公益財団法人笹川平和財団上席研究員の畔蒜泰助氏は13日、フォーリン・プレスセンター(FPCJ)主催のオンライン記者会見で、「変容するロシアの対日姿勢と日露関係の行方」と題してブリーフィングを行った。
畔蒜氏は、2022年2月のウクライナ侵攻以降、日本による対ロシア経済制裁と、ロシアによる非友好国指定や平和条約交渉の停止により、日露関係は冷戦後で最も厳しい局面に直面していると指摘した。
その一方で、隣国同士であるという地理的現実は変わらず、今後の両国関係は全面的な和解にも全面的な対立にも向かわず、安全保障面での緊張を管理しながら、エネルギー分野などで実務的な協力を維持する「対立と協力の併存」が続くだろうとの見通しを示した。
日本とロシア、3つの海域を挟み重層的に対峙
畔蒜氏は、日本国内ではロシアと向き合っているのは日本海だけだという空間的な思い込みがなされがちだが、実際には日本海、宗谷海峡、オホーツク海という3つの海域を挟み、両国が直接的かつ重層的に向かい合っていると強調した。
特に、北海道根室の納沙布岬と歯舞群島の貝殻島はわずか約3.7キロの距離にあり、目と鼻の先で主権と安全保障が対峙していると指摘。北方領土問題だけでなく、エネルギー安全保障、北極海航路、アジア太平洋地域の安全保障環境などを通じ、両国は今後も相互に影響を及ぼし続ける関係にあると述べた。
プーチン氏の対日姿勢、「高度な信頼関係」が領土問題解決の前提
プーチン大統領の対日観について、畔蒜氏は、自身が2016年から今年2026年にかけて複数回参加したロシアのバルダイ会議での直接対話を踏まえ、この10年間で基本的な姿勢は大きく変化していないと分析した。
その根底にあるのは、中露国境画定交渉に約40年を要した経験を基盤とする「2段階解決論」だという。領土問題の解決が信頼を生むのではなく、高度な信頼関係の構築が先行して初めて領土問題の解決が可能になるという論理だ。
2018年11月に当時の安倍晋三首相とプーチン氏が合意した「1956年の日ソ共同宣言を基礎とした平和条約交渉の加速(2島引き渡しでの決着模索)」については、本来であれば数十年を要する信頼醸成の時間軸をショートカットしようとした、例外的なアプローチだったと位置づけた。
しかし、ロシア世論や北方領土住民などから強い反発を受けた結果、ロシア側は二度とこのような例外を認めない方向へと舵を戻したと振り返った。
2020年がロシアの対日姿勢の転換点 憲法改正で領土割譲禁止
さらに畔蒜氏は、2020年がロシアの対日姿勢における決定的な転換点になったと論じた。
同年、ロシアの憲法改正によって、継承国家条項、歴史的真実の保護、戦勝記憶の保全、領土割譲禁止などが盛り込まれ、北方領土引き渡しの法的ハードルが極めて高くなったという。 (関連記事: ロシアの邦人拘束、外務省が駐日大使に抗議 中国関係者の択捉島訪問にも申し入れ | 関連記事をもっと読む )
また、第二次世界大戦終結記念日を9月2日から旧ソ連の対日戦勝記念日である「9月3日」に変更した点にも注目した。9月3日は中国の抗日戦争勝利記念日と同日であり、2015年以降、中露両国が「世界反ファシズム戦争の勝利」という共通の歴史物語(ナラティブ)を共有し始めていることを反映していると説明した。













































