台湾F-16Vは中国の防空網をどう崩すか AGM-88 HARM「対レーダーミサイル」の実力

2026-10-16 16:57
米空軍のF-16C戦闘機。搭載兵装の中で最も大きいのがAGM-88対レーダーミサイル。(Wikipediaより、TSGT KEVIN J. GRUENWALD, USAF撮影/CC BY 4.0)
米空軍のF-16C戦闘機。搭載兵装の中で最も大きいのがAGM-88対レーダーミサイル。(Wikipediaより、TSGT KEVIN J. GRUENWALD, USAF撮影/CC BY 4.0)

中国は沿岸部の防空網の強化を続け、各種の捜索レーダーや追尾レーダー、地対空ミサイルシステムを配備している。台湾海峡で高強度の軍事衝突が起きた場合、台湾空軍は人民解放軍の戦闘機やミサイルの脅威に対処するだけでなく、中国の地上防空システムをいかに弱体化させるかという課題にも直面する。

対レーダーミサイル(Anti-Radiation Missile)は、こうした任務を担う重要な兵器だ。敵のレーダーが発する電波を手がかりに目標を探知し、防空システムの中核となるセンサーを攻撃する。

台湾はすでに米国製のAGM-88B HARM高速対レーダーミサイルを導入しているほか、国内でも天剣2型空対空ミサイルをベースにした対レーダーミサイル「天剣2A」の開発を進めたとされる。ただし、両者の実際の配備状況や戦闘機・任務システムとの統合状況、使用可能な数量について、公開情報は十分ではない。

一方、米軍は次世代の射程延伸型対レーダーミサイルAGM-88G AARGM-ERの開発を進めているが、2026年時点でも試験や調達、今後の開発計画の見直しが続いている。

対レーダーミサイルとは何か なぜ現代の航空作戦で重要なのか

対レーダーミサイルは、主にレーダーなどの電磁波放射源を探知・追尾し、攻撃するための空対地ミサイルだ。米空軍によるAGM-88 HARMの説明では、レーダーを備えた地対空ミサイルシステムや早期警戒レーダー、レーダー誘導式の対空砲システムなどの制圧・破壊を主な任務としている。

一般的な空対地攻撃では、まず目標の位置を把握し、レーザー、衛星測位、画像などを利用して兵器を誘導する。

一方、防空レーダーには特徴がある。レーダーは作動中、航空機を捜索・追尾するために電波を外部へ発射する必要がある。その電波は敵側の電子偵察装置によって受信され、レーダーの種類や位置を割り出す手がかりとなり得る。

対レーダーミサイルはこの性質を利用する。ミサイル先端のパッシブ・レーダー・シーカーが敵レーダーから発せられる電波を受信し、その方向を割り出して飛行経路を修正する。

アクティブ・レーダー・シーカーとは異なり、パッシブ・シーカーは自らレーダー波を照射する必要がなく、目標自身が発する電磁信号を利用して追尾する。

米軍のAGM-88 HARMは敵レーダーの信号を自ら追尾する能力を持ち、発射後は通常、パイロットが操作し続ける必要はない(資料写真、ウィキペディアより、David Monniaux撮影/CC BY 4.0)
米軍のAGM-88 HARMは、敵レーダーが発する電波を自ら追尾する能力を備えており、発射後は通常、パイロットが継続して遠隔操作する必要はない。(資料写真/Wikipediaより、David Monniaux撮影/CC BY 4.0)

米軍のAGM-88 HARMは敵レーダーの電波を自ら追尾でき、発射後にパイロットが継続して遠隔操作する必要は基本的にない。

ただし、発射すれば必ず命中するわけではない。攻撃の成否は、目標からの電波、ミサイルの誘導能力、敵の電子妨害、レーダーが作動を続けているかどうかなど、さまざまな条件に左右される。

対レーダーミサイルの目的は、単にレーダーサイトを一つ破壊することではなく、敵防空システムの探知、追尾、交戦能力を弱めることにある。 (関連記事: 台湾、米国から調達のF-16V初納入 2機が台東基地に到着、年内に追加納入へ | 関連記事をもっと読む )

現代の防空システムは、長距離捜索レーダー、火器管制レーダー、ミサイル発射車両、指揮所、通信システムなど、複数の装備が連携して機能する。そのうちレーダー1基を破壊すれば、特定の防空部隊の機能を一時的に低下させられる可能性はあるが、防空網全体を完全にまひさせられるとは限らない。

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