日本外国特派員協会(FCCJ)で、コロンビア大学ジャーナリズム大学院のジェラニ・コブ学部長が記者会見を行った。同協会のダン・スローン会長の司会のもと、ニュースルームの雇用減少、伝統的メディアに対する一般市民の関与の低下、世論に大きな影響を与えるインフルエンサーの台頭、そして報道の自由とジャーナリストの安全性の弱体化など、ジャーナリズムが直面する多くの深刻な課題について議論が交わされた。
国境なき記者団のデータによれば、2025年だけで67名が殺害され、500名以上が拘束、135名が行方不明となり、20名が人質に取られるという厳しい現状が報告されている。
AIの台頭と報道の自由、揺れるジャーナリズムの現場
コブ学部長は、人工知能(AI)の台頭に対する業界内の対照的な反応に言及した。ニューヨーク・タイムズの発行人であるA.G.サルツバーガー氏が、AIによる大規模な著作権侵害や偽情報の拡散を存亡の危機と捉えている一方で、ウォール・ストリート・ジャーナル編集長のエンマ・タッカー氏は、業務効率化や新たな取材手法としてAIを積極的に活用しているという。
コロンビア大学ジャーナリズム大学院としては、当初はAIが生成した未検証の情報をそのまま世に出さないよう厳格なガイドラインを設けたが、現在は事態の推移を見守りつつ、責任ある形でのAI活用法を模索している段階にあると説明した。
報道の自由をめぐる環境の悪化について、コブ学部長は強い懸念を示した。10月7日以降にガザやイスラエルで死亡したジャーナリストの記念碑を設立した際に政治的な批判を浴びた事例や、米国・イスラエル・イラン間の情勢に関わる取材をしていた同校卒業生がクウェートで逮捕された事例を挙げた。
大学側は当初、静かな外交による解決を目指したが、事態が進展しなかったため公開声明を出し、国連大使に書簡を送るなど、現場のジャーナリストを強力に擁護する姿勢を明確に打ち出している。
ニュースクリエイター時代に問われる取材と倫理
メディア環境の変化に伴い、ニュースクリエイターやインフルエンサーの存在感が高まっていることを受け、同校は来年1月に「ニュースクリエイター・サミット」を開催する。
既存のレガシーメディア関係者、新興分野のクリエイター、政策担当者などを集め、ソーシャルメディアを中心に活動する独立系ジャーナリストの倫理的要件、法的・安全上の課題、そして新たなジャーナリズムの可能性について本格的な議論を行う予定である。
急速な技術の進歩や環境変化の中にあっても、ジャーナリズムの根本的な価値は変わらないことが強調された。1912年の同校設立当初から続く「取材」と「倫理」という中核的な教育は現在も揺らいでいない。
一方で、現在のニュースルームではかつてのようなベテラン指導層が減少し、現場でのメンターシップが欠如しているため、大学院教育の重要性がかえって増している。現代の学生たちは、活字や放送といった従来の縦割りの枠組みに縛られず、データ分析やポッドキャストなど多様な技術を駆使し、記事に最適な表現方法を自ら選択する柔軟なスキルを身につけている。
メディアに対する信頼低下の問題について、コブ学部長は、メディア単独の問題というよりも、教育機関や企業を含む社会のあらゆる制度に対する世界的な信頼低下の一環であると分析した。
信頼を回復し、社会に貢献するためには、単に発生した事実を伝えるだけでなく、イラン政変における1953年のCIAの関与など、読者が事象の意味を深く理解するための歴史的背景や文脈を提供することが、今後のジャーナリズムにおいて極めて重要な役割を果たしていくと述べた。
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編集:小田菜々香













































