パラオに違法薬物流入が深刻化 大統領「中国系犯罪組織が政府と社会秩序を弱体化」

2026-10-14 15:41
台湾の頼清徳・総統は2024年にパラオを訪問し、ウィップス大統領と会食した。(AP通信)
台湾の頼清徳・総統は2024年にパラオを訪問し、ウィップス大統領と会食した。(AP通信)

太平洋の島国パラオが、違法薬物と犯罪組織による深刻な危機に直面している。同国のスランゲル・ウィップス・ジュニア大統領は先日、人口わずか1万8000人の島国が大量の違法薬物の流入にさらされ、政府によるガバナンスや社会の安定が著しく脅かされていると強い懸念を表明した。さらに、その元凶は中国系犯罪組織との見解を示した。

英字メディア『日経アジア』の報道によると、ウィップス氏は太平洋諸島フォーラム(PIF)首脳会議での対話において、パラオ国内の薬物犯罪率が上昇の一途をたどっており、とりわけ覚醒剤のメタンフェタミンが大部分を占めていると指摘。その上で、「国内唯一の刑務所は今年9月末の時点で定員の65人を大きく上回る113人の受刑者が押し込められており、そのうち中国籍が11.5%(13人)を占めた」と述べた。

パラオ法務省の統計によると、10月初旬時点での刑務所収容人数は107人で、うち中国籍の受刑者は12人と全体の11%を占め、外国人受刑者としては最多のグループとなっている。なお2025年7月から10月には、わずか3カ月で中国籍の6人が違法薬物の販売、所持、または密輸未遂で有罪判決を受けた。

ウィップス大統領「パラオ政府と社会秩序の弱体化が目的」

パラオは、中国ではなく台湾と正式な外交関係を維持している世界でも数少ない国の一つで、ウィップス大統領は長年にわたり中国政府に対して率直な発言を続けてきた。同氏は、中国政府が薬物密輸に関与していると直接的に非難したり疑念を呈したりはしていないものの、『日経アジア』に対し、これら中国籍犯罪者による薬物の持ち込みは「完全にパラオ市場を標的にしたものであり、ここから不当な利益を得ると同時に、我々の政府と社会秩序を弱体化させることが目的だ」と強調した。

パラオで開催された「太平洋諸島フォーラム(PIF)」首脳会議。(AP通信)
パラオで開催された「太平洋諸島フォーラム(PIF)」首脳会議。(AP通信)

実際、パラオにおける中国の犯罪ネットワークの拡大は今に始まったことではない。元駐パラオ米国大使のジョン・ヘネシーニランド氏は、「中国の犯罪組織はパラオで長期にわたりサイバー犯罪やマネーロンダリング(資金洗浄)に関わってきた。パラオと中国に正式な外交関係がないため、中国の法執行機関の介入が困難であり、完璧な安全地帯となることを犯罪組織は認識している」と分析する。

違法薬物に加え、中国の犯罪組織は観光業を隠れみのにオンラインカジノや詐欺行為にも手を染めている。2020年には、パラオ警察がホテル内で無許可かつ脱税目的のオンラインカジノ拠点を摘発し、中国籍の57人を逮捕、強制送還した。さらに2025年1月にも警察がホテルを家宅捜索し、内部で行われていた違法な特殊詐欺グループを摘発、中国籍の9人を逮捕して本国へ送還した。 (関連記事: 賴清徳訪パラオへ ウィップス大統領「中国に自制求める」 | 関連記事をもっと読む )

太平洋の島国が違法薬物の中継拠点に?

国境を越えた薬物犯罪は南太平洋全体に悪影響を及ぼしている。中南米産のコカインやアジア産の覚醒剤が、ヨットや小型潜水艇を使って「太平洋の麻薬ルート」を通り、高利益が見込めるオーストラリアやニュージーランドへと運ばれている。近隣のフィジーでは中継拠点として利用された結果、国内で覚醒剤の静脈注射や注射器の使い回しがまん延し、2010年以降の新規HIV感染が数十倍に急増。同国政府が今年9月、全国規模のHIV非常事態宣言を発令する事態となっている。

台湾とパラオが協力するマラカル島開発、観光の新たな目玉へ(1)パラオ訪問4日目を迎えた台湾副総統・蕭美琴氏は9日、ロングアイランド公園を訪れマラカル島の開発計画を視察した。同氏は、パラオは常にその美しい海で国際的な観光客を惹きつけており、将来的には陸上施設の改善と連携を通じて、より多様な観光体験を提供し、地域の発展を牽引していきたいと語った。写真はロングアイランド公園の自然美。中央社記者・裴禛 パラオにて撮影 115年6月9日
台湾の蕭美琴・副総統は今年6月パラオのロングアイランド公園を訪れ、観光の新たな目玉としてパラオと台湾が共同開発するマラカル島を視察した。写真はロングアイランド公園の自然美。(中央社記者・裴禛撮影)
最新ニュース
中国、「台湾光復」記念を恒例化 歴史認識で台湾への圧力強化、頼総統の「丘の上の町」に込めた意味は
中国の「経済市長」黄奇帆氏が調査入り 薄熙来氏の元側近、重大な規律・法律違反の疑い
【解説】「台湾放棄論」とは何か 米国は台湾を見捨てるのか、70年余りの歴史と賛否
明治「きのこの山」「たけのこの里」が無料動画サブスク開始 生田斗真主演、国内菓子ブランド初
伊藤園、1プッシュで1杯分の「ぷしゅぷしゅボトル」 計量不要の新インスタント茶を発売
「ちいかわパーク」クリスマスイベント開催 限定衣装のちいかわたち登場、新商品も11月24日発売
NHK前会長・稲葉延雄氏が死去、75歳 肺がん闘病しながら3年間の任期まっとう
ソフトバンクCS初戦ゲスト決定 岡田芽依が始球式、梅谷心愛が国歌独唱
【舞台裏】台北市長選、沈伯洋氏が蒋万安氏を猛追 国民党・民衆党連携も、ネットで民衆党支持者「小草」の勢い見えず
【インタビュー】AI導入、壁は「人材・データ・コスト」 台湾製造業トップ「使いこなすまで最低1~2年」
【インタビュー】「米国AIも突然使えなくなる」台湾IT研究機関トップが警鐘 金融・医療・半導体は他国任せにできない
MAPPA15周年展が東京・有楽町で開催 「呪術廻戦」「進撃の巨人」など23作品、のんが魅力語る
ふるさと納税の「地場産品基準」改正、自治体の9割が影響を実感 さとふる調査で判明
米軍採用の「ロボット犬」、台湾で生産へ 台湾食品大手・義美などの合弁会社が海外ライセンス、中科院と銃塔も開発
台湾・林佳龍外相が4度目のポーランド訪問 「TEEMA科技園区」年末MOUへ、ワルシャワで講演
過去最多24酒蔵が集結 虎ノ門ヒルズでスパークリング日本酒の祭典「awa酒 week」開催へ
「AI特区は松山空港移転を待つ必要ない」民進党の高雄市長候補、アジア新湾区への誘致訴え
中国、台湾と国交維持のパラグアイ・ベリーズ閣僚を制裁 国交樹立国の高官では初
【台湾世論調査】20代の約6割「米国だけに頼れない」 中国との主体的交渉も支持
トランプ氏「ロシア・ウクライナ、エネルギー停戦で合意」 ゼレンスキー氏「初耳」、ロシア軍は攻撃継続
清水エスパルス、岡崎慎司氏の引退試合を2027年1月に開催 OB集結の「大同窓会」に
TSMCだけではない台湾の半導体力 フランスが研究開発から連携、「台湾抜きでは成り立たない」
【寄稿】外国人材を「安い労働力」にしない 人手不足時代、企業に問われる「選ばれる職場」
「小さな部品一つでも中国由来は不可」 台湾・和大工業、米顧客が求める「非レッド」供給網に対応
「中国の台湾侵攻は可能性低い」米シンクタンクで広がる見方 浮上する米軍「第2列島線」後退論
横浜市観光協会、市内12事業者と記念日需要を開拓 初のファミリー向け企画など新プランを14日より予約販売開始
YOASOBI、NHK朝ドラ主題歌「咲き誇れ」を10月14日に配信リリース決定 ジャケット写真も公開
【全文】台湾国慶節で韓国瑜立法院長が異例の原稿外発言 大リコール批判、「偽りの民主主義、真の独裁と見られてはならない」
【独自】NY発Merci Dema、創業者Melly氏と湊大知氏が原宿で語る創作哲学 台湾進出に意欲
【北京観察】ロシアの抗ペスト研究所職員が「原因不明の肺炎」で死亡 1カ月前には中ロが越境感染症演習
「日台は今こそ防衛産業協力を」 岩田清文・元陸上幕僚長、ドローン連携で世界市場開拓を提言
台湾で数日で上映終了、幻の映画『逃亡者狂騒曲』が約30年越しに日本で世界初公開
中国人の6割が台湾問題の平和解決を支持 「武力統一反対」37%、米調査で浮かぶ対台湾世論
蒋万安・台北市長が松山空港移転を提唱 空軍基地も併設、台湾国防相は慎重姿勢
王美花・台湾前経済相、TSMC・ソニー協業に「大きな意義」 日台半導体は「奪い合いでなく補完」
公明・西田幹事長「台湾の中国返還を認めた」 保守派「歴史の歪曲」と反発
【独占インタビュー】櫻井よしこ氏「日台は協力しなければ共に生き残れない」 POWERR Asiaで中国レアアース依存脱却へ
フェデラー氏、16歳の錦織圭に「将来のスーパースターになると確信」 引退イベントで才能を絶賛
錦織圭、引退イベントでフェデラー氏らと夢の競演 「コートを共有できて本当に幸せ」
錦織圭、引退後初の合同会見 フェデラー氏が絶賛「存在しなかった天井を突き破った」
錦織圭、引退会見で現役生活を「50点」 GS未制覇に悔い「優勝トロフィーを見せたかった」
高市政権「実質GDP1.8%」は実現可能か カッツ氏が成長戦略を「幻想」と批判
幻のニホンオオカミを追う 1905年の絶滅後も続く目撃談、秩父に残る「山の守護神」信仰
日本の10代、死因1位は自殺 遺族と映画監督が訴える「ただ隣に寄り添う」支援
【単独インタビュー】石平参院議員「中国の制裁は勲章」 日本版「台湾関係法」初稿完成、来年通常国会提出へ