原題:愛作歹)が2026年7月25日、慶應義塾大学三田キャンパス北館ホールにて上映された。上映後には本作を手掛けたチュウ・ピン(朱平)監督が登壇し、トークイベントが実施された。

本作は、裏社会で生きる男たちの姿を通して社会の闇に埋もれた人間の感情と欲望を描くクィア・ノワール映画である。チュウ・ピン監督の長編デビュー作であり、第75回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に正式出品され、テディ賞最優秀作品賞にもノミネートされたほか、主演のホアン・グァンジー(黃冠智)とシー・ミンシュアイ(施名帥)の共演でも話題を集めている。

原題『愛作歹』に込めた二重の意味

トークイベントにはチュウ・ピン監督のほか、キュレーターで映画監督のリム・カーワイ氏、司会を務めた慶應義塾大学経済学部の吉川龍生教授、通訳の中山大樹氏が登壇した。満席となった会場に向け、チュウ監督が挨拶を述べると温かい拍手が送られた。

原題『愛作歹』に込めた思いについて、チュウ監督は「主人公たちは裏社会で生きる男たちなので、『悪いことをしたがる人たち』という意味があると同時に、『愛が悪いことをする』という意味も込めている」と明かした。

また、クィア・ノワールという題材を選んだ背景について、映画監督のほかに普段は工事現場や水道配管の仕事も行っている自身の経歴に触れ、「そうした現場には前科のある人も多く、身近な存在だった彼らを描いてみたかった」と説明した。さらに、主人公が出所後に働く果物市場に関しても「両親が果物の卸業を営んでいたため、子どもの頃から親しみがあった」と自身の生い立ちとの関わりを語った。

物語の出発点については、リサーチの中で「刑務所という閉ざされた環境では、同性愛者でなくても同性同士で親密な関係を持つことがあると知り驚いた。その関係が出所後も続くのか、どのように向き合うのかと考えたことがきっかけ」と振り返った。本作は台湾の公共放送・公視(PTS)の新世代監督発掘企画として制作され、脚本段階から支援を受けたものの、テレビ放送に対応するため過度な暴言を控えるよう求められたエピソードも明かされた。

「自由に描ける」監督が語る台湾映画の魅力

主演の二人については脚本段階からイメージしており、セリフを極力削って視線や表情で伝える演技を求めたという。劇中に長回しが多い理由を問われると、「俳優の演技が素晴らしく、役に入り込んでいる彼らの感情を切ってしまいたくなかった」とキャストへの信頼を示した。

また、参考作品としてニウ・チェンザー監督の『モンガに散る』(2010年)を挙げたほか、出所した主人公が食べる「豚足麺」について「邪気を払う意味があり、縁起を担いで食べる料理」と紹介し、会場の笑いを誘った。

最後に台湾映画の魅力について問われたチュウ監督は、ベルリン国際映画祭で映画制作の制限について質問されたエピソードを引き合いに出し、「台湾では政治、宗教、同性愛などどんなテーマでも自由に描くことができる。前衛的な作品もあれば伝統的な作品もあり、その多様性こそが台湾映画の魅力」と強調した。リム・カーワイ氏からは、本作が2027年に日本で劇場公開される予定であることが告知され、イベントは盛況のうちに幕を閉じた。

編集:小田菜々香

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