日本の防衛産業、岐路に立つ 地経学専門家が説く「システム統合」と「非対称戦略」の急務

専門家会見で指摘された通り、日本の防衛産業は長年の衰退から生産拡大へと舵を切る中、システム統合能力の欠如と非対称戦略の構築という急務に直面している。(写真/FCCJ提供)
専門家会見で指摘された通り、日本の防衛産業は長年の衰退から生産拡大へと舵を切る中、システム統合能力の欠如と非対称戦略の構築という急務に直面している。(写真/FCCJ提供)

日本外国特派員協会(FCCJ)は2026年4月2日、日本の防衛産業基盤の再構築をテーマとした記者会見を開催した。会見では、地経学研究所(IOG)の小木洋人主任客員研究員と井上麟太郎客員研究員が登壇し、日本の防衛産業が直面する現状と課題、そして今後進めるべき政策提言について詳細な分析を披露した。司会は同協会の元会長でPAC委員のカルドゥン・アズハリ氏が務めた。

専門家会見で指摘された通り、日本の防衛産業は長年の衰退から生産拡大へと舵を切る中、システム統合能力の欠如と非対称戦略の構築という急務に直面している。FCCJ
専門家会見で指摘された通り、日本の防衛産業は長年の衰退から生産拡大へと舵を切る中、システム統合能力の欠如と非対称戦略の構築という急務に直面している。(写真/FCCJ提供)

衰退から強化へ 防衛産業を取り巻く劇的な環境変化

小木氏の報告によると、日本の防衛産業は過去10年間、財政的制約や効率性の問題、さらには政府が外国製装備品の調達を優先したことにより大きく衰退した。しかし、欧州諸国が外国製品への過度な依存の危険性を認識し始めたことや、弾薬生産など戦争支援能力の必要性が高まったことを背景に、日本政府は2022年以降、国内企業に対して防衛生産能力の強化を求め始めた。

さらに、2023年に成立した「防衛生産基盤強化法」の影響により、これまで防衛部門の拡大に慎重であった企業経営陣も、リソースを民生品から防衛分野へとシフトさせる動きを見せ始めているという。

山積する課題と「自動車産業」の活用

一方で、井上氏は日本の防衛産業が依然として多くの課題を抱えていると指摘した。欧米の防衛産業も冷戦後の生産規模縮小や新型コロナウイルスによるサプライチェーンの脆弱化を経験し、現在は労働力の拡大に努めている。日本の防衛産業においても、労働力不足や生産施設の限界に加え、長期的な見通しが立たない中で先行投資をためらう企業文化が障壁となっている。

これらを解決するための政策提言として、生産前後の資金ギャップを埋めるための公的資金の投入や補助金の活用、防衛契約ルールの抜本的な見直し、さらには自動車産業など他業界からの人材や遊休施設の転用などが挙げられた。

弱点は「システム統合」能力の不足

質疑応答において、日本の防衛産業の弱点について問われた際、両専門家はデュアルユースや最先端技術などの基礎技術には強みがあるものの、それらを戦場で即座に使用できる製品へと組み上げるシステム統合(システム・インテグレーション)の能力が不足していると説明した。また、防衛産業と自衛隊の運用部門との連携が弱く、今後は戦時の生産維持やサプライチェーンの保護、労働者との協調をいかに図るかが重要になると強調した。

中東情勢の影響と「台湾有事」への非対称戦略

中東情勢や台湾有事などの地政学的リスクに関しても踏み込んだ議論が交わされた。小木氏は、米軍が中東で多数の防空ミサイルを消費しており、日本に対してその生産協力を求めている現状に言及した。日本は米国の要請に応えつつも、自国の防衛準備を犠牲にしてはならず、ドローン迎撃などに適した費用対効果の高いハイローミックスの防空システムを早急に構築する必要があると論じた。

さらに、日本の9倍に達する航空戦力を有する中国への対応については、単純な数量での対抗は不可能であるとし、中国が東海岸から大量の安価なドローンを投入するような事態を想定し、日本も非対称戦略を用いて対処する方法を模索しなければならないと警告した。

編集:小田菜々香

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