台湾の食用油から発がん性物質 原因は大豆基準の10倍緩和と活性炭不使用
中聯油脂に対する調査が一段落し、陳時中・行政院政務委員(左から3人目)は27日、石崇良・衛生福利部長(同2人目)、姜至剛・食品薬物管理署長(右から2人目)および食品安全の専門家2名と共同記者会見を開き、現時点での調査結果を発表した。(黄天如撮影)
中聯油脂が製造した食用油から発がん性物質のベンゾピレンが基準値を超えて検出された問題について、約1カ月に及ぶ専門家の立ち入り検査などの結果、その全容が明らかになった。ベンゾピレンの生成には「過度な高温」が必須条件で、中聯油脂が原料となる大豆の調達先、ブラジルでの焙煎温度に合わせ、熱損傷率(豆に焦げが生じる割合)の基準を0.5%から5%に緩和していたことが発端と判明。さらに、製造工程における脱色の手順も不適切だった。本来、脱色剤の白土に加え、少量の活性炭を使用すればベンゾピレンを90%削減できるが、同社はこれを怠り、今回の事態を招いた最大の要因となった。
中聯油脂が4月から6月にかけて生産した食用油30ロットのうち、7ロットから「グループ1」の発がん性物質ベンゾピレンが基準値を超えて検出された事態を徹底解明するため、台湾衛生福利部(保健省)食品薬物管理署(食薬署)は7月21日、食品工業発展研究所の楊炳輝副所長が率いる調査団を派遣。食品科学(加工・油脂分野)の専門家、食の安全に関する専門家、法律の専門家ら計7名が台中市清水区にある中聯油脂の工場に直接入り、製造工程から文書まで詳しく検査した。
関係者によると、中聯油脂は今回、食用油の原料となる大豆をブラジルから輸入していた。ブラジル側では、出荷・船積みの前に大豆が湿気で腐敗するのを防ぐため、熱風乾燥および焙煎の工程が行われる。しかし、この工程における温度管理が不十分で、300度から350度に達すると、過剰な加熱により大豆に焦げが生じ、世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)がグループ1(ヒトに対する発がん性が認められる)に分類する発がん性物質、ベンゾピレンが生成されるという。
大豆の熱損傷率基準を0.5%から5%に緩和
楊副所長は、中聯油脂が大豆を受け入れる際の「熱損傷率」の基準を、昨年(2025年)の6月4日から従来の0.5%から5%へと大幅に緩和していたと指摘した。当時、ブラジルから輸入された一部の大豆が0.5%の基準を超過しており、同社はこれを合格とするために基準を緩めたという。
脱色工程と脱ガム工程で不適切な処置
輔仁大学食品科学系の陳炳輝・講座教授は、仮に大豆原料に許容される2ppb(10億分の1)を超える濃度でベンゾピレンが含まれていたとしても、脱ガム、脱酸、脱色、脱臭という精製工程において適切な方法を用いれば、大豆中のベンゾピレンの大半は除去可能だと指摘する。特に脱色工程で、中聯油脂は脱色剤の「白土」を使用するのみで、少量の活性炭を添加していなかった。実験によれば、脱臭工程で白土と活性炭を併用すれば原料中のベンゾピレンを90%削減できるが、同社はこれを実施していなかった。
陳教授はさらに、脱ガム工程についても言及した。大豆にはもともとリン脂質のレシチンが豊富に含まれており、精製の第一段階である「水和脱ガム」において、リン脂質の濃度を5000ppm(100万分の1)以下に低減させることで、少量のベンゾピレンも除去できる。しかし調査の結果、中聯油脂の脱ガム工程ではリン脂質が管理基準の5000ppmを上回る事態が多発しており、結果として油脂の脱ガムが不十分だったことが明らかになっている。
前衛生福利部長の陳時中・行政院(内閣に相当)政務委員は、中聯油脂に重大な「食品安全衛生管理法」違反があったとして、中央政府は1億7000万台湾元超の罰金を科したと述べた。さらに中聯油脂および、同社に出資する泰山企業、福寿実業、福懋油脂の4社は、川下業者が被った損失に対する法的責任も負わなければならないとしている。
また、今回の事件が社会に与えた影響の大きさから、政府高官が責任を取るべきとの声も上がっている。これに対し陳氏は、「衛生福利部および食薬署は6月30日に事案を認知し、翌7月1日からは地方自治体と連携して昼夜を問わず調査に当たってきた。専門家を工場に派遣しての立ち入り検査も実施しており、この過程で行政の怠慢があったとは考えていない」と反論した。
陳氏は、この中聯油脂の事件を契機として、衛生福利部は「食品安全衛生管理法」の改正に全力で取り組んでいると強調。台中市の盧秀燕市長や高雄市の陳其邁市長を含む各県市の首長と意見交換を行った結果、「速やかに法改正を進め、不合理な体制や制度を直ちに是正すべき」との点で合意に達したとしている。
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