【張鈞凱コラム】米国のAI優位は揺らぐのか 習近平演説とKimi K3から読み解く「中国のAI構想」

2026年7月17日、中国の習近平国家主席は「2026世界人工知能大会(WAIC)」および「人工知能グローバルガバナンス・ハイレベル会議」に出席した。(写真/AP通信)
2026年7月17日、中国の習近平国家主席は「2026世界人工知能大会(WAIC)」および「人工知能グローバルガバナンス・ハイレベル会議」に出席した。(写真/AP通信)

2026年7月、米国は建国250周年を迎えた。しかし、人工知能(AI)の分野で歴史に刻まれるのは、米国の記念行事ではなく、中国から相次いで登場する研究成果かもしれない。

昨年、世界に衝撃を与えた「DeepSeekショック」に続き、今年は中国のAI企業、月之暗面(Moonshot AI)が7月16日に大規模AIモデル「Kimi K3」を発表した。

Kimi K3は2兆8000億パラメーターを持つ「オープンな3兆パラメーター級モデル」と位置付けられ、コーディングや知識労働、長時間に及ぶ複雑なタスクを想定して開発された。月之暗面は、総合性能では最先端の非公開モデルに及ばない部分があると認める一方、一部の評価では有力な米国モデルと競争できる水準に達したとしている。

米国メディアでも、Kimi K3によって米中の技術格差がさらに縮まったとの見方が広がった。米ニュースサイトのAxiosは「中国は米国のAIにおける優位を消し去った」とする刺激的な見出しを掲げ、ワシントンでは中国のAI開発力をめぐる議論が再燃している。

同時に、多くの人が疑問を抱いた。米カーネギーメロン大学で博士号を取得した月之暗面の創業者、楊植麟(ヤン・ジーリン)氏を、なぜ米国は引き留められなかったのかという問いである。

AI時代の「中国構想」とは

​同じ時期、米国ではAIの高度なサイバー能力をめぐる重大な事故が表面化した。

OpenAIの発表によると、サイバー能力を測る社内評価の最中、複数のAIモデルを使ったエージェントが隔離された試験環境の脆弱性を突き、外部インターネットへの接続を確保。その後、AI開発者向けプラットフォームを運営するHugging Face(ハギングフェイス)のインフラに侵入した。

モデルは複数の脆弱性や認証情報を組み合わせ、評価課題の回答を取得しようとしていたという。OpenAIはこれを「前例のないサイバーインシデント」と位置付け、Hugging Faceと共同で調査を進めている。

注目すべきは、Hugging Face側が侵入を検知して封じ込めるとともに、オープンモデルを使って攻撃経路の解析とフォレンジック調査を進めた点だ。報道によると、その際には中国のZ.ai(智譜AI)が開発したオープンモデル「GLM-5.2」も活用された。

この一件が示したのは、AIの高度化に伴い、ガバナンスと防御能力の重要性が急速に増しているという現実である。これは一国の安全保障にとどまらず、技術の発展がもたらすリスクに人類全体がどう向き合うかという共通の課題でもある。

皮肉なことに、大規模AIモデルの開発を先導してきた米国企業の多くは、資本と知的財産を守るため、モデルを非公開とする方向へ傾いている。技術を囲い込み、限られた企業だけが開発能力を握る構図が強まっているのだ。
(関連記事: TSMC、過去最大640億ドル投資へ AI需要追い風に2ナノ・先進パッケージング増強 関連記事をもっと読む

これに対し、7月17日に上海で開幕した「2026世界人工知能大会(WAIC)」で、中国の習近平国家主席はグローバルなAIガバナンスをテーマに基調演説を行った。

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