【解説】「台湾放棄論」とは何か 米国は台湾を見捨てるのか、70年余りの歴史と賛否

2026-10-14 13:03
米中首脳会談では、台湾が交渉材料にされるのではないかとの懸念がたびたび浮上する。写真は2026年9月25日、ワシントンの米国立公文書館の階段で握手を交わすトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席。(AP通信)
米中首脳会談では、台湾が交渉材料にされるのではないかとの懸念がたびたび浮上する。写真は2026年9月25日、ワシントンの米国立公文書館の階段で握手を交わすトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席。(AP通信)

「台湾放棄論(棄台論)」とは、米国は台湾の防衛から手を引くべきだ、あるいはいずれ手を引くことになるという主張を指す。その源流は1950年、ディーン・アチソン国務長官が台湾を米国の西太平洋防衛線の外に置いたことにさかのぼる。

2014年にはシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授が論文「台湾にさよならを」を発表し、2026年10月には米シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」のジェニファー・カバナー氏が、米国の台湾防衛へのコミットメントは「負担」だと断じた。米中首脳が会談したり、対台湾武器売却が停滞したりするたびに、台湾放棄論は再び表舞台に浮上する。

台湾放棄論は台湾国内でも活発な議論を呼んでいる。台湾の国家安全局は2026年5月の書面報告で、中国共産党が米国の対中譲歩を誇張し、台湾に「疑米論」(米国は台湾を見捨てるかもしれないという疑念)や「台湾放棄論」を広めていると指摘した。

台湾の安全保障関係者も2025年5月、中国が新たな台湾放棄論を組織的に仕掛けていると明らかにしている。

ただ、台湾放棄論は単なる認知戦の文句にとどまらない。ワシントンには戦略的抑制や関与縮小を唱え、台湾のために戦争をすべきではないと公然と主張する研究者が実際に存在する。

一方、台湾防衛を主張する研究者は、台湾が陥落すれば米国の経済、半導体供給、同盟の信頼性に打撃が及ぶと反論し、なかにはトランプ大統領がすでに習近平国家主席に多くの譲歩を重ねていると批判する声もある。

台湾メディア『風傳媒(ストームメディア)』はこれまでの報道、インタビュー、論評、シンクタンクの議論をもとに、台湾放棄論がどこから来たのか、賛否両派がどう論じているのか、そして報道をどう読み解けばよいのかを整理した。

台湾放棄論Q&A

台湾放棄論とは何か

台湾放棄論とは、米国は台湾の防衛から手を引くべきだ、あるいはいずれ手を引くことになるという主張で、よく引用されるのがミアシャイマー(John Mearsheimer)氏の2014年の論文「台湾にさよならを」(Say Goodbye to Taiwan)だ。

主張する側は、台湾は中国に近く米国から遠いため、台湾をめぐって中国と戦争をする代償は大きすぎると考える。反対する側は、台湾が陥落すれば米国の経済と同盟体制が深刻な打撃を受けると考える。

台湾では「台湾放棄論」という言葉が、台湾社会に対する認知戦の一環を指す場合もある。国家安全局の2026年5月の報告は、中国共産党が台湾に「疑米論」や「台湾放棄論」を広めていると指摘した。

安全保障関係者も2025年5月、中国が仕掛ける新たな台湾放棄論には、台湾はインド太平洋戦略において重要ではない、台湾は挑発者だ、台湾の防衛を強化・支援することは中国への挑発だ――という三つのナラティブ(物語)が含まれていると説明している。

米国は台湾を見捨てるのか

米政府はこれまで台湾を見捨てると表明したことはない。2025年10月にはルビオ国務長官が、米国は貿易協定のために台湾を見捨てることはないと述べ、2026年5月にはトランプ氏も北京での首脳会談後、米国の対台湾政策は変わっていないと語った。

最新ニュース
明治「きのこの山」「たけのこの里」が無料動画サブスク開始 生田斗真主演、国内菓子ブランド初
伊藤園、1プッシュで1杯分の「ぷしゅぷしゅボトル」 計量不要の新インスタント茶を発売
「ちいかわパーク」クリスマスイベント開催 限定衣装のちいかわたち登場、新商品も11月24日発売
NHK前会長・稲葉延雄氏が死去、75歳 肺がん闘病しながら3年間の任期まっとう
ソフトバンクCS初戦ゲスト決定 岡田芽依が始球式、梅谷心愛が国歌独唱
【舞台裏】台北市長選、沈伯洋氏が蒋万安氏を猛追 国民党・民衆党連携も、ネットで民衆党支持者「小草」の勢い見えず
【インタビュー】AI導入、壁は「人材・データ・コスト」 台湾製造業トップ「使いこなすまで最低1~2年」
【インタビュー】「米国AIも突然使えなくなる」台湾IT研究機関トップが警鐘 金融・医療・半導体は他国任せにできない
MAPPA15周年展が東京・有楽町で開催 「呪術廻戦」「進撃の巨人」など23作品、のんが魅力語る
ふるさと納税の「地場産品基準」改正、自治体の9割が影響を実感 さとふる調査で判明
米軍採用の「ロボット犬」、台湾で生産へ 台湾食品大手・義美などの合弁会社が海外ライセンス、中科院と銃塔も開発
台湾・林佳龍外相が4度目のポーランド訪問 「TEEMA科技園区」年末MOUへ、ワルシャワで講演
過去最多24酒蔵が集結 虎ノ門ヒルズでスパークリング日本酒の祭典「awa酒 week」開催へ
「AI特区は松山空港移転を待つ必要ない」民進党の高雄市長候補、アジア新湾区への誘致訴え
中国、台湾と国交維持のパラグアイ・ベリーズ閣僚を制裁 国交樹立国の高官では初
【台湾世論調査】20代の約6割「米国だけに頼れない」 中国との主体的交渉も支持
トランプ氏「ロシア・ウクライナ、エネルギー停戦で合意」 ゼレンスキー氏「初耳」、ロシア軍は攻撃継続
清水エスパルス、岡崎慎司氏の引退試合を2027年1月に開催 OB集結の「大同窓会」に
TSMCだけではない台湾の半導体力 フランスが研究開発から連携、「台湾抜きでは成り立たない」
【寄稿】外国人材を「安い労働力」にしない 人手不足時代、企業に問われる「選ばれる職場」
「小さな部品一つでも中国由来は不可」 台湾・和大工業、米顧客が求める「非レッド」供給網に対応
「中国の台湾侵攻は可能性低い」米シンクタンクで広がる見方 浮上する米軍「第2列島線」後退論
横浜市観光協会、市内12事業者と記念日需要を開拓 初のファミリー向け企画など新プランを14日より予約販売開始
YOASOBI、NHK朝ドラ主題歌「咲き誇れ」を10月14日に配信リリース決定 ジャケット写真も公開
【全文】台湾国慶節で韓国瑜立法院長が異例の原稿外発言 大リコール批判、「偽りの民主主義、真の独裁と見られてはならない」
【独自】NY発Merci Dema、創業者Melly氏と湊大知氏が原宿で語る創作哲学 台湾進出に意欲
【北京観察】ロシアの抗ペスト研究所職員が「原因不明の肺炎」で死亡 1カ月前には中ロが越境感染症演習
「日台は今こそ防衛産業協力を」 岩田清文・元陸上幕僚長、ドローン連携で世界市場開拓を提言
台湾で数日で上映終了、幻の映画『逃亡者狂騒曲』が約30年越しに日本で世界初公開
中国人の6割が台湾問題の平和解決を支持 「武力統一反対」37%、米調査で浮かぶ対台湾世論
蒋万安・台北市長が松山空港移転を提唱 空軍基地も併設、台湾国防相は慎重姿勢
王美花・台湾前経済相、TSMC・ソニー協業に「大きな意義」 日台半導体は「奪い合いでなく補完」
公明・西田幹事長「台湾の中国返還を認めた」 保守派「歴史の歪曲」と反発
【独占インタビュー】櫻井よしこ氏「日台は協力しなければ共に生き残れない」 POWERR Asiaで中国レアアース依存脱却へ
フェデラー氏、16歳の錦織圭に「将来のスーパースターになると確信」 引退イベントで才能を絶賛
錦織圭、引退イベントでフェデラー氏らと夢の競演 「コートを共有できて本当に幸せ」
錦織圭、引退後初の合同会見 フェデラー氏が絶賛「存在しなかった天井を突き破った」
錦織圭、引退会見で現役生活を「50点」 GS未制覇に悔い「優勝トロフィーを見せたかった」
高市政権「実質GDP1.8%」は実現可能か カッツ氏が成長戦略を「幻想」と批判
幻のニホンオオカミを追う 1905年の絶滅後も続く目撃談、秩父に残る「山の守護神」信仰
日本の10代、死因1位は自殺 遺族と映画監督が訴える「ただ隣に寄り添う」支援
【単独インタビュー】石平参院議員「中国の制裁は勲章」 日本版「台湾関係法」初稿完成、来年通常国会提出へ
【ドローン神話⑦】「台湾には世界最高のサプライヤーがいる」 米防衛テック企業が続々進出する理由
【ペットと祈る台湾④】おみくじ解説はAI、線香も爆竹もなし 台北の「ペット最優先」無人廟
【ドローン神話⑥】台湾ドローンは「中国依存」を減らせるか 電池・モーターは造れてもレアアースが壁